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【アート制作の裏側✨】 ~地域端材を活用~対談 with ヒダクマ × Mariya × simo

こんにちは!TokyoDexです。先月、「株式会社飛騨の森でクマは踊る(略称:ヒダクマ)」主催のオンラインイベントに、代表ローゼンが登壇させて頂きました!このイベントでは、岐阜県飛騨の端材を活用して地元ホテル(hotel around TAKAYAMA)のためにアートを制作した取り組みについて振り返りました。(カバー写真 by Yoshitaro Yanagida)

1. 「hotel around TAKAYAMA」プロジェクトとは?

▼「hotel around TAKAYAMAプロジェクト」
ヒダクマとTokyoDexが協力し、hotel around TAKAYAMAのために共同でアート作品を制作しました。このプロジェクトは、外部クリエイターの視点を取り入れ、地域資源の魅力を再定義・再発見を促すことを目的としています。アーティストの柏原晋平、Mariya Suzuki、simoを含めるチームは、作品制作の前にまず飛騨高山を巡り、素材や持続可能性についての理解を深めました。また、作品には本来なら捨てられてしまう端材を再利用しました。このように地域の資源、文化、素材を理解したからこそ、完成した作品にはこの旅で得た気づきや、地域の魅力が反映されています。

▼ 上から柏原晋平、Mariya Suzuki、simoの作品(Photo by Yoshitaro Yanagida)

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このオンラインイベントで、前半ではヒダクマの黒田さん、TokyoDexローゼン、アーティストが各自振り返りを行い、そして後半にはトークセッションを行いました。とても素敵なトークセッションだったため、内容をnoteにまとめさせて頂くことにしました!

2. 「コラボレーションで得た経験」について


黒田(ヒダクマ):後半のトークセッションでは、みんなでざっくばらんに、今回のプロジェクトについて話せたらと思います。

突然ですが、この写真は僕が「とても良い景色だな」と思って撮ったものです(写真1)。2人が、材料にならない端材を目の前にして楽しそうに拾い集めている風景を見て、このプロジェクトはもう上がりだなと思いました(笑)もちろん作品は作りますが、ヒダクマとしてはこのような風景を作ることを大切にしていて、端材でも「人によっては宝物」になるという風景を実際に作れたので、この時点でもう満足でした。

▼ 写真1:simoさんとMariyaさんが端材を拾っている様子

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simo(アーティスト):まだ何にも作っていない時ですね(笑)

Mariya(アーティスト):だから平和なんでしょうね(笑)楽しかったです。端材の宝物が詰まった袋を黒田さんに4、5袋置いて頂いて、simoと取り合いしながら中をぶちまけて見てました。

ローゼン(TokyoDex):端材が宝物になるのは素晴らしいですね。普段は捨てられてしまうようなものを活かして、アートワークを作るのは中々ないと思います。旅の時に、Mariyaが「今回の作品は自分の作品だけではなくて、素材とのコラボレーションだ」と言っていたのが非常に面白いなと思っています。今回の作品は、この旅ならではの作品で、アートとしては輝いていると思います。

Mariya:端材なので使いづらい形をしていたり、木の皮や端くれが付いていたりと独特な形をしていましたが、私たちにとってはそこが大事な所でした。制限があるからこそ想像力が高まり、私たちの想像力に挑戦しているなと感じました。アーティストとして成長させてくれると思いました。

▼ 飛騨の森の資源

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黒田:そうですね、このスライドがまさにそうだと思います(写真2)。左側の作品が、「こういうものが出来るのではないか」という、最初に皆さんに出して頂いたラフ案です。そして右が実際に出来上がったものなのですが、比べて見ると全然違いますね。左から右になるまで、どのようなジャンプがあったのか、詳しく聞きたいです。

▼上から柏原晋平、Mariya Suzuki、Simoの作品(右が飛騨に行く前に作った作品、左が完成品)

無題のプレゼンテーション

simo:はい。一番左下の僕の作品は元々作っていたもので、ホームセンターで見つけた木材に描きました。形が少し変な木はあるのですが、飛騨の蔵出し広葉樹を見た時に、生々しさが強くて「あ、欲しかったやつ〜!」と思いました。木を切り出す技術も黒田さんに惜しみなく使わせて頂いたので、調子に乗ってどんどん頼みました(笑)

黒田: simoさんの線が非常にいい線なので、僕も楽しかったです。

ローゼン:左側の作品は「どのアーティストを選定するというか」という判断のために、過去に木で作った作品を参考として見せたものですね。今回は、現場で色々体験した上で作るという旅だったので、ラフ案は作る必要はないと思いました。事前に色々作ってしまうと、それに束縛されてしまうからだったと思います。このように並べて見ると、今回の旅ならではの作品だなと思います。Mariyaは飛騨の田中さんのアトリエでかんなくずと出会い、simoも今までの作品と全然違うもので面白いですね。晋平さんも田中さんの工房で「これだ!」と、ある木に一目惚れしていました。その思いが、作品にも込められていますね。

▼ 柏原晋平が工房で木を見ている様子

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黒田:そうですね。どうなるか分からない感じが、プロジェクトを作る側からするとどうしようかな、と思う所でもありました。しかし、今回のクライアント(hotel around TAKAYAMA)の日比野さんも、「アートはそういうものですよね」という理解をして下さっていたので、自由に作れました。もちろん、最終的にはいいものを作るという約束でした。僕が普段行っているプロジェクトとは全く違うので、面白かったです。

プロジェクト中でよく覚えていることがあります。Mariyaさんが右下のものを持って来て、「森です」と言って見せてくれましたが、正直全然分からなかったです(笑)。しかし、凄く面白いなと思ったのが、左上のものを「町です」と言って持ってきた時には、一発で「町だ」と分かりました。このように、アートは良い・悪い、分かる・分からないではないという、面白い体験をさせて頂いたなと思いました。「森分からん、町分かる」といった、言葉にならない良さがあると思いました。

▼ Mariyaさんの作品(一番左上の作品が「町」、一番右下の作品が「森」)(Photo by Yoshitaro Yanagida)

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Mariya: そうですね!町はすぐに分かってもらえて「伝わった〜!」と嬉しかったです。これも、広葉樹と針葉樹の違いをヒダクマに教えてもらって作りました。広葉樹は私たちみたいに、自由でどこに行くか分からない人が集まっている感じがするなと思いました。色々な端材を集めて組み立てて、広葉樹の森だと思って作りましたが、あまり伝わらなかったですね(笑)

でもアートってそういうものだと思います。全然違うものに見えて、「素敵!」と思ってくれたらそれはそれでいいなと思います。自分のアートが誰かの感情に訴えかけることがあったら、それがプラスのものだったらいいのかなと思います。

ローゼン:プロジェクトの最後は時間が押していて、とりあえず木を切ったり、小さいものを作ってとMariyaに言われたので、私も作りました。そこで作って見せたら、「私だったらそんなものは作らないな」と言われました(笑)。でもそれは、当然だと思いました。スペースを満たすパーツでなくて、全部Mariyaの旅として自分から生まれてくるものだと思います。なので、私は笑って作るのを辞めました(笑)

Mariya: そんなものとは言ってないです(笑)でも結構やりたそうにしてましたね。良いワークショップができそうですよね。

ローゼン:そうですね。うちでも今廃材ワークショップをやろうとしているので、とてもインスピレーションになりました。

3. 「アートの力」について

黒田:感覚的に分かるものと分からないものがあるのが面白いと思いました。普段取り組むプロジェクトは、言葉で説明をすることが多いですが、言葉が必要じゃない時もあるんだなと思いました。ロジックを積み上げて作るよりも、さっきのMariyaさんの作品のように、「これだったら分かるかも!」の方が、人の気持ちが動く瞬間なのかもしれないと思いました。決めきったり、作り込み過ぎたりしていないからこそ、森や町に見えるかもしれないし、全然違うものに見えるかもしれないという自由さを感じました。

このような「アートを作っていく時の感覚の話」を、最後にみなさんとお話し出来たらと思います。ローゼンさんは普段アートディレクションをされている時、アートの価値をどう周りに説得されているのでしょうか?

ローゼン:アートの力や価値については、うちも課題としていつも考えています。アートとデザインは比較する必要はないかもしれませんが、黒田さんはデザイナーとして、情報を伝えたり機能を果たしたりするものを世に出していると思います。一方でアートの方はまず感じて、自分の気持ちをどう世に出すかというものだと思います。その日の自分の機嫌や、その場にいた周りの人からの影響などにも反映されるので、自分の一部を出しています。なので、アートはその人しか出せないものだと思います。普段は私たちもクライアントワークなのである程度制限はありますが、今回の作品は全て体験や気持ちから生まれてきたものを残した、「純アートプロジェクト」だと思います。

黒田さん:ありがとうございます。simoやMariyaさんはアーティストとして、どのように自分たちのアートの価値を伝えていますか?もしかしたら、説明もしていないかもしれませんが、普段どう周りに伝えていますか?

simo:一番苦手な2人かもしれないですね(笑)。伝えることを前提に作っていないと言ったら語弊があるかもしれませんが、その時々で作りたいものを作ってきたらここまで来ていたという感覚があります。自分が綺麗だなと感じるものを集めて、その結晶みたいなのを作りたいなと思って制作をしています。出来上がった作品を見た人も同じようにまずはただ綺麗だな、と思ってもらえるだけでOKです。まだ整理は必要ですが、何を伝えたいとかは無いかもしれないぐらいの作品を作っています。

Mariya:私も基本simoと同じ気持ちですが、私の場合は、常に葛藤です。アートとの付き合い方は、仕事でない時の方がシンプルでした。描くこと自体が自分で、「なんで描いてる?」という質問自体が不必要でした。人のために描いているのか、何のために描いているのか、という質問が湧いてきたのは、絵を描くことを仕事にしてからです。人を幸せにするために描いていた訳ではないですが、お金をもらっている以上はそうしなくてはいけない…。

ローゼン:逆に2人は幸せ者だと思いますよ。自由に表現して、それに価値を感じるお客さんがいるのは素晴らしいことだと思います。

Mariya:本当にそう思います。人をハッピーにするために描いたのではないものを見て、買ったり気に入ってくれたりしてくれた時は、こんな気分になれるんだというぐらい幸せです。しかし、それを目的としたり、期待したりしてしまうのは、わたしにとってはちょっと違う気がする。「アートの存在はなんだろう、自分にとって、他人にとって何だろう?」という疑問が、日々頭の中を渦巻いています。

ローゼン:そうですね。でも自分が大好きで作っていたら、そのエネルギーが伝わっていると思いますよ。

▼ かんなくずに描かれたMariyaの絵

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4. 「地域を限定したアート制作の意義」について

黒田さん:今回は飛騨で行ったと思いますが、地域を限定して作品作りをすることの楽しさはどのようなものがありましたでしょうか?

simo:僕は行く前から楽しみで、行ってからも楽しかったです。制限はありましたが、むしろ可能性の塊だと思いました。全然知らなかったことも見せてもらえて、その場所に行って作るといった活動は、今後もやっていきたいと思いました。

Mariya:自分のチョイスではなくて、他からのエネルギーは結構好きです。例えば端材を使うということも制限だし、自分がコントロール出来ない部分があるのは想像の幅に繋がると思います。「じゃあこの地域で」と言われたら、「何が出来るだろう?」と、可能性を逆に広げてくれると思いました。

黒田:そういう意味では、みなさんに「楽しかった」と何度も言って頂いてますが、それは大事なことだなと思いました。どんな地域でやるから、どんなものができるというのは大事で、かつ作る人にも楽しいと思ってもらわないと来てもらう意味がないと思います。何度も「楽しかった」と言って頂いて、こちらとしては本当にありがとうございますという感じです。

simo:楽しかったです。この話だけだと誤解を生むかもしれないと思ったのですが、今回はヒダクマさんにおもてなしをしてもらって楽しかったという訳ではなくて、飛騨では制作しかしていませんが、町やそこで出会った人が素敵で、散歩するだけで充実していました。

Mariya:私も飛騨に住みたいと思いました。これからもこのような作品をもっとやっていきたいなと思いました。初めて踏み入れた作品の域で、新しいからこそ伸び入れる幅があると思いました。第二弾、お願いします!

▼ 飛騨の美しい街並み(Photo by Yoshitaro Yanagida)

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5.  質問コーナー「地域の方とのコミュニケーション」など


質問① :木工とクリエイター、双方で何か相乗効果はありましたか?

黒田:アート作品という、よく分からないものを作るのがいいなと思いました。「どうなるんでしょうね」と言いながら作るのはとても面白かったです。

simo:黒田さんは木工のスペシャリストなので、「この木をこういう風に使ったらいい」ということに対して的確なアドバイスを下さり、そして要望通りに仕上げてくれました。自分だけでは出来ないことをやってもらえることには助かったし、お陰様でいい作品になりました。

Mariya:それもあるし、お互いに「こうやりたいんですけど、これできますか?」とむちゃぶりをし合ったと思います(笑)もし出来なくても「じゃあどうしたらいいんだろう」と黒田さんが色々考えてくれました。お互いの専門性を使って、お互いをプッシュし合ったと思います。

質問②:地域資源を活かしたプロジェクトを実施する上で、地域の方とどのようにコミュニケーションを取りましたか?もしそこで直面した困難や課題があれば教えて下さい。

Mariya:田中さんの工房で、田中さんが趣味と呼んでいる工房で出た端材を使って新たな商品を作る、ということは素晴らしいなと思いました。飛騨に住んだら、ここでバイトしようかなと思いました(笑)

黒田:ヒダクマでいえば、ものを作る過程で地域の方と打ち合わせがある時には、その前後30分で何でもない話をするなど、積み重ねが大切だと思います。「今度はアーティストさんを連れてきます」と言ったら、地域の人たちにも「面白いね」と快く引き入れてもらえるような環境を作るために、面白いものを持って行ったり、地道にお話しをするということが課題だとも思います。

▼ 端材を新しい商品に生まれ変わらせている田中さん

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質問③:自分の作品に木材を取り入れる時に、特に気をつけたことはありますか?

simo:自分は木を切ってもらって、さらに塗装をするという作業でしたが、どこまで自分の塗る所を狭めて、どうしたら木に付いているシミやコブの形の魅力がちゃんと映えるのか、ということをとても考えました。自分の中では集めた木を全部活かせたのではないかと思います。

難しかった所は、木のコブを6個ぐらい剥いてもらったのですが、いざ剥くと生々しい形をしていて、生っぽさが増してしまったことです。やり直したりしながら、どう活かすのがいいのか、配置などをとても考えました。是非作品を見に行ってください!

▼ 木の魅力が活かされたsimoの作品

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最後までお読み頂き、ありがとうございました!飛騨の魅力が詰まった3人の作品を、hotel around TAKAYAMAで是非御覧ください。


2022年1月31日までの限定公開で、今回のイベントをご視聴できます!


■ 株式会社飛騨の森でクマは踊る    IG:@fabcafehida
https://hidakuma.com/

■ Mariya Suzuki IG:@mariyasuzuki
12月に個展をやるので、インスタを要チェック!

■ simo (WHOLE9) IG:@simo_w9

■ 柏原晋平:IG:@kashiharashinpei

■ hotel around TAKAYAMA   
https://hotel-around.com/takayama/



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