『スター・トレック:ピカード』シーズン1-1「記憶」/世文見聞録82
「世文見聞録」シーズン2。シーズン3の興奮冷めやらぬ川口世文と木暮林太郎が彼らの大好物の「ビッグストーリー」であるドラマ『スター・トレック:ピカード』をシーズン1から観直していきます。
○『スター・トレック:ピカード』遡り鑑賞について
木暮林太郎:すでにシーズン3を観てしまったおれたちが、シーズン1に遡って観直す企画なんてやる意味があるのかな?
川口世文:それをいわれると耳が痛いけど、今さらその記憶を消すわけにもいかないし──。
木暮:正直おれはシーズン1・2を観ていないから興味はあるんだけど、おまえはもう全部観ているんだろ?
川口:そうだな。でも、その上で一言いいたい。確かにシーズン3がはじまったときには、おれに限らず、最初からこういう話をやればよかったんだという意見が多かったけど、それは本当に正しかったのかということが気になるんだ。そこを検証したいという気持ちが強い。
木暮:早い時期から、3シーズンやることは発表されていたんだっけ?
川口:そう記憶している。
木暮:その上で、もしシーズン3の展開を最初からやっていたら、とても3シーズン分も話がつづかなかったかもな──“あの先”にどんな話があったっていうんだ?
川口:『ピカード』としては、まさに“大団円”だったからね。シーズン2で早くも『レガシー』とでもタイトルを変えるしかなくなったかもしれないな。
木暮:シーズン3の雰囲気が決定的に変わったのは、いわゆる“ショーランナー”が交代したからじゃないのか?
川口:それにしても、これだけ過去の“文脈”を大事に扱った人物が、シーズン2までをまったく“無し”にしたとは思えない。シーズン1・2も意味あるものにしていると思うんだ。
木暮:そういう意味で、これから観直す作業にも意味があるってことか。
川口:むしろシーズン3を観終わったからこそ、1と2が楽しめる──それを信じて観ていきたいと思うんだ。
○『スター・トレック:ピカード』シーズン1第1話(ネタバレ注意!)
川口世文:最初に〈ブルー・スカイ〉というジャズが流れて、映画版10作目『ネメシス』に直結している話だとわかる──つまりシーズン1はピカードとデータの話。
木暮林太郎:夢とはいえ、いきなりエンタープライズDが出てきて、“年老いていない”データとポーカーをやっているシーンからはじまるのが実に象徴的だな。
川口:こじつけるなら、3シーズンかけて、このポーカーテーブルに参加者が増えていく話だったともいえる。
木暮:おまえの好きな“円環を閉じる”ってことだな。
川口:「Q」のカードが5枚──というのも非常に暗示的だけど、その話は今はやめておこう。
木暮:Qとかボーグ・クイーンとか?(笑)
川口:ピカードとデータの関係の“その後”を描くというのはかなり個人的なテーマで、そこに絞ったのは賢明だったと思う。ロミュランの超新星爆発とか、人工生命の暴走で“火星が燃える”とか、それだけで1シーズンもつような話はあえて“背景”に置いているんだよな。
木暮:ちょっと話に追いつくのが大変だけどね。宇宙艦隊に対するピカードの不信感はかなり根強くて、シャトー・ピカードに引きこもってしまった理由はよくわかる。
川口:犬の名前が“ナンバー・ワン”というのがいい。
木暮:そこに登場してくるのが“データの娘”──いきなりピカード自身の“息子”ではないところもいい。
川口:そうだね。とはいえ『ピカード』というシリーズは最初から、ピカード自身と“ネクスト・ネクスト・ジェネレーション”の関係性を描こうとしていたわけだ。
木暮:なるほど、そういう意味ではブレていない。宇宙艦隊ミュージアムやデイストローム研究所もすでに登場しているしな。
川口:ボーグ・キューブもね。それがロミュラン再生施設になっているという設定はなかなかの捻りだったよ。
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