【NYY #9】Old Man Gardner
こんばんは、KZillaです。
突然ですが、今のロースターでヤンキース在籍期間が一番長い選手は誰でしょうか。
答えは(記事の題名で既にお察しかと思いますが)今年で38歳の大ベテラン外野手Brett Gardnerです。
今回は(私の一番の推しでもある)Gardyについて語る(愛情表現をさせて頂く)記事とさせて頂きます。
まずはどんな選手かについて簡単に紹介をしていきます:
一言でまとめると、Gardyはバケモノ選球眼の俊足鉄人外野手。
安打製造やHR量産ではなく、「粘り強く塁に出る・足を使って好走塁/守備で確実に貢献する」といった比較的地味なプレースタイルは歴史的にスター性の選手が多いヤンキースでは珍しいタイプで、今も昔も大きく目立つことはありませんでした。
一方、メンバーの入れ替わりが激しかったヤンキースの転換期を影から支えてきた縁の下の力持ちで、チームとしては欠かせない存在として、チームメイトや首脳陣、そしてコアなヤンキースファンからは絶大な支持を得られ続けています。
百聞は一見にしかずなので、とりあえずキャリアハイライトをご覧ください(〜18年のみですが):
打撃編
まずは打者Gardyについて。Stats的には以下の通り(Baseball Referenceより引用)
・打撃の総合力はキャリアを通じて概ね平均レベル(生涯OPS+が平均レベル丁度の100、類似statのwRC+でも103と平均より3%上程度)
・打率は概ね.250-.270台と平均〜平均以下も、出塁率は.340-.350台と平均以上。四球が多い他、出塁率には反映されない指標として1打席あたりの平均球数が非常に高い(2019年は4.31球と規定打席到達者の中で5位)。投手に嫌がられる渋といバッターとして有名です。
この渋とさが全面的に見られる、Gardyの全てを象徴する打席がこちら:
2017年のALDS(ア・リーグ地区シリーズ)の最終戦にて。9回表2アウト1,2塁の場面で12球粘った後にタイムリーヒットを打ち貴重な追加点を打ち込み、次ラウンドへの進出へ貢献した。地味ながらしっかりバリューを発揮させる、如何にもGardyらしい名場面です。
・見る球数も多いので、1番や2番といった上位打線に起用されることが多く、毎年80~100得点近くは固い。今季も打撃は低調(直近調子上向きではあるが)ながら周りの選手の離脱で上位打線起用が相応に見られます。
・長打率はあまり高くなく、2019年を除き基本的には.300台後半〜.400台前半程度。近年はフライボール革命(長打を増やすべくボールをなるべく上げて打つ動き)やTTO野球(三振してでも四球とHRを増やす動き)の浸透もあり、35歳(2019年)にして28HR、OPS.829(リーグ平均対比+16%)とキャリアハイを更新。
・ただ致命的な欠点としては対左投手の成績が対右より著しく悪く(OPS.100程度の差)、キャリアの晩年に差し掛かっている今は特に左先発相手ではほぼスタメン起用が不可能の状態。
守備・走塁編
打撃面では長短慣らして平均程度ですが、Gardyと言えば守備と走塁。
とにかく足が早く、外野での広い守備範囲で幾多の打球をキャッチし、塁上で相手を掻き回すことでチームに貢献をしてきました。
守備範囲的に本職はCFながら、本拠地のヤンキースタジアムのレフトが広いこともあり、出場の6割程度はLFを守っています。
ただ、2010年代ヤンキースのCFは怪我離脱率も非常に高く、結局CFを守る羽目になることが多々ありました。(今季もシーズン開始早々に開幕スタメンのAaron Hicksが離脱しました)
また守備はデータで表すことは難しく、ここでは深く追求しませんが一応。
DRSやUZR等よく使われる守備statsではエリートレベルとされており、WAR等の総合評価系statsでも価値の大部分は守備で貢献しているとされています。なお肩は残念ながら弱いですが、それを穴埋め+αレベルで補球術が長けていると言えます。
走塁では見えやすいところで言うと生涯272盗塁、シーズン最多は盗塁王も獲得した2011年の49盗塁を成功させています。
それ以外では例えばextra base taken%(自身が塁に出ている状態で、安打で2塁以上進んだり、2塁打で1塁から生還する比率)が生涯50%と平均対比+10%、等積極走塁で付加価値を提供しています。
歳を重ねるにつれ盗塁こそ減ってきたものの、直近(21年オールスター以降)のヤンキースは突然の方針転換で積極盗塁を掲げ始めたので、まだまだ走れるGardy爺が見られるかもしれませんね。
頑丈すぎる編
そして何よりもGardyの最大の価値は体の頑丈さ。
先程の打撃statsのうち、「G」(Games、試合数)に注目ください:
2010年〜2019年の10年間で最低140試合、平均148試合に出場を果たしており、試合の9割以上に出ている計算となります(除く大怪我した2012年)。
特に所謂業務量コントロールが重要となっている現代野球では稀に見る出場率の高さで、如何に鉄人かが目に見える実績です。
そして2017年オフにGiancarlo Stantonを獲得して以来、シーズン開始前の戦力構想上では控え外野手として看做されてきたのに関わらず、外野陣の度重なる怪我により結局スタメンになることが多く、ベンチ要因化後の4年間においても試合の8割以上に出場しています。
この頑丈さ、怪我のしなさはどんなデータでも表しきれない程価値のあることだと思いますし、主力の怪我率が異様に高いヤンキースにとっては特に欠かせないと思います。
余談ですが、ヤンキースファン界隈でGardy頑丈ネタは多く、主要例として
「Gardnerは頭上からピアノが落ちてきても翌日スタメン」
「2030年のスタメンレフトはGardner」
「Coleの息子(生後数ヶ月)がヤンキースのエースを務めている時の監督兼選手はGardner」
等が挙げられます。
人格編
Gardyという選手について紹介をさせて頂きましたが、最後にGardyという人について。
とにかく熱血
1番の特徴は彼のパッション。常に全力でプレーをし、大事なヒットやスーパーキャッチを決めた際は大体吠えています:
チームメイトの活躍を誰よりも喜び、チームが境地に至った際に一番声を上げるのもGardy。
雰囲気を明るくする為、チームを盛り上げる為に常に大声で応援をしています。
(残念ながら良い感じの動画が見つからず)
ちなみにサヨナラ勝ちの時の水かけ役も大体Gardyです:
イタズラ大好き
意外と知られていないのはGardyのわんぱくな一面。
常にチームメイトにイタズラを仕掛けており、若手・ベテラン関係なく全員が無差別に被害を受けている様です。
様々なエピソードを聞く限りではスパイス系のイタズラが気に入っている様で、Clint Frazierのパスタに大量のレッドペッパーを混ぜたり、CC Sabathiaのクッキーにホットソースをぶちまけたりしています。笑
ただ、このイタズラは好きでやっているだけではなく(当然好きでやっているとは思いますが)、チームの雰囲気を和ませる一種のコミュニケーションとしてやっている様です。
実際長年ヤンキースを率いたDerek Jeterのキャプテン時代はヤンキースの伝統やJeterの真面目さによりカチッとした雰囲気があったが、14年オフのJeter引退以降はもう少し緩く、野球を全力で楽しむ風潮に変わってきています。
これにはGardyやCC Sabathiaのベテラン勢の影響が大きかったかと思われますが、実際若手としてマイナーから昇格してきたGary SanchezやAaron Judgeはこのチーム風土があってこそ活躍できていると言っているので、これこそデータには現れない付加価値だと思います。
イタズラそのものの動画こそないものの、2015年以降ヤンキース広報が出し始めた偽CMのネタ動画シリーズで雰囲気は伝わるかと思います:
Let Brett Bang事件
さて、Gardyを語る上で欠かせないのが2019年シーズンに大話題になった「Let Brett Bang」事件:
経緯を簡単にまとめると
① 7/19/19の試合にて球審による誤審連発への抗議としてベンチの屋根をバットでガンガン突き上げる。野次を飛ばしていたBoone監督が退場。Gardy本人は退場にならなかったものの、暴れている姿は放送で取り上げられ注目を浴びました。
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② 8/10/19の試合にてCameron Maybinへの誤審への抗議として再度バット突き上げ。その後次打者Mike Tauchmanへの誤審に対しMaybinが野次を飛ばしたら、Gardyの野次と間違えられ誤って退場となりブチギレる。
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③ 8/18/19の試合で2度誤審が起き、異議を申し立てた監督が退場。退場への抗議として3度目のバット突き上げをした結果、遂にバット突き上げ自体を理由にGardnerも退場になり再度ブチギレ。
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④ その後MLBからヤンキースへ正式な注意が入ったらしく、以降バット突き上げが禁止になった(らしい)が、チーム及びファンにて「Let Brett Bang」運動が浸透。
特に野手は塁に出たら両手でバットを突き上げる動きをするようになり、19年シーズンのチームエールとなりました。
本人もノリノリで、何度も塁上で元祖技を披露しております。
最終的には選手たちの間でMLBのロゴにちなみGardyのシルエットがバット突きをするロゴのシャツが流行るくらいでした:
正直このバットで物を叩きつけるという行為には賛否両論があるかと思います。MLBでは選手が物に当たる場面が多く見受けられるものの、お世辞でも良い行動とは言えません。
ただ、Gardyはチームが本来であれば受けるべきでない不利益への抗議として行なっていたのと、面白い形でチームの結束を導きだしたのを考えると、これも熱血でわんぱくなGardyらしさが生み出した良い運動ではないでしょうか。
ちなみにこのLet Brett Bang運動がここまで知られたのも、今や野球タレント?として有名人になったJomboyが動画にて取り上げた際にTwitterのトレンド入りやYouTubeの急上昇入りした影響が大きい。非常にわかりやすく纏められいるので是非ご覧ください:
誰よりもヤンキースを愛す、真のリーダー
14年間ヤンキース一筋ということもあり、とにかくチームへの愛が強いGardy。初FA前に4年の契約延長をした後、18年以降は毎年1年契約で残留を続け、今に至ります。
恐らく生涯ヤンキースで引退をするでしょう。
これまで言及してきた通り、Gardyは言うまでもなくチームのリーダーの一人であり、長年ヤンキースを支えてきた欠かせない存在です。
しかしGardy本人は自分のことを語るのは嫌うタイプで、チームのリーダーは必ずSabathiaやJudgeの他、他のベテランや模範な若手を挙げたり、と他者に焦点を逸らす傾向があります。
ただそれらのチームメイトに聞くと、全員が口を揃えてGardyを今まで一緒にプレーしてきた選手らの中でも最高のチームメイトだと称えます。
そんなGardyでも一つ誇りに思うと言うことがあります。
それは2009年のWS優勝メンバーの最後の生き残りとして、90年代後半〜2000年代の黄金期を支えたCore Four(Jeter, Rivera, Posada, Pettitte)の意思を後世に伝える橋渡し役を務められたことの様です。
誰よりもヤンキースの歴史を尊重し、ヤンキースとしてのプライドを担っています。
ヤンキースの歴史と言えば、近代のMLBでは珍しくキャプテン制度を保っていますが、この座は2014年まで務めたレジェンドJeterの引退以来ずっと空席となっています。
次期候補として若手ながら高いリーダーシップを発揮しているJudgeの名前が挙がっていますが、(非公式ながら)キャプテンの務めはずっとGardyが担ってきたと思っています。
JeterやMattinglyの様にわかりやすくエリートな成績の持ち主ではない為首脳陣が正式に任命しづらいのはわかりますが、長年の貢献を目に見える形で評価してあげて欲しかったなと思います。
私が今回伝えたいことはただ一つ:Brett Gardnerは紛れもなくヤンキースのレジェンドです。
引退をしてしまう前に最後にもう一度世界一を経験して欲しい。
今年、もしくは来年、必ずWS制覇をしてください。
キャプテンのGardyの為に。
引用:Baseball Reference, Fangraphs, Bleacher Report, MLB.com, Yankees各種SNS等。内容の多くは以下記事よりお借りしております: