Play to Earn(P2E)とは?ゲームをプレイしてお金を稼ぐ時代が訪れました
従来、ゲームは「遊ぶ」目的でプレイされてきましたが、いまや遊んで「稼ぐ」という新たな収入源としてプレイする人が世界中で急増しました。これが所謂「Play to Earn(P2E)(=遊んで稼ぐ)」という概念で、ゲームと金融を掛け合わせたGameFi(Game×Finance)領域の核となっています。東南アジアでは、実際にゲーム内で稼いだお金でコロナ禍の生活困窮から脱却したという事例が見られます。本記事ではPlay to Earnの特徴について解説します。
Play to Earnとは?
Play to Earnとは、“暗号資産(仮想通貨)やNFT(Non-fungible token=非代替性トークン)のベースとなるブロックチェーン技術を組み合わせたオンラインゲームをプレイして暗号資産やNFTを稼ぐこと”を意味し、Play to Earnに対応するゲームを「P2Eゲーム」「NFTゲーム」「ブロックチェーンゲーム」などと呼んでいます。(本記事では以下、「ブロックチェーンゲーム」といいます。)
まず、従来のオンラインゲームでは不可能であった、「ゲームでお金を稼ぐ」ことを可能にした鍵となるブロックチェーン技術に触れたいと思います。
Play to Earnの鍵となるブロックチェーン技術
ブロックチェーン技術とは総務省のHPで以下の通りに定義されています。(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd133310.html)
つまり、ブロックチェーン技術の主な特徴としては、①従来型の情報一元管理(中央集権型)ではなく、自分自身のデータ(個人情報)を自分で管理(分散型)するシステム②改ざんが非常に困難③システムダウンが起きない(ゼロダウンタイム)④取引データ(トランザクション)を消すことができない点が挙げられます。
従来のゲームに上記ブロックチェーン技術や暗号資産を融合させることで、ゲーム内でお金を稼ぐ仕組みが確立し、ゲーム運営会社に中央集権的に管理されていたゲームの世界は、ゲーム運営会社に加え、各プレイヤーが管理する分散型コミュニティへと変化しつつあります。
ブロックチェーンゲームの特徴について以下の表にまとめました。
Play to Earnの仕組み
それではブロックチェーンゲームの特徴を理解したところで、このブロックチェーンゲームをプレイしてお金を稼ぐPlay to Earnの仕組みについて具体的に説明します。
ブロックチェーンゲームをプレイして稼ぐ方法はゲームによってさまざまですが、基本は”暗号資産やNFTの資産を獲得する”ことです。獲得した資産は市場を通じて現金に換金することが可能です。ゲーム内で資産を獲得する方法として以下が挙げられます。
①ゲーム内の特定の条件をクリアして報酬を獲得
ゲーム内の特定の条件とは、あくまでもゲームによって異なりますが、例えば大会で優勝(入賞)することやクエストをクリアすること、PvPモード(Player versus Player)・PvEモード(Player versus Environment)で勝利すること等があります。その報酬として、プレイヤーは暗号資産やNFTを獲得することができます。
②ゲーム内のキャラクターやアイテムがNFT
ゲーム内のキャラクターやアイテムはNFTになっており、NFTはゲーム内だけではなくゲーム外のNFTマーケットプレイスで売買することができます。レアリティが高いものや、レベルが高い(プレイで強化された)キャラクターであれば希少価値が上がり高額で売買されます。
従来のオンラインゲームでは、ゲーム内のアイテムを現実の金銭と取引するRMT(リアルマネートレーディング)という形態がありますが、国内のオンラインゲームにおいて多くの場合は禁じられています。また、NFT(キャラクターやアイテム)は自作することも可能なため、クリエイターとしても稼ぐことができます。
なんといってもNFTであることの利点は、「資産として永久に残ること」です。どういうことかというと、NFT化されたキャラクターやアイテムは各プレイヤーのウォレットで管理されるため、ゲームのサービスが終了したとしてもNFTとしての資産・価値は残り続けます。
③ゲーム内の不動産売買
ブロックチェーンゲームではゲーム内の土地も売買することが可能です。それだけではなく、土地に入場料を設定して稼ぐ方法や土地を賃貸にして不動産投資のような稼ぎ方もできます。
④スカラーシップ制度のオーナーとなって稼ぐ
ブロックチェーンゲームは、(NFTの購入等)初期投資に高額な費用がかかるため誰でも気軽に始められないという課題があります。そこで登場したのが、スカラーシップ制度です。スカラーシップ制度とは、NFT保有者(オーナー)がプレイヤー(スカラー)にNFTを貸し出し、プレイヤーがゲームプレイで得た報酬の一部をオーナーにシェアする仕組みのことです。オーナーになれば、ゲームをプレイしていなくても自動的にお金を稼ぐことができます。
Play to Earnで生活困窮から脱却する東南アジア
冒頭でも述べましたが、東南アジア、インド、中東、南米、アフリカといった発展途上国では、コロナの影響で失業率が高まり大打撃を受け、生活困窮に陥る人々が急増しました。しかし、ブロックチェーンゲームの登場により、ゲームをプレイして稼ぐことで生活困窮から脱却した事例が多く見られます。
物価や賃金が低い東南アジアの国々ではゲームで稼いだお金で十分に生活を送ることができるため、ゲーマーを本業とするプレイヤーも発生し街中でゲームをプレイしている人々が見られるまでにブロックチェーンゲーム市場が発展しました。
フィリピンを中心とした東南アジアで人気を集めているゲーム「Axie Infinity(アクシィインフィニティー)」をご存知でしょうか。
Axie Infinityはベトナムでローンチされたブロックチェーンゲームで、2021年に比べると現在はユーザー数が減少していますが、2021年11月26日時点では約75万人のユーザー数を獲得し、「Play to Earn」のモデルを確立しました。
Axie Infinityは、アクシーと呼ばれる架空の生物を収集、育成・繁殖、対戦(バトル)させるブロックチェーンゲームです。成績によってSLP(Smooth Love Potion)というトークンを獲得することができ、アリーナモード(対人戦)で勝利して上位ランクに入ることができればAXSというトークンを獲得することもできます。
SLPやAXSは暗号資産取引所で取引されているためリアルな金銭に換金することができます。さらにアクシーはNFTであるため、NFTマーケットプレイスでの売買も可能です。
上記で述べた、ゲーマーを本業としている東南アジアの人々はAxie Infinityをプレイして生計を立てているユーザーが多数を占めています。
Play to Earnのこれから
「遊んで稼ぐ」という夢のようなビジネスモデルを確立したブロックチェーンゲームですが、メリットばかりではなく課題も多く存在します。ユーザー数や手数料次第で利益を得られないケースもあること、ブロックチェーンという新しい技術の知識者・技術者がまだ少ないため開発が進まないこと、分散型管理のコミュニティであるが故にアップデートをするためには全ユーザーの承認が必要であること、データ処理の手間やコストの膨大化が懸念されるなどが挙げられます。
このような課題を改善し、ブロックチェーンゲーム市場が大きく発展して「Play to Earn」という概念がさらに拡散された時には、親が子供に「ゲームの時間は1日1時間以内ね」などという教育方針が大きく変わるかもしれません。