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日本公開60周年「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズ第7弾『スラッシュの要塞』&第8弾『地球を盗む男』/世文見聞録160

川口世文と木暮林太郎が、全然思い入れはないけれど、007ファンとしては一度は観ておきたかった「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズを、日本では公開60周年となる第1弾『罠を張れ』から1作ずつ観ていきます。


○第7作『0011ナポレオン・ソロ/スラッシュの要塞』(ネタバレ注意!)

木暮林太郎:原題の「ヘリコプター・スパイ」はともかく、邦題の「スラッシュの要塞」は詐欺じゃないか!

川口世文:今回の敵は「スラッシュ」ではなくて「第3の道」という怪しげな宗教団体だったからね。

木暮:もはや慣れっこだけど、一応文句はいっておく。

川口:本家007が2年に1作にペースダウンして、さらにショーン・コネリーの後継者問題で揺れているあいだに、こちらはとうとう7作目まで来てしまった。

木暮:「粗製」とはいわないが「乱造」ではある。まあ、元がテレビシリーズだから仕方がないんだけどね。

川口:とはいえ今回は「熱反射プリズム」という兵器を衛星に積んでロケットで打ち上げようって話だ。これは本家第7作『ダイヤモンドは永遠に』のスペクターの計画とほぼ一緒──相変わらず“先取り感”が半端ない。

木暮:今回ほど前半と後半で話が変わるのも初めてじゃないか? そもそも前半の敵はプリズムを作ったカルムージ博士で、セバスチャンという金庫破りを引き連れて研究所に潜入する『スパイ大作戦』みたいな話だった。

川口:そのセバスチャンが裏切ってプリズムが盗まれ、後半はそれを打ち上げるロケットを強奪する話になる。

木暮:強奪チームのメンバーがみんな白髪なのでソロも髪を染めて潜入するんだけど、最後に“白いヘアカラー”が落ちてしまう。え、そういう染め方だったの?(笑)

川口:捕まえたイリヤを連れていくセバスチャンの車の後部座席が“イジェクション・シート”になっているんだけど、何とそれが “横”に飛び出したのにも笑った。

木暮:ラストはロサンゼルス市内の建物にロケット発射場が隠されているという発想だったね。いろいろと無茶な計画なんだけど、これって今やイーロン・マスクなら可能だよなと思ったら、少しだけリアリティを感じた。

川口:そもそも「熱反射プリズム」があればの話(笑)

○第8作『0011ナポレオン・ソロ/地球を盗む男』(ネタバレ注意!)

木暮林太郎:原題は「地球を盗む“方法”」だから、今回の邦題は詐欺ではなかったな。

川口世文:映画シリーズもテレビシリーズもこれが最後のエピソード。それだけに行くところまでいった感じ。

木暮:科学者を次々と誘拐して“世界の七賢人”を集めて“制御ガス”で全人類をマインドコントロールする。

川口:レスリー・ニールセン演じる「将軍」が誤って実験台にされると完全な“指示待ち人間”になっちゃう。ヒマラヤにある基地から“真っ赤なガス”を世界中に散布するだけでも相当大変だと思うけど、そもそも全人類がそんな状態になったら、征服する側の悪夢だぞ(笑)

木暮:この手のエンタメ作品で乱用されていた“世界征服”って、結局どういうことだったんだろうな?

川口:それをよくわかっているのか、今回の「スラッシュ」は計画の準備が終わってから横取りしようとする。

木暮:「香港司令部」の“会議室”が本家007の「スペクター」っぽい雰囲気だった。今回の計画責任者は元はアンクルメンバーだったキングスレーで「スラッシュ」は彼の妻を通して密かに1億ドルもの投資をしている。

川口:そんな金があるならもっと使い道があっただろ。本家といえばヒマラヤ基地のデザインが『私を愛したスパイ』の“アトランティス”によく似ているんだけど、よく調べてみたらロサンゼルス空港の管制塔のデザインそのままだった……“クラゲ”みたいなドームの形のね。

木暮:“設計費用”だけはケチったか(笑)。最終回ということで荒唐無稽に振り切った感じだけど、今となっては笑えない気もする。“化学的”な征服は無理だったけど“電子的”な征服はすでに進行しているんじゃないか?

川口:“世界の七IT長者”によって? 

木暮:イーロン・マスクの「テスラ社」の“スラ”って実は「スラッシュ」の“スラ”だったんじゃないか?


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