どうなる?3月のIPO
皆さんこんにちは。早いもので今日から3月ですね。先週末頃からすっかり暖かくなりましたが、マーケットについては国際情勢の緊迫や米国の金利上昇への懸念もあり、グロース系銘柄を中心に調整が続いているようです。成長性が注目されやすいIPO市場も調整の波は避けられず、まだまだ春の訪れは遠そうなIPO市場ですが、折角なので3月のIPOをまとめてみました!
2022年 ここまでのIPOの状況
先ずは今年のここまでのIPOの状況から。以下のグラフは2015年以降の2月のIPO成績です。
今年は2月に計7社が上場、初値騰落率の平均は+44.1%となっています。上場社数こそ昨年同様に高水準ですが、初値騰落率が驚くほど低い!例年IPO市場は2月からスタートすることが多く、前年の12月から間隔も空くということで、2月というのは比較的出足の良い月なのですが、今年は記録的な低水準となっています。
昨年12月の初値騰落率も+31.1%と記録的な低さでしたが、12月の流れのまま、ここまで推移して来ているようです。マーケットがこの状況では致し方なし、というところでしょうか。
そして今年は既に3社が承認取り消しとなり、早くも昨年の年間取消し数の5社に迫りつつあります。特に売出し元にファンドなどが多いIPO等では、売出し益の関係もあり、機を見計らっての延期が出ているようです。
3月のIPOの特色は?
ここで毎年の3月のIPOの傾向についてみておきましょう。
以下のグラフは2015年から2021年までのIPOについて、各月ごとでの累計上場社数と月間の平均初値騰落率をまとめたものです。
お分かりのとおり、3月は6年間の累計で125社が上場と、12月に次いでIPOの件数が多くなる月です。ただし、初値騰落率については+66.0%と、12ヶ月の中でも比較的低水準の初値がつきやすい月となっています。これは上場社数が多いほど資金が分散してしまうために初値も高くなりにくい、という12月と共通した原因があるように思います。(2020年3月についてはコロナ・ショックの影響により極端に初値騰落率が低くなったため、平均値に影響を及ぼしています。2020年を除いた場合の同月の初値騰落率平均は+79.8%です。)
先のとおり、2月はほとんどの年でIPOの開幕月となるため話題性も高く、初値も高くなりやすい傾向にありますが、今年はその2月が先のとおりの結果でしたので、、、国際情勢が緊迫を極める現状、初値に限って言えば、3月のIPOに高い期待はできないかもしれません。
3月のIPOの顔触れは?
さて、そんな向かい風の3月IPOですが、今年は以下の11社が上場予定です。
なんといっても注目は3/24上場予定の住信SBIネット銀行。SBIホールディングスと三井住友信託銀行が50%ずつを保有する同社の資金吸収額は約1300億円超。現状の想定価格水準で公募価格まで推移すれば、この5年ではソフトバンクに次ぐ規模となるほどの超大型IPOです。
その他、パソナグループ子会社のビーウィズや、AnyMind Group社等、資金吸収額100億円前後の案件も重なり、この3月の資金吸収額合計は実に1,690億円!この金額は2017年の3月に次ぐ大きさであり、2019年の年間合計吸収額の約半分にあたる金額です。
果たしてこの3月、IPO市場へ1690億円もの資金が入ってくるのか、ということになるわけですが、現在のマーケット環境でこの巨額を支えるのは流石に厳しい面がありそうです。
3月のIPO企業:ワンポイントチェック
最後に、3月上場予定の11社について、簡単なサマリーを載せておきます。初値が厳しい結果になるかもしれないといっても、長期目線でみた場合は結果的にチャンスだった、ということもあるかもしれません。是非面白そうな銘柄を探してみてください。皆さんのご武運を祈っております!
1)ビーウィズ
上場日:3/2 市場:東証1部 業種:サービス業
想定価格:1,920円 想定価格での実績PER:14.85倍
直近年度末の売上高:288億円/同経常利益:21億円
想定価格での時価総額:約263億円 同価格での資金吸収額:約117億円
・・・パソナグループの子会社。クラウドを活用したカスタマーサポート業務やBPO事業を手掛けます。今年初の東証1部上場となる大型IPO。売上高の約20%弱が東京電力グループの企業です。
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2)イメージ・マジック
上場日:3/3 市場:東証マザーズ 業種:その他製品
想定価格:1,840円 想定価格での実績PER:16.83倍
想定価格での時価総額:約39億円 同価格での資金吸収額:約10億円
直近年度末の売上高:43億円/同経常利益:2.2億円
・・・アパレルや雑貨業界を中心としたオンデマンドプリントサービスを手掛ける企業の小~中型IPO。直近売上高の25%弱がGMOペパボ社です。
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3)セレコーポレーション
上場日:3/11 市場:東証2部 業種:建設業
想定価格:2,100円 想定価格での実績PER:11.89倍
想定価格での時価総額:約72億円 同価格での資金吸収額:約11億円
直近年度末の売上高: 170億円/同経常利益11億円
・・・設計から施工管理まで、アパート経営に関するトータルソリューションを展開する企業のやや小型IPO。今年初の東証2部IPOです。
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4)守谷輸送機工業
上場日:3/17 市場:東証2部 業種:機械
想定価格:770円 想定価格での実績PER:10.24倍
想定価格での時価総額:約133億円 同価格での資金吸収額:約37億円
直近年度末の売上高: 135億円/同経常利益17億円
・・・神奈川県のエレベーターメーカーによる中型IPO。エレベーターの中でも荷物用や船舶用途を中心としています。直近年度末の保守売上比率は43%ほど。ROEは27.5%。配当実績もありです。
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5)Repertoire Genesis
上場日:3/18 市場:東証マザーズ 業種:サービス
想定価格:1,640円 想定価格での実績PER:150.74倍
想定価格での時価総額:約66億円 同価格での資金吸収額:約31億円
直近年度末の売上高: 4億円/同経常利益0.1億円
・・・大阪は彩都から、免疫系を中心とした医療開発等を手掛けるバイオベンチャーによる中型IPO。筆頭株主&主要売出し先は東大ファンド(UTEC)です。
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6)TORICO
上場日:3/23 市場:東証マザーズ 業種:小売業
想定価格:1,830円 想定価格での実績PER:N.A
想定価格での時価総額:約22億円 同価格での資金吸収額:約3億円
直近年度末の売上高: 49億円/同経常利益2.7億円
・・・漫画全巻セット売りの「漫画全巻ドットコム」等を手掛ける企業の超小型IPO。
アマゾンや楽天、ヤフーを経由した販売も大きいようで、3社への販売高が半数を占めます。
3月の最小サイズIPO。翌日の超大型IPOである住信SBIネット銀行を前に、かえって資金が集中するパターンもありうるか?
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7)住信SBIネット銀行 *3/7上場延期決定
*3月7日、住信SBIネット銀行の上場延期が決定しました。以下のデータはご参考までとなりますこと、ご留意ください。
上場日:3/24 市場:東証1部 業種:銀行業
想定価格:1,920円 想定価格での実績PER:20.79倍
想定価格での時価総額:約2,999億円 同価格での資金吸収額:約1,328億円
直近年度末の売上高: 787億円/同経常利益207億円
・・・ご存じSBIグループのネットバンク大手による超大型IPO。時価総額は約3000億円、吸収額1328億円、3月の目玉IPOです。大型IPOということで、海外募集(グローバル・オファリング)も実施予定です。
8)メンタルヘルステクノロジーズ
上場日:3/28 市場:東証マザーズ 業種:サービス業
想定価格:630円 想定価格での実績PER:N.A
想定価格での時価総額:約60億円 同価格での資金吸収額:約9億円
直近年度末の売上高: 9.4億円/同経常利益-1.4億円
・・・産業医としての役務や同クラウドサービスを手掛ける企業の小型IPO。
売上高は+40%以上成長、この3Qで既に前期の売上超過&黒字化。想定価格1000円以下の低価格の一方、VC比率も30%ほどと高めです。
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9)ギックス
上場日:3/30 市場:東証マザーズ 業種:サービス業
想定価格:1,070円 想定価格での実績PER:83.20倍
想定価格での時価総額:約58億円 同価格での資金吸収額:約12億円
直近年度末の売上高: 7億円/同経常利益0.5億円
・・・データに基づくコンサルティングやプロダクトを提供する企業の中型IPO。
JR西日本(資本提携中)や、アサヒグループ等が主要顧客です。単にデータドリブンでなく、「データインフォームド」という言葉を使われている点にパッションを感じます。
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10)AnyMind Group
上場日:3/30 市場:東証マザーズ 業種:情報・通信業
想定価格:1,150円 想定価格での実績PER:N.A
想定価格での時価総額:約637億円 同価格での資金吸収額:約99億円
直近年度末の売上高: 110億円/同経常利益-10億円
・・・ECやD2C業界のバリューチェーンをワンストップで支援する企業の大型IPO。
日本への売上高は約45%、海外子会社は20社超のグローバル企業です。
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11)ノバック
上場日:3/31 市場:東証2部 業種:建設業
想定価格:3,260円 想定価格での実績PER:8.75倍
想定価格での時価総額:約167億円 同価格での資金吸収額:約29億円
直近年度末の売上高: 305億円/同経常利益25億円
・・・ダムや道路等、社会インフラを中心とした土木工事を手掛ける企業の中型IPO。発注元は国交省などの官公庁等。市場再編前の最後のIPOとなります。
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おまけ
最後までご覧頂きありがとうございます。おまけのデータとして、現在の初値騰落率ランキングを載せておきます。
トップはBeeXの+134.37%ですが、いまだ2日目に突入した銘柄はありません。この3月で2日目突入の銘柄が出てくるでしょうか?