ブラオケ的名曲名盤紹介コラム〜映画音楽編〜#4日曜劇場『砂の器』より ピアノ協奏曲『宿命』

「砂の器」は、松本清張の長編推理小説であり、東京都大田区の蒲田駅操車場で起きた殺人事件をきっかけに、刑事の捜査と犯罪者の動静を描く作品である。これで、1974 年に映画化されるのみならず、7 回に渡ってテレビドラマ化され、非常に有名な作品と言っても過言ではない。従って、単に「砂の器」と言っても、どの版なのかによって曲の構成が異なるのだが、今回ご紹介させて頂く曲は、2004 年に TBS 系の日曜劇場として放送された際のテーマ曲であり、千住明氏によって作曲されたピアノ協奏曲「宿命」である。

さて、砂の器における「宿命」の位置づけは、登場人物の一人である和賀(天才ピアニスト兼作曲家)が、過去に背負った悲しい運命を音楽で乗り越えることを狙って作曲・初演するものである。2004 年度版では、中居正広氏がキャストを務めたことでも話題になった。
様々なシーンで使用される非常に悲しげな作品であり、「砂の器」のストーリーを知らなくても、本作品を聴けば沸々と作品の内面から滲み出る悲しさというのを感じ取ることが出来るだろう。私も、最初に本作品を聴いたときは本当に衝撃的であった。ト短調の作品であり、冒頭は G の空虚五度からスタートする。激しいピアノの独奏を終えたのち、突然イ短調へ転調し、非常に悲しげなオーボエによる主題の提示がなされる。この主題が非常に耳に残る美しい旋律であり、以後、何度も繰り返し提示される主題である。こんなにも悲しく、且つ、前に進もうとする力強い意志を含み、そして、背後に流れるオーケストラとの見事な融合は、もはや単純なサウンドトラックとして扱うのではなく、一つのクラシック作品として歴史に刻むべきとさえ感じる。音源は下記サウンドトラックのみならず、You Tube でも聴くことが出来る。サウンドトラックのピアノは羽田健太郎氏、指揮は小松長生氏、演奏は日本フィルハーモニー交響楽団である。第 1 楽章の You Tube は下記 URL から聴けるため、是非一度聴いて頂きたい。


 ところで、本作品はオーケストラスコアを販売していた時期があった。現在は廃盤となっており、入手することが極めて難しいスコアとなっている。譜面自体は千住明氏の自筆で書かれており、移調楽器も全て実音で記載されているのが特徴である。

 今回は、映画音楽コラムでありながらも、テレビドラマの音楽をご紹介させて頂いた。本作品は、2004 年に放送された日曜劇場「砂の器」を見ながら聴くのが一番良いだろう。豪華キャストの素晴らしい演技と、その演技の効果を助長させる音楽との見事な融合、これは
映像だからこそ具現化出来る価値であり、映像と音楽のシナジー効果が生まれた典型的な例とも言える。是非一度ドラマを見つつ、本作品を注意して聴いて頂きたい。
                  文)マエストロ

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