ササっと復習!2022年第1四半期IPOレポート

はじめに

早いもので2022年がスタートして3ヶ月が過ぎました。新型コロナウイルスの影響がようやく落ち着いてきたかと思えば、米国の金利上昇や円安進行、果てはロシアによるウクライナ侵攻と、年初から混迷を極めた相場環境。
日経平均は1月4日の終値29,301.79円から3月31日の終値27,821.43円まで下落。IPOの勢いとも強くかかわるマザーズ指数については、1月4日の976.74から3月31日の790.30と、大きな下落となりました。

IPOもマクロの下落基調にはあらがえず、この第1四半期は低調が続きました。読了までおよそ6~8分ほど。早速データで見ていきましょう!

【2022年第1四半期のIPO ハイライト】

・IPO社数は15社、この5年で最少社数
・初値騰落率は平均+29.2%と、同じく2020年のコロナ・ショック時に次ぐ最低水準
・1社あたりの平均資金吸収額は17.4億円、小型IPOがひしめく
・承認取消しは6社、同四半期ではこの10年で最多

上場社数-1Qでは5年で最少

1Qの上場社数と初値騰落率。折れ線が初値騰落率です。

本第1四半期(2022年1月~3月を指す。以降1Q。)の上場社数は全15社となりました(上図の棒グラフ)。承認取消しが続いたことも加わり、1Qとしては、この5年で過去最少の社数です。
1Qの平均初値騰落率(黄折れ線)は+29.24%。これはいわゆるコロナ・ショックが起きた2020年の1Qに次ぐ低さで、この10年でみてもワースト2の水準となりました。

ご参考までに、直近3年での四半期別推移も並べてみました(下図)。

↑2020年は2Qにフィーチャ、3Qにヘッドウォータース等、初値高騰銘柄が連続しました。

1Qの初値騰落率は、12月に公募割れが頻出した2020年第4四半期の初値騰落率平均+30.77%とほぼ同水準。コロナ・ショックでIPOが急落したのが一昨年2020年の1Qで初値騰落率は+15.06%。直後の2020年第2四半期には+280.02%まで初値騰落率が急騰しピークを迎えましたが、その後は徐々にスローダウンしており、現状IPOの勢いはかなり弱いものとなっています。

資金吸収額-この10年で最少水準

次に規模感の比較として、資金吸収額を見てみます。下図をご覧ください。

*資金吸収額は(公募株数+売出株数+オーバーアロットメント株数)×公募価格にて計算

当1Qの資金吸収額(グラフ内の青棒グラフ)は合計261.9億円と、この10年で最小となりました。1社あたりの平均吸収額(同グラフの黄棒グラフ)は17.4億円、こちらは2015年に次いでこの10年で2番目の小ささとなりました。この1Qは吸収額が100億円を超えるようなIPOも無く、小粒なIPOが続きました。IPOでは基本的に、資金吸収額が小さいIPOほど初値が高騰しやすい傾向にありますが、当1Qは小粒なIPOが多く、かつ件数も少なかった割に初値騰落率は低い。この点からみると、この規模のIPOさえ、市場は支えることが出来なかったとも言えそうです。
関係性を見るために、試しに資金吸収額と初値騰落率を合わせたグラフをみると下図のとおり。

規模感が近しい2015、2016、2019年と比較すると、違いが分かりやすいかと思います。

決して規模が大きくないIPOでも支えきれなかった現状がよく分かります。もはや規模感だけみると、2020年のコロナ・ショックの衝撃をも超えているような、、、

市場別の上場社数-旧市場最後の四半期

ここからは細かいデータです。まず業種別の上場社数は下図のとおり。今年4月4日からの市場再編前、旧市場最後の期間となったこの1Q。全15社中10社がマザーズへの上場(約66.7%)と、マザーズが大半の傾向は変わらずでした。

業種別の上場社数-ややサービス業多めもトレンドどおり

次に業種別の上場社数は下図のとおり。全15社中、最多はサービス業の6社、ついで情報・通信業の4社となりました。この2業種が大半を占める傾向は例年どおり。やや、サービス業が多かった四半期でした。

主幹事別の上場社数-みずほ証券が引受数首位

主幹事別の上場社数は下図のとおりです。

トップはみずほ証券の5社、次いでSMBC日興証券が3社でした。野村證券は毎年コンスタントに5社前後を引き受けていましたが、この1Qは1社のみ。第2四半期以降に候補が控えているのでしょうか?
なお、いちよし証券社ですが、本年2022年12月末を目途に引受業務を取りやめるとのIRリリースが出ています(リリースのリンクは>>こちら)。2021年の主幹事数は4社と、もとより引受数が多いわけではありませんでしたが、来年以降同社のIPOの取扱いは無くなります。

取消し社数-1Qの取消しは6社と記録的

急激な市況の悪化に伴い、当1Qは承認取消しも相次ぎました。その数は実に6社。1Q単体だけでみると、この10年で最多の取消し社数となります。取消し理由の多くは株式市場の動向やウクライナ情勢等を総合的に勘案して、というもの。2020年のコロナ・ショック時の様に、年内でのリベンジに期待です。
以下のグラフは過去10年の承認取消し社数を四半期ごとに積み上げたグラフです。

↑コロナ・ショックの2020年の異常さが目立ちますが、
1Q(赤棒グラフ)単体では今年の方が取消し社数が多くなっています。

ご参考までに、承認を取消した企業の一覧も以下に載せておきます。超大型の住信SBIネット銀行をはじめ、大型IPOの取消しも目立ちました。ここから何社がリベンジを果たしてくれるでしょうか?

資金吸収額ではAnyMind Group社が100億円弱、住信SBIネット銀行社が同1000億円超、ビッグツリーテクノロジー社が200億円前後の大型IPOとなる予定でした。

2022年第1四半期 IPOランキング

ここからは当社データベースに基づき、当1QのIPOランキングをご紹介します。

上場時(初値時)時価総額ランキング

まずは初値時の時価総額ランキング。トップは3/2上場のビーウィズ社。1Qで唯一の東証1部上場IPOだったため、規模が大きくなるのは当然ですね。2位の守谷輸送機工業、3位のノバックはともに東証2部。従来は初値の跳ね上がったマザーズ銘柄がランクインすることも多いこのランキング。1Qは平均初値騰落率が低かったため、公募価格での時価総額の大小がほぼそのまま結果に反映されたイメージです。

初値騰落率ランキング

続いて初値騰落率ランキング。トップは2/24上場のBeeX社。人気のクラウド系システムインテグレーション、資金吸収額10億以下と、初値が高騰しやすい条件を多くそろえていました。驚くべきことに、この1Qでは、上場初日に初値がつかず2日目に突入した銘柄がゼロでした。サイズからすれば初値が高騰してもおかしくない大きさの銘柄も多かった中、2日目突入銘柄がゼロという現状は、IPOの勢いの無さをよく物語っているかと思います。

資金吸収額ランキング

各IPOの規模感を掴む資金吸収額ランキング。トップはビーウィズ社。上述のとおり、この1Qは初値が高騰しなかったこともあり、初値時価総額ランキングと似たような結果となりました。上位3社は初値時価総額ランキングと同一の3社です。

終わりに

以上、簡単ですが2022年第1四半期のIPOレポートでした。マクロ環境の変化もあり、記録的な低水準となった当四半期。初値こそ芳しくありませんでしたが、今後市場が回復してくると仮定するならば、セカンダリー(上場後)から参戦される方々にとっては、長期的には絶好のエントリー機会だったともいえるのかもしれません。

さて、既にIPO市場も第2四半期に突入しています。4月からは心機一転、新市場がスタート。既にグロース市場に上場した直近2社は初値持越しで2日目突入と、ここまでの低迷を払しょくするかのような勢いを見せてくれています。思い返せば、コロナ・ショックで未曾有の大低迷となった2020年の第1四半期の後、IPOはその年の第2四半期から劇的な急回復を見せてくれました。世界状況か混沌とする中、この先の情勢は誰にもわかりません。初値が騰がるもよし、騰がらなくともセカンダリーの参戦機会としてはそれもよし、という心構えで戦況を見守りたいと思います!

おまけ-おさらいクイズ!

最後までご覧いただきありがとうございました!
ここまでの内容をクイズにしてみましたので、復習として以下よりチャレンジしてみてください!満点が出れば、IPOマスター間違いなしです!

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本レポートについての注意事項

本レポートは投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、特定の商品や銘柄への投資勧誘を目的とするものではございません。
本レポートにおける各種数値・データは当社のIPOデータベース「IPOストラテジー」を用いて集計しております。データ及び記事の内容、正確さには細心の注意を払い、万全を期しておりますが、情報の正確性、確実性・妥当性及び公正性を保証するものではございません。

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