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「旧耐震マンションは買うな」と主張する記事に反論する

こんにちは。東京で高校受験を指導する塾講師、東京高校受験主義(東田高志)です。

こんな記事がバズっています。

こちらのnoteの反響は大きく、旧耐震マンションへのネガティブなイメージが蔓延しています。

築古マンションを愛するコレクターとして、旧耐震マンションに暮らす多数の都民を守るという崇高な使命が私に課せられました。

本記事では、誤った認識への反論を述べると共に、私が購入する旧耐震マンションの選定基準や、避けている物件の特徴について具体的に記します。


■データから読み解く旧耐震マンション

「旧耐震マンションは地震で倒壊の恐れがあり危険」って本当?

直下型地震の阪神淡路大震災の「旧耐震マンション」(1981年以前)と「新耐震マンション」(1981年以後)被害状況を見てみましょう。

https://note.com/sumai_702/n/n818b22a9c925  (「阪神淡路大震災における旧耐震マンションの被害状況をデータで確認してみた」(住まいナレッジ公式)より引用拝借)


見ての通り、実は「新耐震」も「旧耐震」もそんなに差がない。「被害なし」は新耐震が53.1%に対し、旧耐震は50.1%です。

このデータから分かることは、基本的にマンションというのは、旧耐震であれ、新耐震であれ、耐震性に優れ、倒壊リスクは小さいということです。

その中でも倒壊等の「大破」が気になるところです。1971年以前に建てられた8階建て以上の高層建物は、阪神・淡路大震災においてすべて倒壊しているという事実があります(出典:MENSHIN No.6 1997/5)

この1971年は耐震基準を語る上で重要な節目の年です。この年、北海道十勝沖地震を受けて耐震基準が改正され、鉄筋コンクリート造の基準が強化されました。つまり、「旧耐震」(1981年以前)と一括りにせず、1971年以前の「旧旧耐震」を区別し、特に高層マンションについては倒壊リスクが高いことを理解する必要があります。

さらに調査で注目したいのは、「旧耐震」の中でも「壁式構造」を持つマンションです。「壁式構造」とは、建物全体を壁で支える構造で、主に5階以下の建物に採用されています。典型例としては団地が挙げられます。この構造を採用したマンションは、旧耐震基準で建てられていても、阪神・淡路大震災において大きな被害をほとんど受けていません。したがって、「壁式構造」を持つマンションは耐震性において信頼できる選択肢であると言えるでしょう。

■木造の旧耐震はヤバい

「旧耐震の建物は危険だ」と耳にすることが多いですが、実際には建物の構造によってその耐震性は大きく異なります。特に木造建築に限定したデータを見ると、そのリスクの高さが顕著です。

https://note.com/sumai_702/n/n818b22a9c925  (「阪神淡路大震災における旧耐震マンションの被害状況をデータで確認してみた」(住まいナレッジ公式)より引用拝借)


旧耐震基準で建てられた木造建築物は、地震による倒壊リスクが非常に高く、構造的に極めて脆弱であることが明らかになっています。一方で、鉄筋コンクリート(RC)造の建物は、旧耐震であっても構造設計により高い耐震性を備えている場合が少なくありません。

ここで重要なのは、「旧耐震の建物全般が危険」という認識ではなく、「旧耐震の木造建築物に特に耐震性の問題がある」という事実です。記事やデータで「旧耐震」を一括りにして危険性を語る場合、木造とRC造が混同されていることが多く、両者は全く異なる性質を持つ建築物である点に注意が必要です。

■新耐震でも油断できない「ピロティ構造」

都内で複数戸の旧耐震物件を所有する私が絶対に避けるものがあります。1階部分が駐車場などで空洞になっている「ピロティ構造」です。この構造は、建物全体の耐震性に弱点を生じさせます。新耐震基準に適合している建物であっても例外ではありません。

1階部分が駐車場で空洞に。こんなマンション、見たことありますよね?

熊本地震では新耐震基準を満たしていたにもかかわらず、大破したピロティ構造の建物が確認されています。

内閣府の「阪神・淡路大震災教訓情報資料集」には、「全体的にピロティ構造と壁の配置の悪い構造の建築に崩壊したものが多く、これらの中には現行法に適合している建物もあった。」との報告があります。ピロティ構造は、新耐震でもリスクがあります。

旧耐震×ピロティ構造は論外です。耐震補強工事がされていない限り、絶対に買うべきではありません。

熊本地震で1階部分のピロティがつぶれたマンションの写真をご覧ください。

ちなみに、旧耐震×ピロティはあまりにも危険ということで、東京都は「命を守るためのピロティ階等緊急対策事業」で補強工事を助成しています。東京都からその危険性でお墨付きをいただいています。どんだけ危険なんだ。


個人的には、ピロティ構造のマンションに住むぐらいなら、好立地にどっしり構えた旧耐震団地をリノベして住みたい。

■正しい知識を持てば旧耐震マンションは選択肢になる


記事には「旧耐震は住宅ローン減税が利用できない」ことが挙げられていますが、注釈にあるように、旧耐震であっても「耐震基準適合証明書」を取得すれば、住宅ローン減税を受けられます。

木造戸建ての場合、耐震基準適合証明書の取得には耐震補強工事が必要となることが多く、実現可能性が低いのが現実です。一方、マンションでは事情が異なります。特に、5階建て以下のRC造で壁式構造を採用している場合、耐震補強工事を実施せずとも基準を満たすケースがあり、取得のハードルは比較的低くなります。

「旧耐震は売却が難しい」という意見も耳にしますが、実際には立地や管理状態が大きな鍵を握ります。首都圏の好立地で、管理状態が良好な物件であれば、旧耐震であっても買い手はいくらでも見つかります。住宅ローンも普通に通っています。

私自身が所有する旧耐震マンション(1980年前後)の多くは、いずれも管理状態が極めて良好です。やはりマンションの価値を支えるのは「管理」と言えます。「旧耐震」というだけで物件を問答無用で避けるのは、非常にもったいない選択肢の狭め方ではないでしょうか。

今の市場では、「立地」と「築浅」の両方を兼ね備えた物件を選ぶのはほぼ不可能です。選択を迫られた際には、「立地」を優先し、旧耐震を含む「築古」も候補に入れる柔軟な視点を持つことが大切です。耐震性や管理状態について正しい知識を持っていれば、築年数を理由に恐れる必要はありません。

あと数十年もすれば、新築マンションの供給は大幅に減少し、築70年、築80年のマンションが一般的になる時代が訪れるでしょう。建て替えは進まないでしょうから、「築古」が普通の選択肢として受け入れられる未来が予想されます。その中で重要なのは、築年数ではなく、物件の状態や管理、構造を正しく評価する視点です。

■忙しい人向けのまとめ

まとめです。忙しい人はここだけ読んで!

・阪神淡路大震災でマンションは「旧耐震」も「新耐震」もそこまで被害に差はなく、マンションの優れた耐震性が証明された。
・1971年以前の「旧旧耐震」は弱い。特に耐震補強工事未実施の高層マンションは倒壊リスク大。やめとけ。死ぬよ。
・5階建以下に多い「壁式構造」のマンションだと「旧耐震」でも非常に強い(だから団地は最強。旧耐震でもめちゃくちゃ強い。好立地の旧耐震団地リノベは一つの正解)
・木造の「旧耐震」は倒壊リスク大。やめとけ。死ぬよ。
・ピロティ構造は新耐震でも倒壊事例あり。新耐震だからといって油断するな。旧耐震×ピロティ構造はやめとけ。死ぬよ。


私もこの分野についてはセミプロです。プロではございません。認識が間違っている点もあるかもしれません。「ここが違うぞ!」というご意見やご批判、大歓迎でございます。


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