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【7時間目の音符/あまあま】志摩時緒先生インタビュー

吹奏楽部の先輩あずみさんと後輩葉平くんの、ラブラブなお付き合いを描いた『7時間目の音符』。中学から付き合っている熟年(?)カップルと、高校から付き合い始めたばかりのカップルを交互に描く『あまあま』。作者である「イチャラブコメディー」の新旗手、志摩時緒先生にメールインタビューを敢行!デビューまでの道のりを辿る前編、作品制作の裏話に迫った後編と、ファン必見の内容間違いなし!

Q1.イラストや漫画を描き始めたのはいつ頃でしょうか?

志摩時緒(以下志摩):漫画イラストを描き始めたのは小学4年、5年辺りです。クラスの友達が描き始めてそれと一緒に始めました。コマを割った漫画をノートに描き始めたのは中 学くらいですが、まともに完成できたものはありませんでした……キャラの描き分けはできないし、構図もワンパターンだし、背景も描けないし。大体2、3 ページで続かずに終わっていました。

Q2.同人活動を、相当長く続けられているようなのですが、最初に同人文化を知った/サークル側で参加したのはいつ頃でしょうか。また、サークル参加し始めた頃の思い出などあれば教えてください。

志摩:同人という存在を知ったのは中学3年くらいです。windows95が出た当時―自分は小学5年生位ですが―親がパソコンを買ってイ ンターネットを始めて、それでハマって中学の頃からは自分でHTMLいじってホームページを作っていました。お絵描き掲示板とかで交流しているうちに、ネッ ト上の友達が地元の小さな同人誌即売会に出ると聞いて、なにそれ?と思って一般で行ってみたのが最初です。実際に行ってみて、便箋とかラミカとかコピー本 とか自分で作って頒布しているのを見て、自分もやりたい!と思い、高校1年の時に初めて地元の同人誌即売会にサークル参加しました。初めてのコピー本は 10部も作らなかったですが、3、4人の方に手に取ってもらえて嬉しかった覚えがあります。

Q3.きちんと「コマを割った漫画」を完成することができたのは、即売会に参加したことがきっかけなのでしょうか?ちなみにその時の作品は、二次創作だったのでしょうか?

志摩:二次創作で短編を下手なりに1本最後まで仕上げたのが最初です。オリジナルだと設定と話を頭の中で考えるのは楽しいけど、それを上手くまとめて描けな かったんです。二次創作の場合は設定などは原作ありきで、この好きなキャラのこういうシーンが見たいからそれを描く、ということができたので完成できたんだと思います。

Q4.商業ではアンソロジーが初めてのお仕事だったと思うのですが、どのような経緯でお仕事をお引き受けになったのでしょうか?

志摩:アンソロジーのお仕事は、サイトを見た編集さんからメールを頂く形で始まりました。
それまではどちらかというと女性向けのジャンルで細々と活動していたんですが、『ひぐらしのなく頃に』にハマってイラストを公開していたらサイトの閲覧者が増えて、その流れでアンソロジーのお仕事を頂きました。

Q5.芳文社と白泉社、それぞれのデビューまでの経緯を教えてください。

志摩:芳文社の編集さんからメールを頂いたのが始まりです。09年4月『放課後プレイ』の同人誌1冊目を出した頃にご連絡を頂いて、連載前提の読切を 作ることになりました。でも、私はそれまでまともにオリジナルの読切漫画を作ったことが無かったので、何をどう描けば良いのか分からず、作業は中々進みま せんでした。
芳文社での読切を考えつつ、同年7月に『放課後プレイ』の同人誌2冊目を発行した際のイベントで、白泉社の編集さんから「オリジナルで漫画描くことは興味 ありますか?」と名刺を頂きました。その時の私は「オリジナル描けなくて途方に暮れています状態」だったので、その場ではお断りしてしまったんです。
それから半年くらい経って芳文社での読切『7時間目の音符』がまんがタイムきららフォワードに掲載されますと冬コミで告知した所、白泉社の編集さんから改 めてご連絡を頂き、『楽園 Le Paradis』でのお仕事を受けることになりました。編集さんにその後お話を聞いたら、『放課後プレイ』の同人誌を見て声をかけて頂いたんですが、それ 以前に描いていた『謎の彼女X』の同人誌も見て頂いていたみたいです。
その後、それぞれ同時期に連載準備を経て、10年11月から『7時間目の音符』隔月連載開始、11年2月から『あまあま』連載開始となりました。

Q6.本格的に、商業漫画家としてやっていくことを決断した瞬間はありますか?

志摩:漫画家になりたいと思って漫画家になったわけではなく、いわゆる同人上がりデビューなので、『7時間目の音符』と『あまあま』の連載を始めた頃は兼業で 会社員をしていました。連載が決まってからもそのまま兼業で続けるつもりだったのですが、会社の上司に相談した所「持っている技術を今の仕事より活かせる 職があるなら、そっちを大事にした方が良いよ」と言われたので、一本に絞る形で商業漫画家としてやっていくことになりました。なので漫画家になったという よりも、『今自分に出来る職に転職した』という意識の方が強いですね。

Q7.ネームを完成させるまでの流れを教えてください。また、注意しているポイント等があれば教えてください。

志摩 :普段からぼんやりと、こういうのを描きたい、と思ったのを適当な紙にメモしています。それを元に、編集さんと打ち合わせをして話のおおまかな流れを最初 から最後まで作ります。その後持ち帰って一人でセリフを書き出し、A4用紙を32等分に折って、ページ配分・コマ割り・吹き出し位置を決めるミニネームを 作ります。ミニネームで最後まで行ったら、A4横サイズで見開きを描く形でネームを清書し、それを編集さんに確認してもらいます。
注意しているのは、4コマの時は一つの吹き出しに対して台詞の文字量が多くなる、というのを編集さんから指摘されがちなので、読みやすいように不要な単語は削ぎ落して短いセリフにするよう心がけています。

Q8.セリフを考える作業とコマ割等の作業を、分けて行うのは何故なのでしょうか?

志摩:私の場合、決められたページ数に上手く話を収めるのが苦手なので分けて行っています。基本的に会話が中心の漫画なので、セリフとコマ割りを同時でやろう とすると、前半はゆっくりなのに後半はハイペースで決められたページ数に収まらなかった……なんてことになったりするので、先に出したいセリフを最後まで 書き出してからページ配分をしています。

Q9.『あまあま』冒頭の、「事後から始まり、『えー』というモノローグで終わる』という流れを毎話繰り返すというアイディアは、連載当初からあったのでしょうか?

志摩:冒頭の流れは1、2話を実際にネームを起こしてみて、同じパターンにした方が話に入りやすいな、と思ったので、以降もそうするようになりました。話が先に進むにつれ、その形式に合わない場合は臨機応変に変えたりもしています。

Q10.『あまあま』は4コマとストーリー漫画的なコマ割を併用するという形式をとっています。毎回コマ割りページを使う箇所が違いますが、どの箇所で切り替えるかは、ネームを描きながら決めるのでしょうか?

志摩:これは編集さんの案です。自分がそれまで二次創作で4コマ漫画もストーリー漫画も描いていたので、4コマ主体にストーリー漫画を挟む構成を提案されました。コマ割りページの位置に関しては、その時々ネームを描きながら程良い所に入れるようにしています。

Q11.ネームを原稿におこすまでの流れを教えてください。

志摩:作画はデータ原稿ですが、やり方が煩雑なので参考にならなそうですが…。
1.ネームを元にPhotoshopで枠線吹き出し・台詞指定を入れ、A4用紙に出力します。
2.出力した紙に白紙を重ねて、そこにシャープペンで下書きをします。
3.出来た下書きをスキャンし、SAIを使ってペン入れをします。
4.背景はComicStudioの3Dをレンダリングしたり、Illustratorを使って描いています。
5.最終的にPhotoshopですべて合成し、トーン作業をして完成です。
アシスタントさん無しで一人でやっています。私自身もアシスタント経験はありません。学生の時からPhotoshop、illustratorを使い慣れ ていたのでこんな原稿の作り方をしていますが、ComicStudioですべての作業をすれば効率が上がるんだろうと思いつつ、いまだに練習する時間もと れず、これで慣れているのでそのまま続けている状態です。その内練習する時間取ってソフトを一本化したいですね。

Q12.女の子の赤面描写であったり、逆に合間に挟まれる無表情なシーンからは、むしろ様々な感情が読み取れたりと、感情表現がとても素晴らしいと思います。何か意識されていることはありますか。

志摩:キャラクターの表情の描写は、自分では意識してきてなかったんですが、編集さんから「あなたの漫画は表情が良いんですよ」と言われて初めて、「そうな の?」となりました。それ以来、意識して『赤面』と『無表情』といった、表情の緩急に気を付けるようになりました。なので、読んでそういった風に思って貰えたならば嬉しいです。

Q13.その他、作画面でのこだわり・注意しているポイント等があれば教えてください。

志摩:自分は絵が上手いわけではないし、漫画の描き方についてしっかり習ったことがあるわけではないので、出来る範囲で丁寧に描くことを意識しています。枠線からはみ出た線はちゃんと消すとか、吹き出しはセリフと画面に合わせて適切なサイズにするとか。パッと見て読みやすい画面になるように気をつけて作画してい ます。

Q14. 現在連載されている『7時間目の音符』『あまあま』の両者とも、「出会ってから付き合い始めるまで」というラブコメの王道的展開ではなく、「既に付き合い始めている」段階からストーリーが始まります。

志摩:これは私が描きやすかった、というのが一番の理由です。
「7時間目」の読切を作る際、「付き合ってない男女二人に何かがあって関係に変化が起きる」話を作ろうとして、全然まとまらなかったんです。ちゃんとした オリジナルの読切を作るのが初めてとは言え、なんでこんなにできないんだろう、二次創作なら普段通り漫画描けるのにと考えてみて、私の二次創作は「付き合っている二人の話」が多いことに気づいたんです。それならばと、既に付き合っている二人の設定にして話を作ったらするっとできたのが、『7時間目』の読切です。

Q15.作中で起こる出来事やエピソードの中に、先生の実体験は含まれていますか?

志摩:『7時間目の音符』は吹奏楽部を舞台にしていますが、私自身も中高と吹奏楽部に所属していたので、吹奏楽部の行事などは当時の経験から描いています。その中でも20話の文化祭エピソードは、半分位は実際に自分が高校生の時の文化祭に起きたことを元にしてたりもします。

Q16.ここからしばらく『7時間目の音符』の質問を!
「彼氏からネクタイを貰う」という駒城高校の風習は、様々なシュチュエーションを生み出す素晴らしい設定でした。先生の母校での風習だったのでしょうか?

志摩:母校で風習だったというよりは、その当時近隣の高校生達がよくやっていた覚えがあって、私としては高校生のあるあるネタのつもりで描いていました。部内の身近な先輩カップルがやっていて憧れていたので、読切であずみさんと葉平の制服をブレザーにした時点で、これで一本漫画描けるな……と思っていました。

Q17.1話の時点で既に米子先生や鶴ちゃんがモブに紛れて登場していますが、登場人物や話の流れは連載が始まった当初からある程度固まっていたのでしょうか?

志摩:読切の後、連載化にあたって主要3組のラブコメにすることになったので、1話の時点で主要キャラはざっくり固まっていました。話の流れも、その時点で大まかに最後まで決まっています。

Q18.「主要3組を出す」というのは、志摩先生のアイディアでしょうか、それとも担当さんの提案でしょうか?

志摩:ちょっとうろ覚えですが、担当さんの提案だったと思います。あずみさんと葉平の1カップルでは連載だと話がもたないし、読切では部内の男子は葉平1人と いう設定でしたが、連載でも1人だと男子学生を描くのが好きな私があんまり楽しくないので、普通に男女混合の部活に設定を変えて他の子たちのラブコ メも……という流れで決まったと思います。

Q19.米くんと米子先生の関係性は、少女漫画的ないわゆる「経験豊富なイケメンに振り回されてしまうヒロイン」という印象を受けるのですが、そういう部分は意識して描かれていますか?

志摩:米くんと米子先生は完全に少女漫画ですね。編集さんともすごいベタですねと言いながら作っています(笑) 米くんと米子先生に限らず、私の漫画は基本ベタなところを行っていると思います。ベタとかありがちな設定はどうなのかな?奇抜な設定じゃなきゃ漫画はダメなのかな?と思っていましたが、最近はベタ に描くのが自分にとって楽しいので、自分はこの方向で良いんじゃないかなと思うようになりました。

Q20.先生の作品では、男女両方の視点が描かれることが多いですが、描いている時先生はどちらに感情移入していることが多いですか?

志摩:基本的には第三者目線で男子も女子も両方にやにや見ていたいですが、どちらかというと男子視点に入って女子を愛でています。

Q21.先生の作品の魅力の一つは、男の子の格好良いところと一緒に「ヘタレところ」も一緒に描きだしてしまう所にあると思うのですが。

志摩:ヘタレ男子描くの楽しいです!男子視点で女子を愛でるように描いていますが、描き手としては、「女子を愛でている男子が可愛いなあ」と思いながら描いています。

Q22.最後に、『7時間目~』『あまあま』それぞれのファンに対して、一言ずつメッセージを!

志摩:自分の漫画を読んで下さりありがとうございます!『7時間目の音符』も『あまあま』も作中複数のカップルがいますが、それぞれが各々のペースで恋愛しています。今後も彼らにゆるくお付き合い頂けると嬉しいです。そして彼らの行動が、少しでもあなたの琴線に触れたら幸いです。