名前は伏せますが、南米で一二を争う治安の悪い場所に居た頃のお話。
バス乗り場の裏が、巨大なスラムで、絶対に近づいてはいけないと宿のオーナーに言われていた。
人々は、大人であっても裸に近くて、無分別の黒いゴミ袋と共に暮らしている。泥棒市のビニールシートには何でも並ぶ。そんな場所。
空港へ行くバスはそこを経由する。
一人で見晴らしの良い席に座って、見渡すとわかる、服を着てカモフラージュしていても稼業の違う人。
目線、姿勢、挙動、どれをもってしてもそう。
その人が、私の目の前に近付き、持ち場を定めた。
全身の細胞が震え、肌がそば立つのがわかる、身体の変化が極限まで神経を鋭くする。
ヨーロッパで、目の前で人が痙攣して死んだ時
フーリガンや過激派のデモが道を占領した時
ファイトクラブを遠くから眺めた時
薬で生と死の境界線に居る人間を見た時
ネオナチの集団と擦れ違った時
マフィアと思しき車の前に下着姿で客を取らされている娼婦
日本人の女を幾らで売り飛ばせるか値踏みする濁った目
もう助からないと思しき病が肌を蝕んでいる人
これから死に行く人の死んだ目
そういったものを媒介に、神経が限界まで鋭くなった時に、
まだ生きてる、と思う。
兵役を終えて帰って来た友人の鋭い目もそう。
出発前、ある方から「この世で一番怖いのは人間なんだよ」と餞別の言葉を頂いた。
別の方からは「開き直った人間ほど、たちの悪いものはない」とも。
日本ではできない、生の実感を知ってしまったから、また旅に出るのかも知れない。
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