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12月のIPOはどうなる?ここまでの初値騰落率を振り返りました。

皆さん、こんにちは。12月に入り、2021年も残すところわずかとなりました。毎日寒い日が続きますが、IPOについては2021年がリーマン・ショック以降最多の上場社数の見込みとなり、12月の上場社数は驚異の33社など、年末に向けホットなトピックスが続いています。

いよいよ来週から年末恒例のIPOラッシュがスタートしますが、今回はラッシュに先立ち、今年のIPOの初値の現況と今後の見通しについて調べてみました。

今年の初値騰落率は意外と、、、(Twitterクイズ解答)

先日、Twitterにて12月の初値騰落率に関する以下のクイズを投稿しました。

先ずはこちらの解答を含め、11月末までの状況を確認しましょう。以下のグラフをご覧ください。

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11月末時点における今年の上場社数は93社と、既に昨年の年間上場社数に並んでおり、リーマン・ショック以降では最多社数となりました。一方で初値騰落率(初値÷公募価格の増減%)は平均で64.8%と、ここ数年では最も低い数字を記録。今年は上場予定社数がリーマン・ショック以降最多の126社となることで話題を集めていますが、意外と?初値は伸び悩みが続いています。*上場予定社数はTOKYO PRO Market分を除く

ということで、TwitterのIPOクイズの解答は「×(正しくない)」でした!ご回答いただいた皆様、ありがとうございます。

以下の画像は当社データベースより取得した今年の初値騰落率(上昇率)TOP10の銘柄です。10社中7社が上半期6月までに上場した企業、更に10社中9社は7月までの上場であり、今年の下半期のIPOは今一つ元気のない状況が続いています。昨年はTOP10のうち8社が下半期の上場、2019年は同じく5社が下期の上場だったことを考えると、やはり下半期は弱含みが続いていることがわかります。(12月で変わる可能性はあります。)

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過去のIPOと比べてみると、、、?

低調気味の今年のIPOですが、社数が増えたことで1社あたりに流れてくる資金も分散化され、自然と初値にも影響が出るのでは?あるいは1件あたりのIPOサイズが大型化している可能性も?という仮定をもとに、IPOの規模の目安となる資金吸収額と初値騰落率平均で並べてみたのが以下のグラフです。(資金吸収額=オーバーアロットメントを含む公開株数×公開価格にて計算)。

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2021年における11月末までの累計資金吸収額は5,490億円で、1社あたりの吸収額は約59億円。2019年、2020年と比べると1件あたりの資金吸収額はやや大型となっていますが、16年以降全体でみると、そこまで顕著な大型化と言える水準ではないようです。その一方で、初値騰落率は16年以降最低水準となっています。
昨今IPOの初値が高すぎることを一因として、公開価格設定プロセスの見直しが叫ばれていますが、初値が急騰した昨年と比べると、見直しが必要なほどの初値の高騰(いわゆるIPO Pop)が今年も発生していたのかと問われると、判断の難しい状況が続いています。

*2018年はソフトバンク社の吸収額約2.6兆円に及ぶ巨大案件が含まれています。同社分を抜いた場合の吸収額平均は54.3億円です。

どうなる?2021年12月のIPO

さて、ここまで勢い弱めの今年のIPOですが、始まったばかりの今月のIPOはどうなるでしょうか?例年の12月のIPOの傾向をみておこうと思います。以下の図は2016年以降における、1~12月の各月での上場社数および初値騰落率の平均です。

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これをみると、12月の平均上場社数は約20社。IPOは毎年3月と12月に大きなラッシュとなる傾向がありますが、12月はその中でも特に社数が多くなり、毎年最多上場の月となることも多々あります。今年も12月の上場は33社の予定と、年内最多の月となります。

一方で12月の平均初値騰落率は82.4%。平均上場社数が同程度である3月の平均値65.1%よりは高い値ですが、全ての月における平均値93.5%(グラフ内の緑点線)にはやや及ばない水準です。社数が多くなるほど平均の高低も和らぐので、恐らく今年についても12月での急激な高騰というのは難しいものと思われます。

*本平均は単純平均であるため、上場社数の少ない月(1月等)は初値騰落率平均の高低がつきやすい点にご注意ください。

最後に、今年のIPOの初値騰落率を時系列でプロットした以下の図をご覧ください。

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年後半にかけ、明らかに初値が下落基調になっているのが分かりますね。ただし、直近ではサイエンスアーツ社など、従来から初値の高騰しやすい超小型銘柄において、初値が急騰する銘柄も出てきています。33社が上場するハードスケジュールですが、例年どおり年末の高騰をみせてくれる銘柄も出てきてほしいところです。

初値が低いということは、、、?

以上からすると、この12月のIPOでよほどの高騰が無い限り、今年のIPOの初値は低調なままで終了しそうです。しかし、初値が低いということは、上場後のセカンダリーとして参戦する敷居が低くなるということでもあります。初値ではなく上場後の企業価値に目が行く方が、市場としてはある種健全ですし、初値に注目されている方は、その先も見据えた新たなIPOの可能性をご検討頂いてもよいかと思います。そのあたりの記事もおって掲載していきますので、ご期待ください!

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