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天野シロ先生インタビュー【キングダム・ハーツ/ボクとワタシの変愛事情】

あの「ウォルト・ディズニー」と「スクウェア・エニックス」、日米の協力タッグから生まれた超人気作、『キングダムハーツ』のコミカライズ作品などを多数手がける作家、天野シロ先生。ゲームコミカライズの最前線を走り続ける先生に、20の質問にお答え頂きました!

Q1.初めて漫画を描き始めたのはいつ頃ですか?またそのキッカケは?

天野シロ(以下シロ):年上のいとこが漫画家を目指していた影響もあり、そういう仕事があるのだなと意識したことがきっかけだったと思います。作品として一本完成させたのは高校の終り頃、漫画賞に応募するために描きました。

Q2.現在多くのゲーム作品のコミカライズを手がけておりますが、以前からゲームはお好きでしたか?

シロ:弟や近所の友達とファミコンに興じる子供時代でしたが、当時としては普通だったと思います。

Q3.漫画家になろうと思ったのはいつ頃でしょうか?

シロ:漫画家という仕事の存在を知る前の夢が「本屋さん」だったのですが、その理由は、本屋の店員さんが店に置いている本を全部書いて作っていると思いこんでいたからでした(笑) おそらくその頃から、漫画家のような仕事がしたかったのだと思います。

Q4.持ち込みや投稿を始めたのはいつ頃でしょうか?

シロ:高校の終わりから投稿しはじめました。大学には進学するつもりがなくて、就職活動の一環のつもりで漫画を投稿していました。

Q5.赤塚賞を受賞された経験がございますが、当初はギャグ漫画家を目指されていたのでしょうか?

シロ:赤塚賞はページ数が少なかったのが、投稿の決め手でした。手塚賞は31Pなのですが、赤塚賞は15Pから募集があって、長いページの漫画を描いたことがなかった私は、赤塚賞に応募しようと思い立ちました。赤塚賞に投稿した時点で、ギャグ漫画家を目指すという意識はありませんでしたね。

Q6.商業デビューのキッカケは?

シロ:ファミ通ブロスというゲーム雑誌に友人がデザイナーで勤めていて、紹介してもらったのがきっかけです。コミカライズを多く手がけるキッカケになったのも、この紹介があったからですね。

Q7.『キングダムハーツ』の連載が決まった時の心境をお聞かせください。

シロ:『キングダムハーツ』のディレクターの野村哲也さんが、当時ファミ通ブロスで短期連載した『パラサイト・イヴ』のコミカライズを読んで気に入ってくださったということでお話を頂きました。『パラサイト・イヴ』の、あんなめちゃくちゃなギャグをやっていいのか!?と当時は思いましたね。もちろん、現在の作品はかなり押さえられたものになっております。あと、その頃はディズニー作品もあまり知らなかったので、できるかどうかという不安もありました。

Q8.コミカライズする際、先生も実際にゲームを隅々までプレイされるのでしょうか?差し支えなければ、その腕前も教えてください!

シロ:隅々までとは言えませんが、いちおう一通りはプレイします。腕前は、へたっぴです(笑)

Q9.ネームを切るときの手順を教えてください。

シロ:ゲームのシナリオを元に、オリジナル要素を加えてプロットを作ります。そのあとセリフを書き出してから、コマを割ってネームを描きます。ネームを描いているうちに良いアイデアが出たら方向修正したりもします。

Q10.ダンジョン探索・レベル上げ・バトルシーン等々、漫画にしづらいゲームの部分は沢山あると思います。そういった、ゲームと漫画というジャンルの違いを意識されることはあるでしょうか?

シロ:意識はしているつもりなのですが、これまであまりうまく取り入れられていなくて、ほとんどスルーしてしまっています。「もっとああすればよかった」と思う部分がたくさんあり、今でも反省することが多いです。

Q11.作中に、脈略なく差し込まれるギャグが毎回面白いのですが、ネームを切っているときついつい思いついてしまうのでしょうか?

シロ:思いついてしまうのです…(笑) よくない癖だとは思います。シリアスな展開に耐えられず、照れが入ってしまうせいもあります。

Q12.ゲームをプレイしたことがある人、逆にやっていない人の両方が作品を読むことになるかと思うのですが、両者に楽しんで読んでもらえるように意識して作品を作られているでしょうか?

シロ:ゲームをやっていない人が読むとは思ってもみなかったので、はじめの頃は考えていませんでした。ところがファンの方の中に、漫画からゲームに入ったという人がけっこういらっしゃったので、それからは意識しているつもり、です。

Q13.現在の作画行程を教えてください。また、作画する際気をつけている、またはこだわっている部分を教えてください。

シロ:ネームからすべてパソコン上でやっています。作画の際は見開きで絵のバランスがとれるようにと考えています。バランスというのは、見たかんじがこう…いい感じになるようにですね…… なんだかとってもくだらない、自分だけのこだわりを持って描いていた気がします(笑) どうも、描いているうちに全体が均等に見えるように配置する癖があ るみたいなので、もっとアンバランスなレイアウトにも挑戦したいと思います。 あとページをめくった時に、前のページとコマ割が重ならないように気をつけています。

Q14.コミカライズする際、ゲームのキャラクターデザインを漫画のデザインに落とし込む時に気をつけていることはありますか?

シロ:漫画はモノクロなので、白と黒のバランスがいい感じになるようにと考えています。あと作画時間との折り合いで、細かい部分を省略したりしています。

Q15. 省略した部分とは、具体的にどういったところでしょうか?

シロ:服の細かいパーツとかです。描き忘れているだけの場合もありますが…そういえば顔に傷のあるキャラがけっこう出てくるのですが雑誌掲載時に時々描き忘れていて、コミックスで修正しています。ごめんなさい……

Q16.『キングダムハーツ』では多くのディズニーキャラクターが登場しますが、描く時に苦労していることや注意点などありましたらお聞かせください。

シロ:イキイキとさせることでしょうか。あとギャグシーン等はイメージが壊れすぎないように気をつけています。ダメな場合はちゃんとチェックが入ります(笑)

Q17.『天野シロART WORKS KINGDOM HEARTS』の巻末にて、「ディズニーでのイラストトレーニングは私にとって素晴らしい勉強になった」と書いていますが、具体的にどのような訓練を受けたのでしょうか?

シロ:絵や物語を考える時の心構えから指導を受けました。それまで意識せずにやっていた部分というのを教えて頂いたと思います。今では漫画の教本等にも書いてあると思いますが、身体の動きの流れとか立体のとらえ方等、技術的なこともトレーニングで教わり意識するようになりました。ディズニー以外のキャラにはあまり活かされていませんが……(笑) おまけに最近忘れがちなので、またしっかり意識していきたいと思います。

Q18.今後、ゲーム作品のコミカライズ以外に、オリジナル作品にも挑戦していきたいですか?

シロ:機会があれば。オリジナルのネタはネタ帳にチョコチョコ書いているので、いずれ何かできたらなあと思っています。

Q19.先生は10年にわたって『キングダムハーツ』という作品に携わってきたわけですが、先生にとって『キングダムハーツ』という作品はどういう存在ですか?

シロ:たくさんのことを学ばせて頂きましたし間違いなく自分の人生に深く関わっている作品といえます。ですが、コミカライズの特性上、自分の作品とは言い切れない切なさがあるというか、心の中には常に微妙な思いが揺れ動いています。10年来の片思いでしょうか。
しかしまさかこんなに長く連載が続くとは思っていませんでした。読者の皆様に愛されることだけが存在意義ですので、これからも応援よろしくお願いいたします。

Q20.最後に、漫画家を目指す学生にメッセージをお願いします!

シロ:漫画家というと、部屋にこもって絵を描いているイメージがあるかと思いますが、たくさんの人に出会い、たくさんの経験をし、いろいろなものを見ることがとても大切だと思います。若いうちにそれをやっておけば、自分の中にネタのストックがたくさんできます。だから、たくさん外に出てください。部屋にこもるのは、漫画家になってからでいいです(笑) 若い頃から部屋にこもっていると、漫画家になってからネタがなくなって困ります。

あとはいろんなことに感動してください。ひねくれた目を持つことも財産ですが、自分が笑ったり泣いたり怒ったり、感動しなければ他人を感動させることはできません。自分の心が動いたことを思い出して漫画にしてみてください。15年くらいかかって、このようなことを後悔まじりに思うようになりましたので、お役に立てば幸いです。