100年先の東京は、どんなまちになっているのだろう
……未来を見据えたサステナブルなまちづくり
「東京ベイeSGプロジェクト」って何だ?
「自然」と「便利」は両立する?
小池都知事の記者会見などで、背景に書かれた「SusHi Tech Tokyo」の文字とロゴマークを目にしたことはありますか? 「あれは何だろう?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。
「SusHi Tech Tokyo(スシテックトウキョウ)」とは、「Sustainable High City Tech Tokyo」の頭文字をとったもの。最先端のテクノロジーや多彩なアイディアなどによって世界の都市に共通する課題を解決しながら、「サステナブル(持続可能)な新しい価値」を生み出していこうという考え方です。東京が、その先頭を走りながら世界の中で存在感を高めていくためのいわば合言葉が「SusHi Tech Tokyo」なのです。
実は、この「SusHi Tech Tokyo」が生まれる少し前から、東京のベイエリアを舞台にした壮大な計画がスタートしていました。臨海副都心や「海の森」エリアの広大なフィールドで始まっている「東京ベイeSGプロジェクト」。これは、50年先、100年先の東京を見据えながら、「自然の豊かさ」と「最先端技術による利便性」を両立させた持続可能なまちづくりを進めようとするものです。
このプロジェクトは、今後100年にわたる東京のまちの姿を考えるうえでとても重要です。水や緑が彩る自然を育みながら、最先端技術がもたらす「便利」や「経済性」をいかに獲得していくのかは、東京、日本のみならず、世界中の都市が抱える大きな課題です。都市と自然が共存し、さまざまな分野の最先端技術が集まり、それらを扱う職人技ともいえるノウハウが蓄積された東京だからこそ、世界の都市の先頭に立って、その課題解決の見本を示していきます。
民間と連携しながら、未来のまちの姿を見つける
現在、最先端技術の実装に取り組む「先行プロジェクト」が「海の森」エリアでスタートしています。浮体式太陽光発電、垂直軸型風力発電などの「最先端再生可能エネルギー」、空飛ぶクルマなどの「次世代モビリティ」、水質改善などの「環境改善・資源循環」の3つのテーマで、新しい技術の実証実験が進められています。どれも次世代の都市づくりには欠かせない技術です。
東京ベイeSGプロジェクトの理念に賛同する企業や団体、研究機関などは「東京ベイeSGパートナー」として、官民学連携のコミュニティを形成しています。都とパートナーが連携しながら、さまざまな情報発信や展示会・イベントの開催、パートナー同士の交流などが積極的に図られています。
環境技術などに関わる最先端技術は、未来のまちの形を左右する新たな成長分野です。だからこそ、同業他社との横のつながりや異業種間の交流による知恵やアイデアの交換が重要になります。そこから、思わぬ化学反応やブレークスルーのためのヒントが見つかるかもしれません。未来を見据えた壮大なプロジェクトは、パートナーの協力なくしては成し得ません。パートナーは現時点で既に168社(2023年4月現在)にのぼり、今後もさまざまな分野の企業の参加により、持続可能な都市づくりをともに進めていくことが期待されています。
未来を生きる子どもたちの知恵を借りよう
このプロジェクトは、企業の新たな成長を促すとともに、未来を担う子どもたちにベイエリアのまちづくりやサステナブルな社会への関心を高めるきっかけとしてもらうことも目指しています。
「地球は先祖から受け継いだものではない。子どもたちから借りたものだ」とは、『星の王子さま』で知られる作家サン・テグジュペリの言葉ですが(アメリカ先住民の言葉ともいわれます)、そもそも50年後、100年後の東京のまちは、今の子どもたちや、そのまた子どもたちが生きていく世界です。未来のまちづくりを考えるうえで、彼らに持続可能な都市のあり方を知ってもらい、自由な発想から生まれる知恵を借りるのは、きわめて大切なことです。
「SusHi Tech Tokyo 2024」で世界に発信する
こうした中、都は来年の5月に、世界のスタートアップや都市のリーダーとともにサステナブルな都市モデルを発信する国際的なイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」を開催します。東京ベイeSGプロジェクトが目指す未来のまちづくりを国内外へ広く示し、世界の都市と連携してサステナブルな社会の実現に向けたムーブメントを盛り上げることを目指しています。子どもたちにも広く参加してもらいながら、世界中の人々が未来の都市の姿を体感できる祭典とする予定です。
ここ東京から、グローバルな課題の解決に向けて、100年先を見据えた新たな都市像がモデルケースとして発信され始めています。ワクワクする未来をつくる長い旅に、これからも注目していきましょう。
(文・さくらい 伸)