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受刑者のアイドル・Paix²(ぺぺ)が “プリズンコンサート”で歌を届け続ける情熱と覚悟

デビュー直後から精力的に刑務所を始めとした矯正施設に足を運び続けている女性デュオ・Paix²(ぺぺ)。慰問ではなく「プリズンコンサート」と称されるライブパフォーマンスを、20年以上・500回超積み重ね、今や「受刑者のアイドル」と呼ばれるほどの存在感を放っている。保護司や矯正支援官といった社会的役割も担うほか、刑務所における長年の活動がバラエティ番組でも取り上げられるなど、大衆からの注目も集めている。メンバーのめぐみさんとまなみさんに、培ってきた経験と活動への想いなどについて伺った。


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\begin{array}{|l|l|} \hline
\text (目次) \\
◆プリズンコンサートのリアル \\
◆全国の矯正施設を巡り、描いた軌跡\\
◆出所者の更生に対して想うこと\\
◆“ぺぺコミュニティ”をこれからも \\
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\end{array}
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プリズンコンサートのリアル

20年以上続けている「プリズンコンサート」について話すPaix²(ぺぺ)の北尾真奈美さんと井勝めぐみさん

Paix²が初めて刑務所のステージに立ったのは、インディーズデビューした2000年。以来、およそ24年にわたって全国各地の刑務所を巡り続けている。カラフルな衣装を纏い、その場をパッと照らすような明るさや軽やかさが感じられるパフォーマンスが印象的だが、初期の頃は試行錯誤しながらライブを作り上げていた。

当時のステージ写真を手に取りながら、めぐみさんは語る。

「矯正施設という特殊な場所柄、比較的しっとりとした雰囲気のステージングを行っていたんです。目の前にいる受刑者の方々に束の間音楽を楽しんでもらえたら」

しかし次第に、塀の中だけでなく社会全体を見据え、自分たちが刑務所でパフォーマンスをする意義を再考し、その意味が伝わるような活動にならなければいけないと気持ちが変わっていった。

ステージにおけるMCの内容も、受刑者一人ひとりの心に響くような、社会復帰のきっかけになるメッセージを意識するようにシフトした。また、一般的に刑務所で行うコンサート活動は「慰問」と呼ばれるが、めぐみさんとまなみさんはこの言葉を基本的に使わない。受刑者を“慰める”のではなく、共に考える場になるようにというこだわりから、長年の活動を「プリズンコンサート」と一貫して称している。

さまざまな経験を重ねたからこその気付きもある。Paix²は、フラットな目線でステージに立つことを常に意識している。

「受刑者の方々が社会の中で間違ったことを犯してしまったのは事実ですが、コンサートの時間においては私たち演者との間に上下関係は作りたくないんです。上から言われた言葉は、心に残るというよりも逆に反発心や拒絶反応を生ませてしまいます」

刑期や罪名によってパフォーマンスの内容を大きく変えることはしないが、施設ごとの方針に気を配っていると、まなみさんは語る。

「矯正施設は大体1〜2年ごとに幹部が変わり、その幹部の方のタイプによって施設の色がかなり左右されるんです。コンサートにおいて、受刑者の方々の発声や身振り手振りは禁じられているのですが、施設によっては歌に合わせて拳を上げることが許可されることもあります。また、少年が収容されている施設は比較的アットホームな雰囲気の所が多いですね。人数が少なければ、ライブ中にステージから降りて1人ひとりと握手することもあります」

本取材の数日前、徳島刑務所でプリズンコンサートを行ったPaix²。めぐみさんは、自身のパフォーマンスとその時の心情を振り返る。

「徳島刑務所のような無期懲役等の刑期が長い受刑者が多く収容されている施設は、一生を塀の中で過ごす可能性が高いです。私たちはライブの最後に『逢えたらいいな』という曲を社会復帰への希望を込めて歌わせていただくのですが、もう社会には出られない方々にそういったメッセージを届けるのは酷なところがあります」

見た目には同じコンサートに見えるかもしれないが、発する言葉ひとつで受け取り方が大きく変わるため、慎重に調整することをPaix²は心がけている。

施設の雰囲気は、男性のみが収容されている刑務所と女子刑務所で大きく異なるのだそう。2024年2月に佐賀県にある女子刑務所・麓刑務所を訪れた際は、受刑者が手作りのボンボンを手に持ち、ステージに立つPaix²を出迎えた。ボンボン作りも受刑者の作業の一環であるが、施設職員によると、おもてなしの心を育む意図も込められているようだ。


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