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【オリエンテーリング】初回「地図を使うスポーツ」

 皆様はじめまして。東京地図研究社、若手社員のSと申します。
 突然ですが「オリエンテーリング」というスポーツをご存じでしょうか?私はこのスポーツにかれこれ10年以上傾倒しており、それがきっかけでこの地図業界に足を踏み入れた、という経緯があったりもします。
 そんな私の人生の方向を大きく決定づけたスポーツであるオリエンテーリングですが、この度弊社のnoteという場をお借りしてその魅力をお伝えする運びとなりました。日本ではまだまだマイナーなスポーツですが、「こんな世界があるんだ」と興味を持っていただけたら幸いです。

 本記事は前半で競技の紹介、後半で私が参加した大会のレポートという構成をとります。何回か連載する予定となっておりますので、日本各地の大会を紹介出来たらいいなと思っております。


オリエンテーリングとは

 連載初回の今回はまず「オリエンテーリングってどんなスポーツなの?」というところを紹介していきます。

ルール

 地図上で指定されたチェックポイントを順番に回り、スタートからゴールまでのタイムを競うスポーツです。チェックポイント間をどうやって進むかは地図を読んで判断します。

競技で使用する地図の例(2024/10/20 全日本ロング)
筆者が実際に走った際の地図。斜面が一様なため地形の判読が難しい

 林間学校などでレクリエーションとして経験したことがある方もいるかもしれません。レクとしてのオリエンテーリングでは「グループで」「のんびり歩いて」回ることが多いですが、競技としてのオリエンテーリングは「1人で」「なるべく速く」回ります。

 各チェックポイントには目印となるフラッグと、計時用の電子機器が置かれます。競技者はICカードのような小さなチップを携行し、それを設置された機械にかざすことでその地点を通過した証明とタイムの記録を行います。

目印となるフラッグ。上部に計時用の機械が取り付けられている
競技者が携帯するチップ。親指くらいの大きさ
Eカード(左)とsi(右)のいずれかが用いられることが一般的

地図を読む

 地図はスタートの瞬間に開くことができ、そこで初めてどういったコースを回るのかを知ります。地図を開く瞬間のワクワクはたまらないものです。
 地図から最適なルートを見つける、現地の様子と地図を対応させてナビゲーションをするなど、地図読みの能力が問われるスポーツです。

2023年度全日本大会(スプリント種目)観戦ガイドより
https://www.orienteering.or.jp/jsoc/2023/docs/JSOC2023_SpectatorsGuide1.0.pdf

 タイムを競うスポーツですが、速く走ることに夢中になって地図読みがおろそかになると、現在地を失ってミスタイムを計上するリスクが高まります。著名なゲームクリエイターの桜井政博氏曰くゲームの楽しみは「リスク」と「リターン」にあります。オリエンテーリングも地図上の全ての情報を拾えばミスのリスクは抑えられますが、走る速度が遅くなりリターンは小さくなってしまいます。地図を読むスポーツですが、タイムを縮めるには「いかに地図を読まないか」が重要で、そのバランスが難しく醍醐味のひとつといえます。

地図上の線が実際に筆者が通ったルート(2024/10/19 全日本ミドルより)
11番の手前で位置を勘違いして彷徨いました…

 競技中は地図のほかにコンパス(方位磁石)も使用することができます。逆に言えば地図とコンパスのみで、時に森の中の道なき道を進むことになります。

コンパスの例
登山でもよく用いられるプレートコンパス(左)や、地図読みとの併用がしやすいサムコンパス(右)などがあります。私は右のサムコンパスを愛用しています。

種目

 オリエンテーリングにはいくつかの種目があります。
 まず大きな分類として移動手段で分けられます。走って回るフットO、マウンテンバイクで回るMTBO、クロスカントリースキーで回るスキーO、身体障がい者でもナビゲーションを楽しめるようにと開発されたトレイルOがあります。私が取り組んでいるのはこのうちフットOで、オリエンテーリングの中では最もメジャーな種目です。

 そしてフットOの中にも性格の異なるいくつかの種目があります。主に森の中で行われるロングミドルリレーと公園や市街地、大学のキャンパスなどで行われるスプリントです。それぞれ求められる能力が少しずつ異なりますが、詳しい話はまた改めて紹介できればと思います。

地図について

 最後にオリエンテーリングに欠かせないアイテムである地図についても簡単に紹介します。

 オリエンテーリングでは競技専用の地図が作成されます。この地図にはルート決定や現在地把握に有用なすべての特徴物(地物)が正確かつ見やすく描かれます。
 縮尺は森で行う種目で1:15,000または1:10,000、公園などで行う種目で1:4,000が基本となっており、一般的な地形図と比べると大縮尺です。国際的に統一された地図図式で描かれるので海外のレースでも問題なくコースを回ることができます。せっかくなので私がこれまでに参加した海外の大会の地図を何枚か紹介します。

ハンガリー(2018/7/12 ジュニア世界選手権大会ミドル予選)
香港(2018/12/26 アジア選手権大会ミドル)
トルコ(2020/2/15-3/1 EONトレーニングキャンプより)

 地図を作成する際には競技で使用する範囲をくまなく踏査し、必要な情報を記録します。私も何度か競技用地図作成の経験があります。情報を見やすく正確に表現するのは難しく大変ですが、とても楽しいです。

 「地図さえあればどこでも競技エリアになる」というのはオリエンテーリングの最大の特徴であり、この競技のアイデンティティだと私は考えています。競技用地図についてもまた改めて詳しく紹介できればと思います。

 さて、どんな競技なのかイメージできましたでしょうか?まだまだ伝えたい特徴や魅力はたくさんありますが、初回ですしここで切り上げてしまいます。
 後半は筆者が最近参加した大会の紹介です。実際の競技の様子がより鮮明に分かると思います。

大会参加レポート「龍谷OLC復活記念大会」

 2024年12月22日に滋賀県大津市の「龍谷大学瀬田キャンパス」にて開催された大会に参加してきました。
 先ほどの競技紹介で「地図作成の経験がありますが~」とも書いたように、オリエンテーリング界では普段競技を行う人たちも時に運営者側に回ってイベントを開くことが一般的です。地域クラブや学生クラブが主催する大会・練習会は毎週のように日本各地で開催されています。
 今回参加した「龍谷OLC復活記念大会」もそのようなイベントのひとつで、比較的規模は小さい大会となっています。

 高校時代の後輩が運営に関わっていて興味はあったものの、滋賀県開催ということで参加は難しいかなと思っていました。ところが偶然にも前日に三重県への出張が入り、「なら行けるじゃないか」と参加を決めました。東京名古屋間の新幹線代が経費で落ちるので美味しかったです。

競技地図に自分のルートを重ねたもの

 龍谷大学瀬田キャンパス内でのスプリント種目の大会で、実走距離3.0kmのコースを走りました。3kmのコースを組むには手狭なキャンパスですが、地図を両面印刷することでごちゃつかず見やすかったです。(画像では裏面のコースを表面に青色で書き写しています)

 私が撮影したレース中の動画がありますのでよければご視聴ください。特にスプリント種目は「走りながらの地図読み」が容易ですので、このようにナビゲーションをしながらもほぼ止まることなく走り続けられます。

 レースを振り返りますと、綺麗に地図が描かれており読みやすく、快適にナビゲーションを楽しめました。全体的に易しめでスピードが求められるコースでしたが、一部階層構造を有している箇所もあり程よいスパイスとなっていました。
 雨上がりで足元が滑りやすく、序盤で大横転をしてしまったのが痛かったです…。ですが足元に気をつけつつスピードを上げ、4:00/km前後の良いペースで走れたのは良かったです。3.0kmでタイムは12:35。走力にはあまり自信がない方ですが、比較的良いタイムが出せて嬉しいです。(ちなみに優勝選手は10:53で走っています。速い。)

 年内最後の西日本への遠征ということで関西方面の知り合いの方に年末の挨拶ができたのは良かったです。また2月に弊社メンバーで参加する府中駅伝に向けて、フィジカルの向上を感じられた点も収穫でした。

 この大会、渉外上の理由により延期開催となっていました。運営準備は大変だったことと思いますが、とても良い大会でした。運営ありがとうございます。

おわりに

 私は毎週のように週末は地図を片手に野山を駆け回る生活をしています(実は先述の出張の日も仕事の後に大会に参加しています)。それほどにも私を惹きつけているオリエンテーリングについてもっと認知され、そして興味を持ってくださる方が一人でも増えれば幸いです。
 この連載は細々と(月1ペースくらい?)続けていくつもりですので今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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