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授賞式レポート | 11/26(日) | 第24回東京フィルメックス

第24回東京フィルメックスの授賞式が最終日の11月26日(日)、有楽町朝日ホールで開かれ、同時開催のタレンツ・トーキョーの企画賞や上映作対象の各賞が発表が発表された。

11月25日(土)までに上映された全作品の中から来場者の投票で選ぶ観客賞は、コンペティション部門の『冬眠さえできれば』(ゾルジャルガル・プレブダシ監督)に決まった。出産のため来日できなかったプレブダシ監督はモンゴルからビデオメッセージで参加。「たくさんの人の愛と支援の気持ち、たくさんの努力で作られた映画です。恵まれない環境で生活する子どもたちの声を映画で叫びたい、彼らにいい機会を与え笑顔にしたい、モンゴルや同じような環境下の子供たちにいろんな良い影響を与えられる社会を作りたいという人々の願いがこもった映画が、こうしてみなさんの心まで届いたことを本当にうれしく思っています」と日本語で語りかけた。

『冬眠さえできれば』ゾルジャルガル・プレブダシ監督からのビデオメッセージ

コンペティション部門の8作品を対象に、東京学生映画祭選出の学生審査員3人(中山響一さん、大権早耶佳さん、藤崎諄さん)が合議で選んだ学生審査員賞は『ミマン』(キム・テヤン監督)が獲得した。

3名の学生審査員

キム監督は「観客の皆さんにお会いするといつもワクワクします。知らない方ばかりなのになぜか親しさを感じます」と切り出し、「光栄な場所に立たせていただいたので、私の映画仲間を皆様に紹介させて下さい」。客席で見守っていたスタッフや出演者が立ち上がると来場者から大きな拍手が沸いた。「映画学校時代に恩師に言われました。『映画はたくさん沢山の人が関わって作る。公開されれば観客もその一員になる。それは本当にロマンチックで大切なことだから、申し訳ない気持ちではなく感謝の気持ちで撮りなさい』と。これからも映画を撮り続けられるよう頑張ります。ありがとうございました」

『ミマン』キム・テヤン監督

続いて国際審査員の中国のワン・ビン監督、台湾の映画プログラマー・プロデューサーのクオ・ミンジュンさん、タイのアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督が登壇し、2つの賞を発表した。

国際審査員のアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督

審査員特別賞は観客賞とのW受賞となった『冬眠さえできれば』と、『クリティカル・ゾーン』(アリ・アフマザデ監督)の2作品に贈られた。

『冬眠さえできれば』のプレブダシ監督は再びビデオメッセージで笑顔を見せ、「東京フィルメックスは私にとってスペシャルな存在。2017年にタレンツ・トーキョーに参加して賞をいただいたことが大きな励みになり、その時もらった勇気と自信でこの作品を作り終えることができました。一緒に作ったフランス人プロデューサーのフレデリック・コルヴェさんともタレンツで初めて出会いました。なので、今回の授賞は何よりもうれしいです」

『冬眠さえできれば』バトヒシク・セデアユシジャブさん、ガンチメグ・サンダグドルさん

共同プロデューサーのバトヒシク・セデアユシジャブさん、母親を演じたガンチメグ・サンダグドルさんも再び登壇し、「モンゴルの子どもたちがいい教育を受けられるように、大気汚染が無くなるようにという願いを込めた作品です。そのメッセージが世界に伝わり、願いが実現することを祈っています」と力を込めた。

『クリティカル・ゾーン』アリ・アフマザデ監督からのビデオメッセージ

イランから出国できず不参加となったアフマザデ監督もビデオでメッセージを寄せた。「インディペンデント映画やアンダーグラウンド映画に注目して下さったこと、とりわけ『クリティカル・ゾーン』のような作品を認めて下さったことに感謝します。本当にうれしい。いつか皆さんと直接お会いできるのを楽しみにしています」と語った。

国際審査員のクオ・ミンジュンさん

最優秀作品賞はベトナムのファム・ティエン・アン監督の『黄色い繭の殻の中』が受賞した。「映画における永遠の探求を、野心的かつ愛おしげに描いている」との講評を受けてスピーチに立ったファム監督は、審査員や観客、映画祭スタッフやボランティア、スポンサーへの謝辞を重ね、「いただいた賞と共にこの映画がさらに遠くまで歩けるように、世界の多くの観客の皆さんに届けることができるようにと強く期待しています。正直にお話すると、本作は多くの方のご支援無しには実現しませんでした。製作チームに感謝します。今回はプロではない役者さんたちにもすごく頑張っていただきました。受賞をたいへん誇りに思うとともに、この賞を彼らに捧げたい。本当にありがとうございました」と喜びをかみしめた。

『黄色い繭の殻の中』ファム・ティエン・アン監督

締めくくりの挨拶に立った審査委員長のワン・ビン監督は、意外なことに今回がフィルメックス初参加。「やっと参加がかなったフィルメックスで、素晴らしい審査員仲間と仕事ができました。審査を通して、アジアの各地で若く力のある監督たちが作品を作っているのを感じました。賞は三つしか出せませんでしたが、他の作品も本当に素晴らしかったです。以前は限られた地域の映画しか見られなかったけれど、長年映画が不在だった国でも作品が撮られるようになった。アジアの異なる国、異なる言語で素晴らしい作品が次々登場していることは、最近の大きな特徴だと思います」と話し、新たな時代の到来を歓迎した。

国際審査員のワン・ビン監督

上映作の受賞発表に先立ち、映画祭会期中の11月20〜25日に実施したアジアの映画人材育成プログラム「タレンツ・トーキョー」の企画コンペティションの受賞結果も発表された。今年は東アジアと東南アジアの各地から17人の新進監督やプロデューサーが参加。今年の黒澤明賞を受賞したモーリー・スリヤ監督らワールドシネマの第一線で活躍するプロフェッショナルから直接指導を受け、最終日の企画プレゼンテーションに挑んだ。

『Mangoes are Tasty There』サイ・ナー・カムさん

プレゼンテーションをもとに講師陣が最優秀企画を選ぶタレンツ・トーキョー・アワードは、ミャンマーのサイ・ナー・カム さんの 『Mangoes are Tasty There』が受賞。シンガポールのアンジェリーナ・マリリン・ボクさんの 『Free Admission』と中国のオーツ・インチャオさんの 『Water Has Another Dream』が選外佳作のスペシャル・メンションに選ばれた。

文・深津純子
写真・明田川志保、吉田留美

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