見出し画像

食べる・遊ぶ・乗る・買う。「2050年の東京」を様々な視点から体感! SusHi Tech Tokyo2024ショーケースプログラム<前編>

さまざまな角度から未来の東京の姿をのぞき見る
シンボルプロムナード公園

世界に共通する都市課題を解決するための最先端テクノロジーやアイデアを発信する国際イベント「SusHi Tech Tokyo2024」。
フードやモビリティをはじめ幅広いジャンルで最先端の技術を紹介し、「2050年の東京」を体感できるショーケースプログラムは、全4会場で開催されました。

その一つであるシンボルプロムナード公園は、青海・有明エリアを全長約2kmの遊歩道で結ぶ広大な会場です。この会場のテーマは、「食を中心に、江戸から未来を楽しめる場」。江戸から続く伝統と、未来の東京をさまざまな視点から体感できるコンテンツが揃いました。

会場は、「FOOD」「MOBILITY」「MARKET」「PLAY」「ART」のエリアに分かれ、持続可能性や多様性といったサステナブルな未来を考えるきっかけを提示しました。

オープニングステージの様子


地球にやさしい“食のかたち”とは?
サステナブルな食が勢揃いした「FOOD」エリア

「FOOD」エリアでは、Z世代にも支持される「おいしい・ヘルシー・地球にやさしい」をキーワードにした、新しいフードスタイルを「Z品(ゼッピン)グルメ」として紹介。

環境負荷の少ない食材を新進気鋭のシェフが調理した数々の料理も提供され、ここでしか食べられない希少なコラボレーションで注目が集まりました。

Z品グルメの屋台が並ぶほか、キッチンカーなども多く出店

例えば、「陸上養殖サーモン握り寿司」

これは、丸紅株式会社(以下、丸紅)が提供した陸上養殖のアトランティックサーモン(※1)を、都内の「割烹 船生」が握ったものです。生サーモン握り、漬け握り、炙りサーモン握り、巻物の4種類が提供されました。

水産物は世界中で消費が拡大する傾向にあり、現在魚介類の海面養殖が盛んに行われています。サーモンも例外ではなく、海面で養殖されているものが主流となっていますが、海面養殖では、残餌や老廃物、養殖魚の流出による環境負荷が懸念されています。

そのような状況下、丸紅は陸上養殖が水産物をサステナブルかつ安定的に供給する一つの解決策と捉え、2022年4月に、パートナーであるProximar(プロキシマー)株式会社(以下、Proximar)が静岡県小山町で陸上養殖するアトランティックサーモンの国内独占販売権を取得しました。

Proximarの陸上養殖サーモン(※2)は、屋内で水をほぼ100%循環させて養殖をしているので水質汚染や養殖魚の流出といった環境への負荷が少なく、世界各地で問題となっている海水温度の上昇による影響も受けません

加えて、現在アトランティックサーモンはノルウェーからの輸入が多くを占めますが、日本国内で養殖できれば、空輸で生じる温室効果ガスの大幅な削減にもつながります。

これ以外にも、東京産の食材を使った地産地消を実践する料理、プラントベースの食材を使った料理、規格外野菜を使ったカレー、未利用魚を使ったハンバーガー、植物由来の原料のみでつくられたラーメン、代替ミルクによる植物性アイスクリームなど、地球環境への負荷の軽減につながるメニューや、さまざまな食の嗜好に対応したキッチンカーも並びました。

陸上養殖サーモン握り寿司

(※1)陸上養殖設備プロバイダーのAquaMaofがポーランドに所有するテスト工場で陸上養殖されたアトランティックサーモンを提供。Proximarも同社の設備を使用して養殖を行っている。
(※2)2024年9-10月に初出荷を予定。


自分にぴったり合った乗り物が探せる!?
さまざまなモビリティが行き交う未来を垣間見る

「MOBILITY」エリアの「miraiサーキット」では、一人ひとりのライフスタイルや身体の状況に応じて最適なモビリティを選択できる、都市での新しい移動のありかたが垣間見られました。

すでに世界中に愛好者がいる「セグウェイ」から、空気で膨らませて乗る人の体に合わせパーソナライズできる電動モビリティ「poimo(ポイモ)」、歩行者と同じくらいのゆっくりとした移動も、自転車程度の走行速度にも一台で対応できる「ストリーモ」、折り畳むことができる「タタメルバイク」など、さまざまなモビリティが集結。

miraiサーキットを走る様々なモビリティ

「ストリーモ」を開発した、株式会社ストリーモの森庸太朗代表取締役CEOは、「ストリーモS01JWは、歩行者として扱われる「移動用小型車」として日本で初めて型式認定を取得して認められた乗り物です。
歩いている人と同じくらいのゆっくりとした移動でもグラグラしたりせず、安定して乗ることができる乗り物は、実はあまり多くありません。
それが可能であり、また速く走ることもできて、さらに荷物も載せられます。誰もが気軽に乗れて、活用する場面はたくさんあると思います」と説明。

「miraiサーキット」は、いろいろなタイプの乗り物が都市空間を行き来するような未来の姿を見せてくれました。

株式会社ストリーモ代表取締役CEOの森さん


少し先の「カッコイイ」を具象化する
ファッションの最先端を体感できる
「ファッションミュージアム」

衣・食・住で廃棄されるものに目を向けて、そこに新たな価値を見出そうと試みたのが「MARKET」エリア。

特に目を引いたのが、斬新なリメイクが施された制服が置かれたブースで、学校を卒業すれば着ることがなくなる制服を、また着たくなるように変身させたアップサイクルを紹介しています。

「SusHi Tech Tokyoは2050年の東京を感じることがテーマなので、下北沢で人気の高いNOILLという古着屋さんに、2050年に制服がファッションとして扱われている未来を想定して、SusHi Tech Tokyoのためにつくってもらったアートピースです」と話すのは、MARKETエリアの「ファッションミュージアム」を監修した外所一石さん。

「古着の中でも、制服はファッションとして捉えられていないので、古着屋さんで扱われません。でも2050年になったら、それも変わるかもしれませんよね。武士が戦のために身につけていた甲冑を、現代の人が博物館などで目にして『カッコいい』と愛でるのと似た感覚にならないとも限らない。そんな近未来を想定したものになっています」。

2050年、「制服がファッション」となる未来を想定してつくられた制服

ファッションミュージアムには、環境を考えたブースがほかにも。
例えば、回収したペットボトルなどの再生プラスチックを合成繊維に変え、洋服の生地としてリサイクルしたフリースなどがありますが、そうした合成繊維を洗濯すると、少量のマイクロプラスチックがはがれて排水と一緒に流れ、海や環境を汚染することにつながるとも言われています。

このようなマイクロプラスチックが出ないように技術的に工夫を凝らしてできた素材を使って、有名ブランドとコラボレーションした商品を紹介するブースや、着なくなったTシャツの上に、2050年の東京をイメージしたデザインをプリントすることで古いTシャツを再生させるブースなどが並びました。

ファッションミュージアムの様子


技術の積み重ねが未来の発展に
つながることを教えてくれる
SusHi Tech Tokyo2024

「PLAY」エリアは、年齢や性別、運動能力にかかわらず、すべての人が楽しめるスポーツやモビリティ体験の場。2024年は、パリオリンピック・パラリンピックイヤーということもあり、パラアスリートを招いてのデモンストレーションやパラスポーツ体験が行われました。画面を通して見るよりも難度の高いプレイの数々に、子どもたちが目を見張りました。

ブラインドフットボールのデモンストレーションの様子

Hondaからは、「身体機能の拡張」を可能にする、ロボティクス研究から生まれた、ハンズフリーパーソナルモビリティ「UNI-ONE(ユニワン)」が登場。

着座した人が体重移動することによって進む方向が変えられるため両手が自由になるのが特長。また移動の際は座面が上がってハイポジションになるので、立っている人と目線がほぼ同じになりコミュニケーションがしやすくなることも、既存の車椅子とは異なるポイントです。

座面ポジションの切り替え時の動作が近未来的で、マンガやアニメーションに見られるロボットに乗り込む時のようなイメージになること、またコンパクトなスタイルや、体重移動で意のままに操ることができる面白さなどから、子どもたちはもちろん大人もこぞってチャレンジ。

歩行に困難を抱える人たちのみならず、多くの人がUNI-ONEに乗る未来が感じられました。

UNI-ONE体験の様子

シンボルプロムナード公園の会場には、所々に廃材を使った「廃材アート」作品を展示
ベンチや休憩スペース、廃材でつくられた躍動感あふれる原寸大の動物など、点在するアート作品を探して広い会場を散歩するだけでも楽しめました。

色々な廃材アートがシンボルプロムナード内に点在

——目を見張るようなテクノロジーを使った未来は、突然現れるのではなく、現在を積み重ねた先につながっている——
当たり前のことだけれど、見過ごしがちだったことに目を向ける良い機会が散りばめられたシンボルプロムナード公園での体験でした。

より良い未来を手にするために必要なのは、未来をどうしたいのかという想像力と、そのために毎日をいかに過ごすのかという意識づけが必要。明るい未来を手にするために、私たちは今何ができるか、何をすべきかを考える良いきっかけとなったのではないでしょうか。

(文・柳澤美帆)