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「ダイバーシティ・パーク in 新宿」で就労体験プロジェクトを実施しました

「就労体験プロジェクト」(※)とは、さまざまな理由で社会参加や働くことが難しい方々を対象とした就労体験です。スポーツやエンターテインメントのイベント会場など、非日常の“晴れ舞台でお仕事を体験していただき、社会参加に向けた第一歩を踏み出す機会を提供しています。

※本取り組みは、NPO法人ピープルデザイン研究所に委託して実施しています。


 2024年10月5日(土)〜6日(日)に行われた「ダイバーシティ・パーク in 新宿」は、障がい者スポーツを中心とした総合イベントです。会場に雪を運び込んで行う雪上チェアスキーをはじめ、車椅子バスケやボッチャなどのスポーツを体験することができます。

 今回は、東京都が行う「TOKYO SOCIAL FIRM ACTION(東京ソーシャルファームアクション)」の一環として、新宿区立新宿中央公園で行われた「ダイバーシティ・パーク in 新宿」において、障害のある方や社会参加を目指す方の「就労体験プロジェクト」を実施しました。

大規模イベント内で実施された就労体験プロジェクト


 ぽつぽつと雨が降り始めた新宿中央公園に、社会参加を目指す方とその支援者が集まってきました。イベント開始の11:00に先立って、8:30に集合します。木の下に移動して、朝礼が始まりまりました。朝礼では、今日の業務内容や注意点が案内され、参加者は緊張した面持ちで聞きいっていました。  今回の就労体験プロジェクトでは、イベント参加者への配布物のアッセンブリ(チラシや物品の整理業務)、そして配布業務を担当することになっています。参加者は午前と午後のどちらかを選んで集まりました。今回は、午前の参加者の様子をレポートしていきます。

 9:00から早速業務が始まりました。建物の中から、アッセンブリ物品の運び出していきます。建物の2階にあったパンフレット類をまずは階段で1階に降ろし、台車で作業場所まで協力して運びます。朝礼のときには緊張している様子だった就労体験参加者も、「どこに置けばいいですか?」と積極的に質問します。


 アッセンブリは、公園内のテントで行いました。担当者の説明を受けて、チラシ、消毒液、特製の飴、ティッシュなどを、ひとつずつ丁寧にオリジナルのピンクの袋へと入れていきます。  作業は、支援者とペアになって作業を進めていました。「チラシがこっちです」など、支援者と指を差して確認しながら、どんどんアッセンブリ済みの袋を増やしていきます。  普段は、フットサルの公式試合で、床のテープ貼りの作業などをすることもあるそうです。チーム関係者や大会運営スタッフ、そして地域の子どもたちと一緒に活動をします。このような就労体験の機会があることで、これから自身の行う仕事をイメージしやすくなるそうです


「イベントやってます!」約100セットを配布

 休憩を入れながら、アッセンブリの業務を進めます。そして11:30からは、作った配布物を持って移動し、公園を訪れている方々に向けて実際に配布作業を行いました。

 あいにく雨が降り始めてしまいましたが、それでも公園内は多くの方が行き交います。イベントを目当てにしている方ばかりではありません。都心にある公園なので、散歩をしている方、カフェを目当てに来ている方、通り道として使っている方など、イベントを知らない方もたくさんいるようです。

 そうした方々に向けて「こんにちは!」「イベントやってます!」と声をかけて、イベントのことをお知らせしながら、配布物を配っていきます。「何のイベントですか?」と興味を持って聞いてくださる方も見られました。


 ときには、無視されてしまうこともあります。しかし、根気強く配布を続けていく姿が印象的でした。なかには「これからイベントに行くんです!」とおっしゃる方もいました。そうした方には、支援者やボランティアの方を中心に「楽しんでくださいね!」と笑顔で送り出していきました。

 お子さん連れの方や日本語を話せない外国人の方も通りました。お相手に合わせて、「ハロー!」と声をかけるなど、支援者やボランティアの方と協力しながら配布を続けます。就労体験参加者が、抱っこされたお子さんにきちんと手渡ししてあげている優しい姿も見られました。

 粘り強く立ち続けて、およそ100セットの配布物を全て配り切りました。ボランティアで一緒に作業していた女性から、「どんどん渡してもらえて助かったよ」と声をかけられた就労体験参加者が頷いている様子も見られました。

 13:00までに、業務は終了です。雨の中で、予定よりも厳しい環境下での業務となりましたが、参加者はとても丁寧に、かつ積極的に業務に取り組んでいました。

「次はお給料をもらって業務をしてみたい」


支援者として同行した、認定NPO法人育て上げネットの阿部渉さんにお話を聞きました。

「いろんな就労体験を通して、そのとき目の前で求められている業務に取り組めることはありがたいです。業務に取り組んでみると、単純に『次はお給料をもらって業務をしてみたい』といった思いが芽生えてきていることを彼が話してくれました。

今日参加した彼は、私たちが関わり始めてからすぐにボランティアに行けるようになったわけではありません。もともとは友達も多かったそうなのですが、外に出にくくなってしまい、私たちが関わり始めた当初は意思表示をあまりしようとしませんでした。しかし、7ヶ月ほど関わってきて、今では短い言葉で気持ちや意思を伝える力を取り戻してきて、こうした就労体験にも積極的に参加しています。

こうした場で、いろんな方と関わりながら業務をすることで、コミュニケーションを取る必要が生じます。試行錯誤しながら、多様な表現でコミュニケーションを取ってみることで、一体感が生まれてきました。彼は次の機会も参加するそうです」

「お願いしている以上のことを積極的に取り組んでいただける」


 ダイバーシティ・パーク in 新宿実行委員会 事務局の貞光和(さだみつ・のどか)さんにもお話を伺いました。

「私は大学時代からイベントのボランティアとして参加し、現在は事務局のメンバーとして活動しています。
 就労体験では、イベントにご来場いただいたお客様と接する機会が多いため、トラブルが起こらないように心がけています。
 幸いなことに、これまでトラブルは発生しておらず、参加者の皆さんは私たちの期待を超えるお仕事ぶりでその姿勢に感謝しています。」

 今回は、あいにくの天気のなかでも奮闘する参加者の姿が見られました。「TOKYO SOCIAL FIRM ACTION(東京ソーシャルファームアクション)」の就労体験イベントは、これからも続いていきます。次回は、どんな場所で就労体験ができるのでしょうか。次回のレポートをお楽しみに。


ソーシャルファームとは、一般的な企業と同様に自律的な経営を行いながら、様々な理由により 就労に困難を抱える方が必要なサポートを受け、他の従業員と共に働いている社会的企業のことです。東京都は、ソーシャルファームを社会に広げていくため、全国で初めて条例を制定し、 東京都認証ソーシャルファームの創設や活動の促進に取り組んでいます。