練習する環境について

どうもこんにちは。(株)東京サウンドボックスの佐藤です。

私は防音室の専門家として、たくさんのミュージシャンの方に練習や制作環境としての防音室をお届けしてまいりました。
2024年9月現在、基本的に既存のメーカー品を取り扱う業態で、メーカーが出している仕様をそのままお届けする、と言うスタイルなので、お客様それぞれのご用途やスタイル、方向性に合わせたリメイク、リフォーム等はできていませんでした。

これでいいのか。防音室はもっとパーソナルで、個人のパフォーマンス、センス、パワーを引き出すツールであるべきなのに、メーカーが作った画一的なデザインをただお届けするだけでは、提供者として無責任では無いか。
これは予算がかかりますし、一件一件時間がかかってしまうので、お客様ご自身でゆっくりやっていただくのもよいかと思いますが、今後防音室のレイアウトも含めて我々にお任せいただける機会があった際の参考として、考えておきたいと思います。

今回はプロを目指すミュージシャンにフォーカスを当てていきます。
技術や独創性、アイディア、スピード感が求められるプロミュージシャンにとって、練習環境はその成果に大きな影響を与えます。防音室のレイアウトや設備、音響を工夫することで、より効率的で質の高い練習が可能になります。以下、具体的な要素に分けて考えてみましょう。

1. レイアウトの工夫

a. 機材の配置

機材は使いやすい場所に設置することが基本です。例えば、ギタリストやベーシストの場合、アンプやエフェクターをすぐに手が届く位置に配置し、調整がしやすくするのが理想です。ピアニストや鍵盤奏者であれば、シンセサイザーやMIDIコントローラーなどのデジタル機器もすぐにアクセスできるようにするべきです。

また、楽譜台や譜面棚を整えておくと、楽譜やスコアの確認がスムーズになります。作曲やアレンジを行う場合、書き込みができるスペースやデスクも重要です。
狭い防音室の中でいかに機材の操作性を上げるか、これを考えていく必要があります。

b. 椅子の座り心地

長時間の練習を想定するため、椅子の選定も大事です。姿勢を保ちながら集中できる椅子があると、体への負担が減り、集中した練習時を増やすことができます。
環境によりますが、防音室があれば時間の制約がなく音が出せるので、集中力の維持という観点では椅子選定も大変重要です。

c. 収納スペース

必要な楽器や小物をスッキリと収納できるスペースを確保します。特に、ケーブル、ピック、譜面、メトロノームなどの小物類をすぐに取り出せるように整理しておくことで、練習がスムーズになります。
防音室は基本的に据付の収納スペースがなく、自分でセットアップする必要があります。スペースが限られた防音室の中で、スペースを取らない、空間を利用した収納を適切に配置する事が求められます。

2. 音響の最適化

a. 吸音パネルと拡散材

防音室の壁に吸音パネルを設置し、外部への音漏れを軽減するとともに、内部での音の反響をコントロールします。音がこもるのを防ぐため、必要に応じて拡散材を取り入れると、自然な音響空間が作れます。特に、録音や生演奏を行う場合は、これが重要です。

部屋の角や壁際に設置するバス・トラップ(低音吸収用のパネル)は、低周波の音のこもりを抑えるのに効果的です。
既存の防音室は最低限の吸音パネルしか付属しておらず、ベーストラップのオプションはなく、追加費用はとても高いです。
一部メーカーは吸音材の位置や量の微調整が効かず、一度配置すると変更するのが難しい場合もあります。
吸音パネルは足し引き+位置調整が簡単にできる仕様でなければいけません。

b. スピーカーの配置

モニタースピーカーは、リスニングや録音時の音の確認に重要です。スピーカーは耳の高さに配置し、左右対称に設置します。特に、自分が座る位置をスピーカーのセンターにし、「三角形の頂点」となるように配置するのが理想的です。
ミュージシャンが何か演奏するときには、基準、参考になる音源があり、その音源を聴きながら演奏する事もあります。
音源を正確に捉え、それに対する正解を導き出す事が”仕事”でもあるので、上質なリスニング環境は大変重要です。

c. 照明の工夫

練習中の集中力を保つためには、適切な照明も重要です。明るさが調節できる照明を使い、作業や練習に合わせて調光できるようにします。温かい色味の照明を使うと、長時間でも目に優しくリラックスしやすくなります。
臨機応変に極限まで照明を落としてリラックスした演奏をするのか、赤くて鋭い照明でロックな演奏をするのか、演奏内容によって照明が調整、変更できる仕様が求められるでしょう。

4. 空調と換気

狭い防音室では、空気がこもりやすいため、空調や換気が重要です。快適な温度と湿度を保つために、エアコンや空気清浄機を設置します。特に湿度管理は、楽器(特に木製の楽器)の保護にもつながります。
ただし、動作音があまり大きいのはNGです。特に録音時は空調音は0にする必要があります。ON/OFFがしやすいスイッチ配置、サイレンサーの開発、設置で対応していく必要があります。

5. デジタルサポート

a. メトロノームやチューナー

これらは練習の必需品です。デジタルメトロノームやチューナーを壁に設置したり、アプリを使ったりすることで、いつでもすぐにリズムや音程を確認できます。

b. 録音設備

練習の質を向上させるためには、録音設備を整えることが有効です。自分の演奏を録音して後で確認することで、改善点を見つけやすくなります。シンプルなデジタルレコーダーや、PCでの録音ができるシステムがあると便利です。

6. 生産性を上げるアイテム

a. タイマーやタスク管理ツール

練習時間を効率的に管理するために、タイマーやタスク管理アプリを使用することもおすすめです。たとえば、1セッションを集中して行うために、25分の集中タイムと5分の休憩を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」などが効果的です。

総合的なまとめ

  • 吸音・拡散のバランスを取った音響設計

  • 快適な座り心地と動線の確保

  • 適切な照明や空調で長時間の集中力を保つ

  • 収納や機材配置を最適化して作業効率を上げる

これらを踏まえることで、防音室の限られたスペースでも、質の高い練習環境を整えることができます。

(株)東京サウンドボックスが掲げる”防音室で未来を奏でよう”というメッセージを体現するため、我々が夢を叶えるためのリソース(練習環境)をお届けすると言う意識で、これからも考えていきます。

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