カバー社IPOについて一言だけ
今週から春のIPOがスタートしましたね。
今週の主なIPOニュースは以下のとおりです。最大のトピックは楽天銀行の承認だったでしょうか。
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今週は4社が上場。規模感から初値が穏当な銘柄もありましたが、本日はSHINKO、ハルメクホールディングス、アイビスがストップ高と、話題が増えるにつれIPOにも注目が集まったか、よい流れで週末を迎えられたようです。
こうなるとVTuber企業として話題性のある週明けのカバーの上場にも期待がかかりそうなところです。
業態の分かりやすさも手伝い、カバー社は同業のANYCOLORと比較されるでしょうし、昨年のANYCOLORの初値の高騰をイメージされている方も多いかもしれません。今回はIPOのサイズに着目して、ひとつだけ留意点と言いますか、考え方をお伝えしておこうと思います。
業績や成長性は全く置いておいて、IPOのサイズ感のイメージに役立つ用語に「資金吸収額」というものがあります。一般的には「公開価格*(公募価格ともいう)×公開株数」で求められます。公開株数は、公募株数、売出し株数、オーバーアロットメントによる売出し株数の3つの合計です。ここから求めた場合、ANYCOLORの資金吸収額が約27億円だったのに対し、カバーの資金吸収額は約107億円となります。カバーの吸収額はANYCOLORの実に4倍弱です。
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少し粗い考え方ですが、資金吸収額を「そのIPOの初値が公募価格と同じ価格になるために必要な資金の総額」と捉えてみます。
「A社の初値が公開価格と同じ初値(=初値騰落率±.0.0%)となるために必要な金額=資金吸収額」、といった捉え方です。
これを今回に当てはめると、「カバーの初値が公開価格と同じ750円(=初値騰落率±.0.0%)となるために必要な金額=資金吸収額=107億円」、となります。同じ考え方でANYCOLORではこの金額が27億円となります。
公開価格と初値がイコールということは、公募割れも回避できたということですから、これを更に言い換えると、「ANYCOLORは27億円の資金が流入すれば公募割れ回避(=初値騰落率±0.0%)となる一方、カバーは公募割れ回避に107億円が必要」、となります。
当然、公募割れ回避より高い初値騰落率を狙うには更なる資金の流入が必要となります。
ANYCOLORの初値騰落率は+214.38%、つまり公開価格の3.14倍という高さでした。上記の理屈で考えると、ANYCOLORがこの初値に到達するには資金吸収額27億円×3.14倍で84億円の資金で足りましたが、カバーが同じ様な初値騰落率まで高騰するには、資金吸収額107億円×3.14倍で、335億円が必要ということになります。
IPOのサイズという面に限って言えば、基本的にカバーはANYCOLORより相当に重たい規模だということ、ご認識いただければと思います。
もちろん蓋を開けるまで結果は分かりませんし、こうした需給の面が企業の価値や将来性につながるということでは全くもってありません。また、海外投資家への募集も行っていることから、見かけより吸収額の規模は多少小さくなるかと思われます。
そうだとしても、そもそものIPOの規模に違いがあるのだ、ということを踏まえていただけると、初動の見方も少し変わってくるものと思います。
もし、それでもANYCOLORの初値に肉薄するようなことがあれば、個社云々というよりも、VTuberという業界や、春のIPOも底力があるのだな、といった捉え方も一考かと思われます。
以上、長くなってしまいました。そんなこと百も承知だよ、という方も多いかもしれませんが、少しでもご参考になりましたら幸いです。
皆様のご健闘を祈っております!
注)今回の資金吸収額は公開価格を基準としていますが、価格の部分については、想定価格や仮条件など、都度都度の最新の価格が多く用いられます。