新型コロナ支援策申請のコツについて —「持続化給付金と東京都の休業協力金は両方とも申請できるか?」を例に
初めまして。弁護士の坂仁根です。
新型コロナウィルス対策で、国や地方自治体は、多くの支援策を打ち出しています。しかし、どの手続きも申請手続きは「簡単」と呼べるようなものではなく、申請を躊躇されている方もいるのではないかと思います。そこで今回は、「東京都の休業している自営業者は、国から支給される持続化給付金(最大100万円)と、東京都から支給される休業協力金(1期間につき50万円)を両方とも受け取ることができるか」という問題を例にして、申請手続きのコツを紹介したいと思います。
1 問い合わせの電話はあきらめず掛け続ける
最近私は、飲み屋を営む72歳の知り合いの女性から、「東京都に休業協力金を申請したいんだけど、国の持続化給付金も申請できるのかしら」という相談を受けました。そこでインターネットで調べみたのですが、どこにも併給可なのか不可なのか、書かれていません。国の持続化給付金についてのホームページに、「休業協力金との併給申請が可能かどうかは、各自治体に問い合わせを」と書かれているだけです。
このような場合、弁護士は得てして特殊な問い合わせ先を知っているのではないかと思われがちですが、実は、そんなルートはありません。弁護士も、一般の方同様、東京都のホームページに書かれた問い合わせ先の電話番号に掛けて聞いてみるしかないのです。
そこで電話に掛けてみましたが、例により「ただいま電話が大変込み合っております。時間を置いてお掛け直しください」の音声が流れるだけで、つながりません。10数回掛けると、今度は違った音声ガイドが流れ始め「オペレーターとお話しされたい方は「1」を押してください」と言います。小おどりして「1」を押しましたが、結局これもまたまた「電話が込み合っております」の音声につながるだけ。やっぱりダメでした。
ここであきらめてはいけません。しつこく掛け続けるのです。30数回掛けて、ついにオペレーターにつながった時には、掛け始めてから既に1時間近くが経っていました。
込み合う回線に電話を掛けたときに「時間を置いてお掛け直しください」との音声案内をよく聞きますが、このような電話は、時間を置いても同じことです。私の経験から言いますと、あきらめることなく電話を掛け続ければ、だいたい1時間くらいでつながります。問い合わせの電話はしつこく掛け続け、きちんと分からない点を詳しく聞き出しましょう。オペレーターは懇切丁寧に教えてくれます。
2 書類の不備を恐れない
東京都からの回答は、「国の持続化給付金と東京都の休業協力金は両方とも申請してよく、条件さえ満たせば両方とも支給される」とのことでした。回答をくだんの女性に伝え、必要な書類を準備してもらいました。すると、「これでいいのか見てくれ」と言います。
一見したところ、女性が準備した書類は全部問題ないように見えます。ところが詳しくチェックしてみると、持ってきた青色申告書は、申請に必要な去年(令和元年)のものではなく、一昨年(平成30年」のものでした。私が「去年の青色申告書」と言ったもので、「去年申告した一昨年の申告書」と勘違いしたのです。また身分証明書にも問題がありました。本人はパスポートを持ってきたのですが、これもよく見ると、期限切れです。結局、住民票を取ってもらいました。
実は、私たち弁護士が出す書面でも、不備はよくあることなのです。その場合、担当の官公庁から訂正や、追加の書面提出を指示されます。書類が不備だからといって、直ちに申請が却下されるようなことはまずありません。時間は余分にかかりますが、役所の指摘を受け、追加の書類を出せばいいだけです。申請要項など見ると訳の分からない書類の群れに目が回ってしまうことが多いと思いますが、あせらずにじっくり読み込み、「追加もあり得る」くらいの余裕を持って申請することをお勧めします。
結局その女性は、持続化給付金も休業協力金も申請しました。まだ支給通知は来ていませんが、まず両方とも受け取れると思います。コロナ支援策の申請は切羽詰まって行うことが多いでしょうからなかなか難しいことではあるのですが、申請手続きは、心と時間に余裕をもって行うのが、支援策を十分に活用する一番の近道だと思います。
以上
(本稿は2020年5月13日時点の情報に基づく記事です。)
文責 弁護士 坂 仁根