日本公開60周年「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズ第6弾『ミニコプター作戦』/世文見聞録158
川口世文と木暮林太郎が、全然思い入れはないけれど、007ファンとしては一度は観ておきたかった「0011ナポレオン・ソロ」映画シリーズを、日本では公開60周年となる第1弾『罠を張れ』から1作ずつ観ていきます。
○第6作『0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦』(ネタバレ注意!)
木暮林太郎:タイトルが「ミニコプター作戦」で、冒頭からいきなりそれが登場してきて、これはテンポがいいぞと思ったら、2~3分で終わってしまったのは何だ?
川口世文:何だといわれてもね。クライマックスシーンの先取りでもなくて、まったく意味不明に終わったな。ソロとイリヤが乗る車もガルウィングの特殊なデザインで、あれは“アンクルカー”とでも呼ぶべきなのかも。
木暮:原題は「カラテキラーズ」なんだけど、それもよくわからない。行く先々に現れるショッカーの戦闘員みたいに衣装を揃えた「スラッシュ」たちのことなのか?
川口:原題と邦題の乖離はこのシリーズの特徴だからね。それよりもリアルタイムでこのシリーズを観た年代が、前作で往年の“ギャング映画スターたち”登場を懐かしがったみたいに、おれの場合は今作で似た経験をすることになったようだ。
木暮:その前に、一応今回のストーリーの骨格を話しておこう。海水の淡水化技術の副産物として何と「金」を取り出せる化学式を発見した博士があっさりと死んで、その秘密が4人の“義理の娘たち”に託される。それを順番に探していくという、どこかで聞いたような展開。
川口:キム・ダービーが演じた博士の実の娘を含めた3人の道中になるんだけど、最初のローマで見つけたのはテリー・サバラス演じるファンチーニ“伯爵”の夫人。サバラスは本家007の“6作目”『女王陛下の007』でデ・ブルーシャン“伯爵”を演じることになる。
木暮:どっちの“6作目”が公開は早いんだ?
川口:こっちだね。この作品の日本公開は1967年の7月で本家第5作『007は二度死ぬ』の1ヶ月後だ。
木暮:なるほど。そういうことならテリー・サバラスに関しては先取りしているけど、“ミニコプター”のシーンは急遽付け足した可能性もありそうだ。
川口:ロンドンに舞台を移して、“不敬罪”か何かで水着姿のまま裁判にかけられるゴーゴー・ガールを演じたのがジル・アイアランド。
木暮:チャールズ・ブロンソンの愛妻は当時イリヤ・クリヤキン役のデヴィッド・マッカラムと結婚していた!
川口:つづいてオーストラリアのスキー場で“カール”・フォン・キッサーという富豪の秘書を探すわけだけど、富豪役のクルト・ユルゲンスは本家第10作『私を愛したスパイ』で“カール”・ストロンバーグを演じていた。
木暮:『私を愛したスパイ』といえばリチャード・キールが第1作に出演していた疑惑もあったな。
川口:こっちも時期的に文句なく先取りしている。
木暮:娘たちが持っていた写真に書かれていた暗号が出揃って、そのアナグラムが解かれると「日本の子守歌」という言葉になり、化学式はサザミ・キュウシュウという隠遁した日本人化学者に託されていたとわかる。
川口:“なんちゃって日本”ではあるけど、こっちも『007は二度死ぬ』と完全にかぶっている。本家の日本描写も物議をかもしたけど、あとからこっちを観た観客はボンド映画のほうが数倍マシだと思ったんじゃないか?
木暮:とはいえ、オーストラリアではスキーアクションもあったから、ナポレオン・ソロがジェームズ・ボンドにもっとも近づいたといっても過言じゃなさそうだな?
川口:その結果、話が面白くなったかどうかは別にしてね(笑)。「スラッシュ」の北極基地で制御バルブを操作して爆破させるラストは『ドクター・ノオ』を思わせるし、ハーバート・ロムが演じた敵ランドルフが金塗れになって死んだ姿は、まさに『ゴールドフィンガー』!
木暮:ハーバート・ロムって『ピンクパンサー』シリーズでクルーゾーの上司をずっと演じていた人だろ。前回のジャック・パランスよりはクールに演じていたけど、どこか“コメディ演技臭”がしていたのはそのせいか。