日本公開60周年「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズ第1弾『罠を張れ』/世文見聞録154
川口世文と木暮林太郎が、全然思い入れはないけれど、007ファンとしては一度は観ておきたかった「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズを、日本では公開60周年となる第1弾『罠を張れ』から1作ずつ観ていきます。
○『0011ナポレオン・ソロ』映画シリーズについて
川口世文:実は『0011ナポレオン・ソロ』シリーズが日本公開60周年を迎えるんだよね。
木暮林太郎:名前ぐらいは聞いたことがあるかな。
川口:当時は007と人気を“二分”したらしいけど、どの程度の人気だったのか正確にはおれもわからない。007の原作者イアン・フレミングが“原案”に関わっていたという話なんだが、最終的にはナポレオン・ソロともう一人、エイプリル・ダンサーの二人のネーミングぐらいしか痕跡は残っていないらしい。
木暮:相棒のイリヤ・クリヤキンじゃないんだな?
川口:詳しい企画の成立過程はともかく、日本ではテレビ放映がはじまる前に“劇場版”が公開された。といってもアメリカは当時もドラマは35ミリフィルムで撮影されていたから、その再編集版。
木暮:日本のドラマに比べるとハリウッドは凄かった。
川口:第1作『罠を張れ』が公開されたのが1965年1月15日。テレビ放映は6月からなんだけど、4シーズン105話を全部観る必要はないから、せめて劇場版8本だけでも観てみたい。
木暮:8本か……“5部作”だったらまだしもな(笑)
川口:しかもどの程度の作品レベルかまったくわからない。その昔、深夜にテレビシリーズが再放送されたときに何本か観たけど、第1シーズンはモノクロだったし、すぐに飽きてやめてしまった。
木暮:何となく想像はつくね。
川口:劇場版はカラーで、主に前後編のエピソードを再編集したものだから、少しはマシな気がするんだよ。
木暮:マシじゃなくても一度は観ておきたいんだろ?
川口:時期的にはスパイ映画の全盛期で、近年の007映画が忘れてしまった何かを思い出せるかもしれない。
木暮:思い出す価値がその何かにあるといいんだけど。
○第1作『0011ナポレオン・ソロ/罠を張れ』(ネタバレ注意!)
川口世文:いわゆるパイロット版が基になっている話。モノクロとカラーの2種類バージョンがあったらしいんだけど、どちらもそれ単体では尺が足りない。おそらく最低でも20分以上シーンが追加されているんだと思う。
木暮林太郎:それは新規に撮影したっていうこと? それとも未編集の素材なんかで水増ししたってことか?
川口:正直よくわからない。あるいは他のエピソードから一部を持ってきたのかもしれない。怪しいのは途中で「U.N.C.L.E.」のニューヨーク本部に敵が進入してくるシーンかな? 今回はあそこにしかイリヤ・クリヤキンが登場してこないし……。
木暮:今回の主役は「西ナトゥンバ」の首相暗殺を阻止する作戦に巻き込まれる平凡な主婦エレインのほうだ。ソロはむしろ彼女の“エスコート役”に徹している。
川口:物語の“背景”で暗躍している印象だな。どうもそういうタッチがイアン・フレミングの当初の企画意図だったらしいんだよね。クリヤキンのみならず、ウェイバリー“二課長”も出てこないし、敵組織も「スラッシュ」ではなくて「ワスプ」だし、いかにもパイロット版らしい展開だ。
木暮:とはいえソロの見せ場も一応はある。彼に対して「罠を張る」アンジェラという女性を演じたルチアナ・パルッツィは、本家007の『サンダーボール作戦』にも出てきただろ?
川口:そうそう。同時期に似たような役柄で登場。あと敵の工場からソロが脱出するシーンでリチャード・キールが出てきた気がする。後年の“殺し屋ジョーズ”ね。
木暮:ソロは結局捕まって「反応炉」の地下で“蒸し焼き”にされそうになる。こういうところが初期のボンド映画っぽいかな? それが“忘れてしまった何か”なのかどうかは疑問だけど(笑)