ブラオケ的吹奏楽名曲名盤紹介~吹奏楽の散歩道〜 #7「全日本吹奏楽コンクール課題曲の歴史③ 課題曲マーチの名曲」
吹奏楽コンクールシーズン真っ只中!
ちょうど支部大会の時期で、ぼちぼち全国への代表が出始める時期に差し掛かってきている。
全国常連のあのバンドはなにをやるのか、、最近伸びてきている注目のバンドがどうなったのか。。
吹奏楽ファンとして側から見ている分には「競馬の予想」や「プロ野球の順位予想」みたいなものなのだが、当事者はそんな悠長なことは言ってられないであろう。
中学3年間、高校3年間、あるいは大学、社会人に至るまで、その時、その年を、たった12分のステージのために必死に音楽作りをしている。
その12分の中には1年分のドラマが詰まっている。
そう思って聴いてみると、特に中高生の演奏は上手い下手に関わらずとても尊い演奏に聴こえてくるから不思議だ。
もうコンクールが終わってしまった方。お疲れ様でした。
まだコンクールが続く方。どうぞ悔いなく思いっきり音楽を楽しんで。
そんな思いを込めつつ、今回のコラムも課題曲のお話を。
前回は課題曲の歴史の一つとして、“課題曲マーチ”のルーツについて探ってみた。
当然、課題曲に採用されたマーチはそれだけではない。
当時爆発的に人気のでた曲、現在でも課題曲の枠を超えて演奏され続けている名曲も存在する。
今回は、課題曲の様式が固まってきた1980年代、90年代の課題曲から、「マーチ(行進曲)」の名曲をいくつかご紹介する。
1990年(第38回)C:マーチ「カタロニアの栄光」
木管の力強いイントロから始まる重厚なマーチは、かつての「行進曲」とも、華やかな「コンサートマーチ」とも違う、曲の持つ力強さ、独特の雰囲気が人気を呼び、課題曲出身のマーチとしては、1、2を争う名曲であり、今なお演奏され続けている。
作曲者の間宮芳生はどちらかというと合唱やオーケストラ、室内楽の作品のイメージが強いが、吹奏楽の作品はこの曲の他に2曲課題曲が委嘱されている。
1986年(第34回)C:吹奏楽のための序曲
1994年(第42回)Ⅰ:ベリーを摘んだらダンスにしよう
ベリーを摘んだらダンスにしようは私が中学生の時に課題曲で演奏した曲だが、譜面自体はそんなに難しくはないものの、音楽的表現の面で非常に難しかった記憶がある。
1988年(第36回)D:カーニバルのマーチ
マーチと言われればマーチだし、ポップス(サンバ)と言われればそうだとも言える、そんなハイブリッドな曲。
曲の構成はいわゆる「課題曲マーチ」そのものであるが、曲調は完全にサンバ。
トリオ(?)前のブリッジなんかは“シャカポコシャカポコピピッピ〜〜♪”とパーカッションが囃し立てる。
現在ではごくたまに見かける程度ではあるが、個人的にはポップスとマーチの間の子のようなこの曲にとても魅力を感じている
1992年(第40回)C:吹奏楽のための「クロス・バイ・マーチ」
巨匠、三善 晃による課題曲のマーチは現代的な手法で書かれており、恐らく、課題曲のマーチの中では最も難易度の高い曲なのではないだろうか。
初めてこの曲に出会ったのは中学生の時であったが、当時は何のこっちゃわからず、「変な曲やなぁ」程度にしか思ってなかったが、この曲に魅力を感じ始めたのは大人になってからだ。
今ではやってみたい課題曲の一つになっている。
この曲も現代でもたまに演奏され続けている名曲である。
1993年(第41回)Ⅱ:スター・パズル・マーチ
「スター・パズル」のタイトルの通り、星や宇宙にまつわる曲のモチーフがパズルのように散りばめられたマーチ。(この曲に限らず、ここに挙げられている曲はどれも“マーチ形式の曲”、と言った方がいいかもしれない。)
曲全体のベースとなっているモチーフは「きらきら星」。一聴すると「きらきら星変奏マーチ」のように聞こえるが、曲調が急に「スターウォーズ」になったり、オブリガードに「ムーンリバー」がちらついたり、。他にも「星に願いを」「火星」「スターダスト」「星のフラメンコ」と言った曲が「パズル」のように登場するのだ。
聴いていてもとても楽しい曲だし、演奏していてもとてもやりがいのあるカッコよさもあり、当年の課題曲では当然一番人気、今でもその人気は衰えず、演奏され続けている。
1995年(第43回)Ⅰ:行進曲「ラメセスⅡ世」
1994年の朝日作曲賞受賞曲として、1995年の課題曲Ⅰに採用。
この年の課題曲(マーチの年)はどれも良かったのだが、これまたかつての「カタロニアの栄光」にも似た、重厚でシンフォニックなマーチで、タイトルの「ラメセスⅡ世」のタイトルにふさわしい異国情緒あふれる曲調もあり、大変人気を博した曲である。
しかし難易度も高く、当時の全国レベルでもこの曲を完璧に演奏できた団体は数少なかったのではないだろうか。
作曲者の阿部勇一は1992年にも「吹奏楽のためのフューチュリズム」という曲で課題曲に採用されているが、この曲も大変美しい曲なので是非とも聴いてみてほしい。
1997年(第45回)Ⅲ:五月の風
日本の吹奏楽界に多大な影響を残した真島俊夫による課題曲のマーチ。
6/8拍子で、曲のタイトル通り爽やかなマーチ。
そんな中にも真島俊夫らしい響きの作り方、随所に散りばめられるモチーフのおしゃれさがたまらなく良い。なんでもこの曲、よく見てみると、スーザの「星条旗よ永遠なれ」と全く同じ構成になっているのだそうだ。(真島氏が意図したものかは不明。)
真島俊夫といえば作曲、編曲と幅広く活躍したが、最も有名な「宝島」は1987年のNSBの作品。同じく「オーメンズ・オブ・ラブ」はその前年の1986年で、これが氏のNSBデビュー。
そして氏の最初の課題曲である「波の見える風景」。これまた課題曲の枠を超えて今なお演奏され続ける名曲であるが、これはNSBデビュー前年の1985年。
真島俊夫はまさに課題曲でデビューし、飛躍した作曲家と言っても過言ではないのだ。
今回はここまで。
まだまだ課題曲については語れそう、というかまだまだ紹介していない名曲が沢山ある(ファンからすれば不十分。やり直しレベル)ので、続きますが、
次回はどうしようかな。。一旦別の話を挟もうか、、話題は尽きない。。。!
(文:@G)