武田玲奈が舞台『激走江戸鴉』で見せる、時代を超えた「ヒロイン性」
2024年10月5日から10月27日まで東京・新橋演舞場で上演されているHiHi Jetsの井上瑞稀と橋本涼のW主演による舞台『激走江戸鴉~チャリンコ傾奇組~』は、元禄時代の江戸に現れた”チャリンコ”という謎の乗り物を乗り回す荒くれ者4人組「江戸鴉」を主人公とする青春活劇。脚本・演出は『HKT48指原莉乃座長公演』『スーパー歌舞伎II ワンピース』なども手がけてきた横内謙介。大河ドラマにちなんだ講談を作ってきたことでも知られる上方講談師・旭堂南海が原案協力を担当している。11月2日~10日には大阪松竹座でも上演される。
この舞台で、ひときわ魅力的な存在感を見せているのが、ヒロインを演じる武田玲奈だ。彼女は、井上瑞稀が演じる同心の手先・数右衛門の姉で、橋本涼が演じている「江戸鴉」のリーダー・弾七とも深い縁がある、お露役で出演している。
武田は2017年に『マジで航海してます。』(MBS・TBS系)で連ドラ初主演して、『おいハンサム!!』(東海・フジ系)や『南くんが恋人?』(テレ朝系)など多くのドラマや映画で活躍してきた。舞台出演は、2022年に東京・グローブ座で上演された『盗聴』のヒロイン役以来となるが、前回よりさらに舞台での演技にも板についてきた感がある。
艶やかな着物姿で舞台上を歩く武田の姿は、荒々しい男性キャスト中心の物語において清涼剤となって、爽やかな印象を与える。しぐさや所作の美しさ、しなやかさが印象的で、モデル出身という経験が活かされている。武田玲奈と時代劇の世界観との親和性の高さを強く感じた。テレビドラマではBS時代劇『鳴門秘帖』(NHK BSプレミアム)で大坂の料理屋の娘を演じたことがあるが、ぜひNHK大河ドラマでもその演技を見たい若手女優だ。
この舞台では、武田玲奈の「ヒロイン性」の高さも再確認した。弾七、数右衛門らとの場面では、セリフのやり取りにピアノの連弾を見ているかのような心地よさがあった。とともに、彼女がそこにいることで、そのシーンの情景をまろやかに、やわらかくする役割を果たしていた。
ここでのヒロインとは、ストーリーの核となる女性登場人物という意味であり、女性一番手という意味のヒロイン役だけでなく、主演も含む。ヒロイン性が高い女優は、物語の展開を引っ張り、ストーリーに色彩を与える力がある。演技の技術を訓練や努力で上げることはできても、このヒロイン性というものは、誰もが一朝一夕に身に付けることができるものではない。
武田玲奈が持つヒロイン性は、現代劇・時代劇、どちらでも強いインパクトを与える、時代を超越した魅力だ。武田玲奈が、演じる役に命を吹き込むことによって、物語が、大きく、動き出す。
※2024年10月8日夜の部のレビュー