モノづくりのシロウトがオリジナルの防音室を作れるのか?
みなさんこんにちは。(株)東京サウンドボックスの佐藤です。
防音室で有名なメーカーといえば、YAMAHAとKAWAIが2大巨頭として挙げられます。どちらも歴史が古く世界的な楽器メーカーで、モノづくりの世界においては超巨大企業といえるでしょう。
防音室というものはこういった”モノづくりのプロ”が作るモノであって、そこらの中小企業が簡単に作れるモノではない!とみなさん思いますよね。
そんなことは僕もわかっていました。僕なんかが作れるのか?何度も自分に問いかけながら、何度も諦めそうになりながらも、今回当社オリジナル防音室の製造、販売に踏み切ったのです。
2025年1月後半現在、製造開始から半年が経ち、1台目のプロトタイプが売約し、現在2,3台目の発注をいただいて、製作中です。
四苦八苦しながら、まだ万全な生産体制は出来てないとはいえ、なぜここまで出来たのか?考えてみたいと思います。
1. ユニット式防音室に関する経験と専門知識
当社は既存メーカー製の防音室の販売、買取、移設業務を手掛けてきました。しかもどこかのメーカーに所属していたわけでもなく、いわばモグリで始めたんです。
色んなメーカーの、色んなモデルの防音室と対面し、その都度よく観察し、自ら解体、組立の仕方、扱い方について考えてきたのです。もちろんマニュアルなんてありません。
その過程で、数多くのお客様と対話し、さまざまな現場に携わることで、防音室に関する幅広い知識と経験を積み上げてきました。少し特殊な始まり方だったんです。
そんな中、既製品ではカバーしきれない細かなご要望や、特殊なご用途や条件下での防音方法、音響に関する知見など、他社にはないノウハウを蓄積してきたことが、当社の強みです。この経験が、オリジナル防音室の開発・製造においても大きな力を発揮しています。
2. モノづくりについてはシロウト
いくら防音室について詳しく、情熱があって、たくさん触ってきた経験があっても、いざ自分が作るとなると、全く別次元の話になってきます。
僕は元々DIYに打ち込んでいて、23歳くらいの時に自分のドラム用3畳の防音室を作った(めちゃめちゃ下手くそ)経験があり、6畳のお部屋をドラム向けに防音工事(こちらも下手くそ)したり、熱海の一軒家をフルリノベーション(大工さんの協力で多少いい感じになった)したり、自信が運営する防音シェアハウスの6畳×6部屋ほどを防音工事(かなりいい仕上がり)したり、色々やってきてはいるんです。なので木工道具は一通り揃っているし、知識や技術もある程度あります。
ただし!モノづくりとなるとそれでは全く足りません。
防音室はモノが大きいし、精度が求められる木工品です。工具を使って”手加工”することも不可能ではありませんが、かなりの時間と労力がかかり、材料費や人件費を考えると、あまり現実的な金額で販売することはできないでしょう。納期もめちゃめちゃかかります。
3. 機械への投資
あまり大きな声では言えませんが、今回オリジナル防音室を作ろうと決意してから、木工の機械に3000万円近く投資をしています。
小さな手道具ではなく、大きな工作用の機械を複数導入しています。
・パネルソー
・プレス
・自動かんな
・NCルーター
ざっくりこれらなんですが、特に重要なのがNCルーター(約2000万円)です。これが精密なユニット式防音室に必要な加工を全自動でやってくれる優れモノです。(いずれ動いているところを紹介したいと思います)
初期投資はかなり大きいですが、機械が細かい仕事を精密にしてくれることで製品のクオリティ、生産性が上がり、人件費が抑えられ、ようやく現実的な値段で防音室を作ることができるようになります。
4. 生産者、経営者としての技量
防音室は大きな住宅設備です。
防音性能を担保するのはもちろんですが、簡単に壊れたり、地震で崩れるようなモノではいけません。一つの設計ミスや安全配慮不足、欠陥があってそれが大きな事故につながった場合、生産者として、メーカーとしての責任を負う必要があります。
それに加え、たくさんの人との連携が必要になります。工場に従業員を雇う場合は、安全配慮や生産性、商品のクオリティを管理する責務がありますし、納品作業は安全マニュアルを作って安定した作業を提供する必要があります。
今までの私は基本、自分が親方となって、助手を引き連れて仕事をこなす、1プレイヤーに過ぎませんでした。今回オリジナル防音室の製造販売を実現するためには、プレイヤーを辞めて、マネジメントする立場、つまりは経営者になる必要がありました。工場においては、安定したクオリティの製品を安定的に排出する、生産者になる必要がありました。
どちらも私にとっては初めての経験です。大変なのが2つ同時に来た、、、と重圧に押しつぶされそうになりながらも、兼ねてからの悲願だったオリジナル防音室の製造に集中できているのは、大変に幸せで、ありがたいことです。この難しい、責任重大な任務、責務を貫徹するために、経営者として、生産者として、精進していかなくてはなりません。
まだまだ未熟な私ですが、当社のオリジナル防音室に注目してくださっているお客様からお問い合わせをいただくことが増えてきました。
皆様のご期待に応えるべく、一生懸命頑張ります。
備忘録的に、今の課題を下に記載します。
・工場での人不足(田舎エリアで人材が少ない)
・各工程のマニュアル整備が不十分(私しか出来ない作業がたくさんある)
・工場のレイアウトが最適化されていない(工程が見えてきたので、それに合わせて配置換えやラックの導入などを検討する)
・製品のカタログがない(どんな商品なのか?よく分からない)
・販売チャネルができてない(お客様がどうやったら買えるのか分からないので、オーダーフォームや商品ページを作る必要がある)
これらの課題がクリアできてくれば、月3~4台の生産が可能になるであろうと見込んでいます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
(株)東京サウンドボックス代表:佐藤文哉