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ジェイムズ・ボンド映画アクション進化論18『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』

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第18作『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』

 ブロスナン=ボンドの2作目『トゥモロー・ネバー・ダイ』は『007は二度死ぬ』や『私を愛したスパイ』の延長線上にある話で、敵はかつての「米ソ」ではなく「英中」の対立あおる。ボンドの制服姿が見られるのも二作と同様である。

米軍基地だから正装なのか?

 だが、それら二作のように“話のスケール”を大きくすることよりも、“アクションの見せ場”を増やすことに腐心している。しかも一つの場所でいくつかのアクションが有機的に結びつき、なおかつ主要なアクションが全部同じコンセプトでまとめられているという「ボンドアクション」の一つの完成形になっているのだ。

 まずはプレタイトル。ここでボンドが奪取する戦闘機は前作の戦車同様、ボンドカーを使わずに「無双状態」を作るパターンだが、今回は一捻りされている。後部席で昏倒していたはずの男が途中で目覚めてボンドの操縦を邪魔するのだ。サントラの曲名にならって、これを「バックシートドライバー」状態と呼んでいこう。

バックシートドライバーその1

『ゴールデンアイ』に引き続き、Qが登場してきてBMWの装備の説明をする。今回こそボンドカーとして大活躍し、「説明」=「伏線」を回収してくれるのだが、ここでも一捻り。

 携帯電話で操作ができるということは、ボンドは車の「外」から操るのだなと思わせておいて、ここでもまさかの「バックシートドライバー」状態に。いわば「無双状態」でありながら「かせ」がある見事に緊迫したアクションが出来上がった。

バックシートドライバーその2

 さらにもう一押し、ベトナムでBMWのバイクを使った逃走劇も準備されている。このバイクはボンドが盗んだものなので秘密兵器はないが、大型車でたっぷり「無双」感がある。

 戦闘機では敵が、ボンドカーではボンド自身が、そしてここでは彼と手錠でつながれたボンドガールが「バックシートドライバー」になるのだ。ミシェル・ヨーの身のこなしを最大限に生かした最高のアクションになった。

バックシートドライバーその3

 ハンブルグでは印刷所への潜入にはじまり、途中にカウフマン博士と対決するシーンをはさんでBMWに至るまでが20分。ベトナムではHALOジャンプから沈没したデボンシャー艦内に潜るシーンをはさんでバイクチェイスに至るまで、これまた20分

 緩急をつけながらもまったくシーンが分断されず、言葉通り観客に「息つく暇を与えない」展開になっているのもこの作品の大きな魅力である。

 だからというわけではないだろうが、ハンブルグの「防音室」で4人の敵を相手にボンドが格闘するシーンでは、すべてをガラス越しに撮影して、あえて全部は見せない余裕の(?)演出もあった。

 よく見るとピアノを使ったりチェロを使ったり、バカバカしくも面白いシーンになっているので、これをしっかり写したバージョンも観てみたかった気がする。

 そういったユーモアとは対照的に、メインの敵であるカーヴァーや殺し屋スタンパーの殺され方はいずれも(その瞬間こそ明確に描かないものの)かなり冷酷だった。

このあと薬莢が飛ぶ

 カウフマン博士に反撃して射殺する際、ブロスナンをかすめるようにして飛んだ“薬莢”もこれまでにはない描写だったし、クライマックスの戦闘でブロスナン=ボンドがとことん使いこなすのはシンプルな「ダガー(諸刃の短剣)」だ。これを逆手に持って敵に突き刺す動きなど、これまで以上に、十分に訓練された「戦闘員」であるボンドの能力を表現していたといっていいだろう。


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