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『相棒』シーズン23-9「最後の一日」/世文見聞録151
下手な予想も数撃ちゃ当たる──川口世文と木暮林太郎が、大好物の「ビッグストーリー」であるドラマ『相棒』シリーズについて”今年”も語ります。
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○『相棒シーズン23』第9話(ネタバレ注意!)
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<あらすじ>
大晦日。市民合唱団に入団した美和子(鈴木砂羽)と小手鞠(森口瑤子)は、年末コンサートを前に練習の真っ最中。その頃、右京(水谷豊)は、陣川(原田龍二)の付き添いでデパートの宝石店にいた。相変わらず恋多き陣川は、出産を控えた“運命の相手”にプロポーズするため、指輪を購入したいらしい。いっぽう、薫(寺脇康文)、伊丹(川原和久)、益子(田中隆三)の3人は、警察学校時代の同期・澤田菜穂(櫻井淳子)の自宅を訪れ、夫の正志(藤本隆宏)を紹介されていた。同じ頃、芹沢(山中崇史)と麗音(篠原ゆき子)は、角田(山西惇)の応援で、喫茶店に潜入中。容疑の掛かった反社会的組織の関係者を待ち伏せているようだ。
そんな中、右京は4歳の女の子とはぐれた母親と出会い、陣川と迷子捜しを手伝うことに。いっぽう、テレビ局では、人気ニュースキャスターの桧山(髙嶋政伸)が、付人の武部(高橋光臣)や局のお偉方に取り巻かれ、年末特番の準備を進めていた。ところが、ジョーカーを名乗る人物から、桧山に『娘は預かった』という脅迫状が届き、状況が一変。右京が捜す女の子こそ、桧山の娘だった。犯人からの要求は、『予定通り生放送を行え』というもので、意図は不明。
その頃、美彌子(仲間由紀恵)と峯秋(石坂浩二)は、与党の大物議員・伊地知(石丸謙二郎)の忘年会に招かれていた。伊地知は最近、ジョーカーを名乗る反社会的組織の関連団体が、自身の反対派に暴力をふるう事件が相次いでいることに頭を悩ませているらしい。いっぽう右京は、誘拐事件の目的が、番組内でジョーカーを批判した桧山を狙ったものではないかと考え、角田たちが確保したジョーカー関係者の男と接触。男は誘拐への関与こそ否定したものの、「テレビ局に仲間がいる」と証言して…!?
木暮林太郎:やっぱり大晦日から元日にかけて起きた事件を描くパターンがいちばんしっくりくるね。登場人物たちと同じ時間を共有している気分がより増してくる。
川口世文:特に最初の15分の“シャッフル感”がよかった。何がどうなっているのかよくわからなかったけど。
木暮:特命係も捜一トリオも“解体”されて新鮮だった。
川口:まず“こてまり”と美和子が市民合唱団で第九コンサートに参加する準備をしている。劇場版第1作での“東京ビッグシティマラソン”参加と同じパターンだ。
木暮:クライマックスはきっとこの場所だとわかる。
川口:右京はなぜか陣川の“55万円の婚約指輪”選びに付き合わされていて、そこでニュースキャスターの娘の“迷子”が実は誘拐事件だということに気づく。
木暮:今度こそ陣川もハッピーエンドかと期待もさせる。
川口:一方亀山は、伊丹と鑑識の益子と、同期の女性の新居を“電撃訪問”する。益子も“同期”だったんだな。
木暮:右京さんも事件に関しては尋常でなく“引き”がいいけど、薫ちゃんも負けず劣らずだったよな。しかも“ターミネーター”みたいな男に出くわすとは(笑)
川口:特命係は一人一人でも事件を引き寄せる。それと真犯人は大体キャスティングでわかる。この二つの法則は意図的にやっているとしか思えない。
木暮:その上でなおかつ楽しめれば問題ないんじゃないか? さらに今回は捜一の芹沢と出雲が、角田課長に協力して喫茶店に張り込んでいる。
川口:伊丹がいないから、芹沢は一瞬だけ誘拐事件の捜査の指揮を執るし、出雲は出雲で張り込み中に知り合った妊婦を病院に連れていくハメになる。きちんと二人の“出番”が作れたのもスペシャルだったからだろうな。
木暮:最後は甲斐と社美彌子。この二人が“IR構想”推進派議員伊地知“詣で”をしている。
川口:ここまでで5つの方向に話が分かれているんだ。そこに高嶋政伸演じるニュースキャスターの“年末生放送”が加わって合計6ヶ所に分散したシーンが徐々に1つに収束していくんだから、なかなかの面白さだった。
木暮:高嶋政伸はよくあの役柄を引き受けてくれたよ。あの生放送番組、一視聴者として観てみたかったなぁ。
川口:「反社の手先」らしい“ジョーカー”という組織の犯罪かと思いきや、本当の動機は5年前に起きた“土砂災害”にあったわけだけど、昨年の“能登地震”にインスパイアされたものなのかどうかだけは気になったな。
木暮:それは考えすぎじゃないか? もっともニュースキャスターだけじゃなくて、その裏にいた伊地知議員の悪行もあまりにレベルが低くて、実際の日本の“この一年”を象徴するような事件だったような気はするけど。
川口:それと正直なところ第九コンサート会場で例のターミネーターが“ゴルゴ13”ばりにアサルトライフルで狙撃しようとするクライマックスは蛇足だったと思う。
木暮:“音声データ”がネットに流れた時点で議員の政治生命は終わったようなものだけど、元日スペシャルとしては最後にあれぐらいのインパクトがほしかったんだ。
川口:それもわかるけどね。一方で陣川の話も本当に必要なのか首を傾げたけど、こっちはうまくつながった。
木暮:とにかく1時間も残して“犯人がわかっちゃう”からな。このあとどうなるんだろうって逆に興味が湧いたよ。すべてが落ち着くところに収まってよかった。
川口:それにしてもここ数年の『相棒』は次々と“アホな政治家”を葬りつづけているなぁ。それこそが視聴者が観たがっているものだってことなんだろうか?
木暮:何といってもかつては“必殺シリーズ”が担っていた“正月スペシャルドラマ枠”だし、『水戸黄門』的な勧善懲悪ドラマも今ではもうこれぐらいしかないから。
川口:そういう楽しみもあと何回観られるんだろうな?
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