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ブラオケ的ジャズ名曲名盤紹介 ~これを聴け~ #14 Béla Fleck and the Flecktones

0. はじめに

過去2回はPat MethenyBill Evans など、割とメジャーどころを紹介した。
今回はひょっとするとあまり知られていない(?)けれど、とてもクールでカッコいいアーティストを紹介しよう。
Béla Fleck and the Flecktones(ベラ・フレック・アンド・フレックトーンズ)である。
ジャズだけでなく、ブルーグラスやファンクなど、色々な要素がかけ合わさった曲を演奏するバンドである。

バンドメンバーは以下、
Béla Fleck(ベラ・フレック):このバンドのリーダーで、なんと、「バンジョー」奏者である。バンジョーといえばカントリーミュージックで多く聴く、ひょっとするとジャズからは遠い存在のように感じられるかもしれないが、彼はものの見事にジャズやファンクの世界でバンジョーの素晴らしさを発揮している。

Victor Wooten(ヴィクター・ウッテン):ベース担当。個人的に、「天才ベーシスト」に相応しい人物の1人だと思うくらい、テクニックとグルーヴ感に優れたプレイヤーである。事実、ローリング・ストーン誌の「読者が選ぶ史上最高のベーシスト」では10位に選ばれた。彼のプレイを見ていると「呆気にとられる」。特にタッピングは格別の上手さ。

Fututre Man / Roy Wooten:ドラマー・パーカッション担当。ベースのVictorとは兄弟である。彼はかなり特殊な演奏をする。下の写真を見てほしい。

彼はドラムを演奏している。
「いやいや、ギターじゃないか」と思う人もいるかもしれないが、これは「SynthAxeDrumitar」という、彼の自作のパーカッション・シンセサイザーである。弦やフレットのように見えるのは全てボタン。これを操作することで打ち込み以上に鋭いドラムの演奏をする。後ほど紹介する動画にも出てくるが、これが本当にすごい。是非見てもらいたい。
(念のため言っておくが、彼は普通にドラムやパーカッションも演奏する。)

Howard Levy(ハワード・レヴィ):キーボード・ハーモニカ担当。ハーモニカで半音階を演奏するなど、超絶技巧を繰り出す名手。

こんな「最強」のメンバーが集まった、どのジャンルにも縛られない至極の音楽の世界を見てみよう。

1. おすすめ名盤紹介①:『Little Worlds』

1枚目にご紹介するのは「Little Worlds」
1曲目のイントロトラックから「あれ?」とビックリする。なんと会話から始まる。ラジオを回しながらあーでもない、こーでもないと何気ない日常の会話から1曲目の「Bil Mon」につながるあたりで、彼らがいかに世界観を大切にしているかがわかる。しかもシンプルメロディーラインに対してベースが小刻みに動いている対比が素晴らしい。ここでVictorが只者でないことに気づくのではないだろうか。
個人的なおすすめは23曲の「Next」。実は個人的に、このバンドを知るきっかけになった曲なのだ。
かなり古い動画なのだが、この曲の演奏動画があった。

動画を見てまず驚くのは編成。バンジョー、テナーサックス、ベース、ドラム(シンセサイザー)、いつ見ても新鮮さを感じてしまう。
まずはバンジョーのリフにバンドが反応する形でイントロが進む。テーマになるとリズム隊が徐々に曲を盛り上げる。

テーマが終わった後、動画でいうと1:17あたりからVitorのタッピングが始まる。このプレイで彼とこのバンドに心を奪われた。ギターでもなかなか高難度なのに、ベースでやってのけている点、そして全くグルーヴ感が崩れておらず、むしろより存在感が高まる点など、たった10秒足らずの演奏だが、彼の天才的な演奏を体感できる。その後のベースソロも圧巻。
2:26あたりからもう一度やるのだが、この後すぐにBelaにソロを受け渡す。Belaのソロ中でもタッピングを止めず、グルーヴ感が変わらないようにしているのもすごい。

もちろん、テナーサックスやドラムスも素晴らしい。4人の天才のプレイにただただ見入ってしまう動画だ。

「Off the Top」や「Puffy」などもかっこいい。全曲紹介できるスペースはないので、ぜひお気に入りの1曲を見つけて見てほしい。

2. おすすめ名盤紹介②:『Outbound』

2枚目にご紹介するのは『Outbound』。個人的に、彼らのアルバムの中で一番世界観の広い、色々なジャンルを取り入れて大成させたアルバムだと思う。
2曲目の「Hoedown」はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド「Emerson, Lake & Pemer」で有名なナンバー。さっそくロックの世界を取り入れてきている。
(ちなみに「Hoedown」自体が、コープランドの管弦楽組曲『ロデオ』からきているので、なんとクラシックまでルーツが広がる!)


3. おすすめ名盤紹介③:『Live Art』

最後にご紹介するのは『Live Art』。これはスタジオ録音ではなく、様々なライブの演奏を集めたもの。Branford MarsaliやChick Coreaなど、参加ミュージシャンがとにかく豪華。
このアルバムでおすすめの曲を選ぶのはかなり悩んだ。是非全曲聴いてもらいたいと強く願うほど、どの曲も素晴らしい。
「More Luv」や「Flying Soucer Dudes」、「Cheeseballs In Cowtown」はかなりジャズ・フュージョン寄り。「The Message」はHip-Hopと即興演奏の夢のコラボ。「Early Reflection/Bach/The Ballad of Jed Clampett」の中間部ではバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタのフレーズが聞こえてくる。個人的に強いておすすめするならこの辺りだろうか。

4. おわりに

今回はジャズ編の中でもかなり異色なバンドをご紹介した。
上級者向けなのかもとふと思うが、是非気負いせずに楽しんでもらいたい。

人によっては「ジャズじゃないだろ」と思う人もいるかもしれないが、実はグラミー賞のノミネートでもジャズ部門だったりpop部門だったりと揺れていた。それくらい、色々なジャンルの要素を取り込み、自分たちのものにしているのだ。これは相当至難の業。中途半端にならず、自分たちのものにするには、全員のスキルと表現力と各ジャンルへの理解力がないとできない。ひょっとすると、色々なジャンルの曲のアレンジをやる吹奏楽の世界にも、こんなスキルが求められているのではないかなとふと思う。

彼らの演奏動画を見ていると、本当に楽しそうに、時折ふざけているかのような無邪気な場面すら見受けられる。ジャンルを超えた天才達の特徴の一つに、音楽的な難しさやテクニックの難易度を感じさせず、エンジョイしてお客さんに届けることがあるのかもしれない。

バンジョー、いつかは弾いてみたいものである。

(文:もっちー)



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