2023年夏のテレビドラマで注目したいZ世代の若手女優たち(後編)
シリーズ3回目となった今回は、福原遥と深田恭子がW主演する『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系・7月11日スタート)に出演する出口夏希、『癒やしのお隣さんには秘密がある』(日テレ系・7月7日深夜スタート)に出演する矢吹奈子、『カメラ、はじめてもいいですか?』(BS松竹東急・放送中)に出演する中村守里を中心に紹介したい。
出口夏希(『18/40~ふたりなら夢も恋も~』)
日本コカ・コーラ「爽健美茶」のCMに出演中の出口夏希。『18/40』では福原遥が演じる仲川有栖の高校の同級生・西村世奈役を演じる。
中国生まれの出口夏希は、現在21歳。オリエンタルな魅力を秘め、新鮮な果実のように美しい彼女は、「ミスセブンティーン2018」に選ばれ、2022年夏までは『Seventeen』専属モデル、2022年12月号から『non-no』専属として活躍して、同世代女性から高い支持を集めている。日テレがZ世代をターゲットに展開している”Zドラマ”枠の第2弾『ばかやろうのキス』のヒロインに起用されたほか、今年1月には実写ドラマ版『舞妓さんちのまかないさん』(Netflix)で、今夏のフジ系月9ドラマ『真夏のシンデレラ』で主演する森七菜とともにW主演した。
出口夏希は、夏が似合う女優だ。夏ドラマでの活躍も多く、入院患者役でゲスト出演して西野七瀬主演のスピンオフドラマでも好演した『アンサングシンデレラ』(フジ系)が放送されたのは3年前の夏だったし、ヒロインを演じた『ばかやろうのキス』も昨年夏に放送された。名前に「夏」の文字が入っているからというわけではないけど、夏の爽やかさと、懐かしさと、温もりと、はかなさが、彼女の演技から伝わってくる。
Z世代向けドラマのヒロイン、配信ドラマ主演を経験して同世代に女優としてアピールした彼女が、2023年の夏はさらに、主演女優としての未来につながる”夏への扉”を開けて、次のステップに進もうとしている。9月には、WOWOWでオンエアされるドラマ『アオハライド Season1』で櫻井海音とW主演する。少し先になるがこちらにも、期待したい。
☆この原稿を書きながら聞いていたBGM/クリスチャン・フェネス『エンドレス・サマー』
矢吹奈子(『癒やしのお隣さんには秘密がある』)
田辺桃子が主演する『癒やしのお隣さんには秘密がある』で主人公の後輩で、誰からも好かれる新入社員・田辺真奈美役を演じるのは、HKT48を今年4月に卒業した矢吹奈子。
HKT48時代の彼女には、女優のイメージはあまりなかったかもしれない。だが、もともとは子役出身で、映画『タッチ』に長澤まさみが演じた主人公・浅倉南の幼少期役で出演したこともある。グループ卒業発表のコメントでも、「これからは、女優という夢を追いかけたい」と語った。
初めて矢吹奈子に雑誌の取材でインタビューしたのは、彼女が13歳のころだった。古民家のハウススタジオで、撮影の合間に小道具を使ってあやとりや手品を見せてくれたことを、彼女は今でも覚えているだろうか。
当時の彼女は、同じグループの田中美久(今夏はドラマ『最高の教師』に生徒役で出演)とともに、HKT48の次世代エース候補として、高いアイドル性が注目されていた。しかし、取材の合間に見せた表情の変化や明るい音符を感じさせる存在感には、既に女優としての素質の片鱗を垣間見せていた。
そのときに取材した雑誌(『girls!』Vol.44/双葉社・2015年3月)の文章に「未来に向けて、すてきな女の子への序曲の第1楽章を奏で始めた」と書いた。そして、2023年夏の彼女は、女優として第2楽章を、多幸感に溢れた明るいメロディで、奏でようとしている。
☆BGM/ラヴェル『ピアノ協奏曲 第2楽章』
中村守里(『カメラ、はじめてもいいですか?』)
太田プロダクションは、多くのお笑い芸人、あるいは指原莉乃が所属している事務所というイメージが強いかもしれない。一方では女優セクションの層も厚く、アイドル時代から女優としても活躍していた大島優子、北原里英、横山由依、入山法子、ミュージカルで実績を積んできた生田絵梨花、映画『マカリス』で主演して海外の映画祭でも高く評価された太田唯、今夏は大西流星主演の『紅さすライフ』(日テレ系・7月24日スタート)に出演する森迫永依らの魅力的な若手を擁している。
元ラストアイドルのメンバーで、今年6月に20歳となった中村守里も太田プロダクションに所属する女優のひとり。2018年に映画『書くが、まま』で主演して「MOOSICLAB2018」最優秀女優賞に輝き、2020年公開の映画『アルプススタンドのはじの方』(監督は、今夏のテレ東系連ドラ『なれの果ての僕ら』も手がけている城定秀夫)でも注目を集めた。最近ではNHK大河ドラマ『どうする家康』にも家康の側室の侍女・美代役で出演した。今年9月には青木柚とW主演した映画『まなみ100%』が公開される。
BS松竹東急のオリジナルドラマ『カメラ、はじめていいですか?』は、『ヤマノススメ』などで知られる「しろ」の人気漫画が原作の実写ドラマ。主演は、『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』の日直アシスタントでも活躍している田牧そらで、中村守里は主人公の同級生・毒島リン子を演じる。
彼女は、撮影現場に必ず小説などの本を持っていくという。文章を書くのも好きで、「演技に興味を持ったのも、読書が好きということも影響したんじゃないかなと思います」(日経BPムック『日経エンタテインメント!Z世代女優Special・2023年1月発行)と語っている。知的で、そして、抜群に愛らしい彼女の個性的な存在感が、ドラマや映画の物語の中で、いきいきと動き出す様子が印象的だ。
彼女が出演する『カメラ、はじめてもいいですか?』は、カメラをはじめることで変化していく主人公たちを描いたドラマだが、中村守里にも心のピントを合わせて、その繊細な演技に注目してほしい。すてきな夏の「はじまり」を、感じさせてくれるはずだ。
☆BGM/ムーンライダーズ『カメラ=万年筆』
そのほかにも、夏ドラマに出演する注目の次世代Z世代女優が、たくさんいます。(前・中・後編の本文中に登場した人を除く)
・中田青渚『らんまん』
・蒔田彩珠、髙石あかり『わたしの一番最悪なともだち』
・駒井蓮、中川紅葉『シッコウ!!』
・吉柳咲良『リズム』
・嵐莉菜、菊池日菜子『18/40』
・上村ひなの、平澤宏々路、野口衣織『DIY!!』
・永瀬莉子『この素晴らしき世界』
※放送曜日順