築コレ〜オツな若ぇの生け捕ってきやした107 三遊亭好吉
五代目円楽一門会のホームグラウンド、お江戸両国亭で三遊亭好吉さんと待ち合わせ。
ここは最初は違和感しかなかったです。真ん中に大きい柱があることにびっくりして、会場が斜めなことにもびっくりして、椅子がパイプ椅子なことにまたびっくり。でも演ってるうちに愛着が湧いてきて、改修工事があった時は寂しくなりました。結果、柱が以前より太くなったんですけど(笑)。
落語を聴くようになったきっかけは、大学の試験期間中気分転換に図書館で、大学の先輩でもある桂枝雀師匠のビデオを見たら面白くって。そこから全巻見て何単位落としたか…。大学では超電導っていう、リニアモーターカーなんかに使う技術の研究をしていて大学院への進学も決まっていました。何日もかかる実験で、何時間かに一度点がポツンって反応するんですけど、二日目位の夜中にこれをあと2年も続けられないと思ってしまったんです。道を外れるんだったら好きなことだ! って思ったのが、落語家の道です。親には「お前は死んだと思うから」って言われました(笑)。でも今は応援してくれているのでありがたいです。
師匠・好楽に出会うまでに色々な方を聴きました。師匠のお江戸日本橋亭での独演会の高座を観て初めて「この人だ!」と思いました。終演後楽屋の前にいたら、たまたま楽屋に挨拶に来ていた師匠の遠い親戚のおばちゃんに「あなた弟子入り? お〜い、弟子になりたいみたいよ~」って通されたんですよ。師匠のご両親の出身が同郷の熊本ということに縁を感じていただいたのか、ちょうど前座がいない時期でタイミングが良かったのか、「明日自宅においで」って。翌日自宅から近所のお寺に連れられて行き、師匠がすらすらっと書いた紙を、「これお前の名前だから」って渡され、名前をいただいて、それから「小噺と着物のたたみ方教えてやる」って師匠から直接教えていただいたんです。今考えたらありえない話ですね。
前座の頃は毎朝電話してから用事があると師匠宅に行くという流れでした。電話をかける時間は弟子によって10時、10時5分、10分って時間ごとに決まってるんです。最初正座で、だんだんパジャマ、あげくは布団の中から…(笑)。今は僕の下に6人いて用事を頼まれる事もないので、師匠からかかってくる電話は「競馬に行きませんか」って事がほとんど。僕も馬が好きでよく見ているので、師匠が「好吉先生」ってね。競馬場にいる時は師匠だけど兄さんみたいです。
昔教わった噺も現在だから噛み砕ける噺もあると思うので、食わず嫌いをせずにやっていきたいです。僕は同じ噺を何回聴いてもいいなって思うので、「お前のあの噺聴きたくて今日来たよ」って言ってもらえる噺をたくさん持つ噺家になりたいですね。
三遊亭好吉・さんゆうていこうきち
本名=坂野準哉。1986年6月18日生まれ。熊本県益城町出身。高校時代はジョッキーに憧れるも身長制限があり断念。神戸大学理学部物理学科卒業。2009年6月、三遊亭好楽に入門して「好吉」。12年9月二ツ目昇進。既婚。益城町復興大使。出囃子=ポンポコニャ 紋=三ツ組橘 血液型=A