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ジャズ名曲名盤紹介 ~これを聴け~       #1 Count Basie Orchestra

ここでは、東京ブラスオルケスター(通称「ブラオケ」)内のジャズ愛好家達による名盤や名曲を紹介していく。

0.はじめに

記念すべき1回目。

何を紹介しようか、何を紹介すべきか。
「Glen Miller!」
「いや、Bill Evansでしょー」
「Oscer Petersonだろ!」
「つべこべ言わずに、Keith Jarrett」
などなど、色々な声が聞こえてきそうだが、ここではCount Basie(and his Orchestra)(カウント・ベイシー)を取り上げたい。

なぜなら、筆者的にはCount Basieこそビッグバンドスタイルの王様で、4 Beat Swingの王様であるからだ。

どうしても「ジャズ=ピアノ、ベース、ドラムスのトリオ」というイメージが根強い。
せっかく管楽器の割合が多い吹奏楽団による紹介なので、今回は管楽器の多いビッグバンドの魅力、そしてCount Basieの魅力をお伝え出来ればと思う。

今回の記事は初めてビッグバンドに触れる人を想定した記事にしたので、前半戦が「ビッグバンド」そのものについての紹介、後半戦が「Count Basie」についての紹介である。
#1にしてだいぶボリューミーな記事になってしまったので、もしビッグバンドについて既にご存知なら、いきなり後半からスタートして頂いても構わない。

1.ビックバンドとは?

そもそも「ビッグバンド」とは何だろうか。

ビッグバンドはポピュラー音楽、特にジャズにおけるバンド形式の一つ。一般には大人数編成によるアンサンブル形態のバンド、あるいはこの形態で演奏されるジャズのジャンルのことを指す。前者はジャズ・オーケストラ、後者はビッグバンド・ジャズと表現をすることもある。
(Wikipedia 「ビッグバンド」より)
ビッグバンド(フルバンド)での演奏者の配置例
ビッグバンドは複数の種類の楽器を組み合わせて編成される。一般的なビッグバンド(特にスウィング・ジャズを演奏するビッグバンド)では楽器の種類によって大きくサックス、トランペット、トロンボーン、リズムの各セクションに分けられる。

このうちトランペットとトロンボーンを総称してブラスセクション(ブラス(真鍮)で作られることの多い金管楽器で構成されるため)、さらにブラスセクションとサックスセクションを総称してホーンセクションと呼ぶこともある。

総勢で17人前後(一部パートの省略や同一パートを複数人で演奏するなどで人数の上下がある)となるこの編成をフルバンドと称することが多い。
(同上)

上記の説明でほぼ説明し尽くされているが、改めて。

無題のプレゼンテーション (1)


・サックス 5本(フルートやクラリネットに持ち替えることも)
・トランペット 4本(フリューゲルホルンに持ち替えることも)
・トロンボーン 4本
・ピアノ
・ベース
・ドラム
・ギター
で構成されている。

サックスが基本5本だということ、サックスプレイヤーがフルートやクラリネットに持ち替える、ギターがいることは吹奏楽と大きく異なる点である。

また各パートの1stを"Lead"と呼び、2nd以降を”Side”と呼ぶ。
並び順も画像でご覧頂いた通り吹奏楽とは大きく異なり、真ん中に”Lead"が集う。
吹奏楽でいうパートリーダーに近い存在で、セクション内での吹き方やニュアンス、音楽の進め方は基本Leadに委ねられる。

更に、吹奏楽では1stに割り当てられることの多いソロ。ビッグバンドではソロを務めるソリストは”Lead”よりも、2ndのプレイヤーの方が多い。”Lead”は字義通り常にパートを引っ張っていくポジションだからかもしれない。

2. Count Basie Orchestraについて

さあ、ついにCount Basieについてのご紹介。
ピアニストである彼が率いたバンドがCount Basie Orchestraである。
彼のバンドのほとんどの曲は彼のピアノイントロから始まる。

リーダーなのに、あまりジャンジャン弾かないこのスタイルがカッコいい。
最低限の音とコンピングでどんな曲かを聴き手に伝えてしまう。

もう一つのかっこいい点は「ギター」。
「え?ギター鳴ってる?」と思った方もいるかもしれない。絵に描いたようなロックのギターとは異なるサウンドと奏法である。

耳を澄ませて聴いて頂くと、ベースと共に「ジャッ・ジャッ・ジャッ・ジャッ」とリズム良く刻まれるギターの音、通称「4つ切り」が聴こえてくるはずである。
Freddie Green(フレディ・グリーン)の演奏する「4つ切り」、これが最高なのである。
Swingの心地よさ、そしてベイシーサウンドを担っているのはギターなのかもしれない。

近年のビッグバンドではピアノやギターのいないバンドも見られるが、やっぱり欠かせない存在だなと思わせてくれる。

さて、他の曲も見ていこう。
最近のテレビを見ていると、BGMでBasieのナンバーが使われる機会が増えているように感じる。

某「すべらない話」や某ビールのCMで使われているのを耳にしたナンバー。

こんなテンポの速い曲だってお手のもの。

ビッグバンド経験者か、Basieを好きな人がTV業界に増えて来たのだろうか。個人的には嬉しい限りである。

忘れてはならない代表曲の一つがこの曲。”April in Paris”。
ブラスの華やかなオープニングから始まり、サックスのゴージャスなアンサンブル、のびのびとしたトロンボーンのソロ、楽しげなトランペットのソロそしてバンド全体のトゥッティへと続いていく。まさにビッグバンドスウィングの王道的曲である。
もちろん、「4つ切り」もはっきりと聴こえてくる。
面白いのは”One more time!”,”Let’s try one more once!”と叫び、エンディング(コーダ)をアンコールするところ。すっかりお馴染みになって、演奏される度に恒例のパターンとなっている。

一つだけ、かなりマニアックな話を。
トランペットソロ明けのサックスのメロディー(音源だと1:46~)では、なんとアルトサックスではなく、クラリネットがリードしているという珍しいシチュエーションが生まれている。
恐らく、アルトサックスのプレイヤーがクラリネットに持ち替えているのだろう。ただ、今後クラリネットのソロがあるわけでもなく、クラリネットの音色を求められるような雰囲気でもない。わざわざここだけクラリネットに持ち替える必要があったのだろうか。
木管プレイヤーの筆者が推測するに、アルトサックスの最高音に近いファ#(実音A)の音は、そもそも出しづらいし、かなり音程が取りづらい。現代のアルトサックスでこそHigh F#キーが付いているのでフラジオ音域にはならないが、昔の楽器だとついていない。なので、メロディーでフラジオ音域が使われるというかなりハードな状況になる。
一方クラリネットの場合、同じ実音Aは日常的に用いられる音域に含まれるので、音を出す/音程をコントロールするのに難しいことはない。
なので当時のプレイヤーはクラリネットを選択することで、技術的にも音程的にも自然にメロディーが進むようにしたのでは無いかなと思っている。
こういったマニアックな発見も、じっくり聴きこむことで気づくことである。ぜひ読者の皆さんのマニアックな発見も教えていただきたい。


3.今回の名盤の紹介。“April in Paris”

先程紹介した”Shiny Stockings”や”Dinner with friends”、そして”April in Paris”を収録したこのアルバム。

画像2


歴史的に言えば一度解散した後の”New Basie Band”としての初ヒットとなったアルバム。
初めての1枚にも相応しいし、ビッグバンドに詳しくなっても聞き応えのある1枚である。
“Coner Pocket”[2],”Manbo Inn”[9]など、ビッグバンドの定番曲も多く収録されている。

この記事に出てきた他のアルバムも紹介しておく。
ハマってきたのであれば是非聴いてみてもらいたい。
“Basie in London”

画像3


4.終わりに

記念すべき#1、如何だっただろうか。
とてもボリューミーな記事になってしまったが、この記事を通して少しでもビッグバンド、そしてCount Basieに興味を持って頂ければ幸いである。

吹奏楽の世界では”In the Mood”のGlen Millerや”Sing Sing Sing”のBenny Goodmanは有名であるが、Count Basieの名前はあまり耳にしない。
吹奏楽アレンジされた彼の曲も前述の2人のナンバーに比べたらかなり少ない。
吹奏楽の世界でも、Basieがもう少し注目されてもいいのではないかなと心のどこかで思っている。
ワクワクする曲は、吹奏楽の世界の外にもまだまだ沢山存在しているのだ。

吹奏楽やクラシック、POPSの世界にいて
「ジャズは聴いたことないな」とか、
「聴いてはみたいけど何から始めたらいいか分からない」という貴方に向けて、
「これを聴け」がスパイスになればこの上ない喜びである。

もっと語りあいたい!私も語りたい!と思った貴方、ぜひブラオケでお会いしましょう。

(文:もっちー)

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