CEATEC 2024に出展!デジタル・イノベーションが導く一歩先の明日へ
最先端AI技術にも注目が集まった
CEATEC 2024
国内最大級のデジタル・イノベーションの展示会「CEATEC 2024」が2024年10月14日から17日まで、千葉・幕張メッセで開催されました。来場者数は前年比25.8%増の112,014人。最先端のデジタル機器や技術が勢ぞろいし、中でも今年はAIを活用した新たな技術にも大きな注目が集まりました。
会場の一角に設けられた東京都政策企画局の「SusHi Tech Tokyo」のブースには「東京ベイeSGプロジェクト」のパートナー企業が出展し、ユニークな最先端技術を披露しました。
わずかな光で発電・遮熱する次世代ガラス
スマートシティでの活用も視野に
inQs株式会社は、室内光や月明りなどのわずかな光でも高効率に発電する「光発電素子」を世界で初めて開発。これを用いた無色透明光発電素子技術による「SQPV(エスキューピーブイ)ガラス」は、透明なガラスでありながら屋内環境の微量な光でも発電し、かつ遮熱効果も備えた画期的な技術です。
2024年1月に米ラスベガスで開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES2024」で「ベスト・イノベーション・アワード」を受賞するなど、世界からも注目されています。また、機能性とデザイン性が評価され、「2024年度グッドデザイン賞」も受賞しました。
「CEATEC 2024」では、inQsとNTTアドバンステクノロジ株式会社が共同開発した発電性能と品質を大幅に向上させた新バージョン「SQPVガラスV2版」を展示。
「従来のSQPVガラスは、30cm角のガラス1枚を1セルとしていましたが、これを11cm×6cmでマルチセル化し、材質も改良することで、30㎝角サイズ全体での出力値を大幅に向上させることができました」と語るのはinQs取締役・海外事業担当のライク・ウートンさん。
V2版は、1㎡あたり100Wの光を照射した場合の発電性能は50mW、一般的な5mm程度の透明ガラスは、約80~90%の光を透過し、発電性能を持つこのV2版ガラスでは56%以上を実現しています。
NTTアドバンステクノロジは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーによる循環型社会の実現に向けた取組の一つとして、2020年2月にinQsとSQPVガラスの国内独占販売契約を締結。
V2版の量産準備を進めるとともに、さまざまな場面での適用に向けた試作品の提供を開始しました。今後は、V2版の安定供給に向けた体制を整えつつ、屋内利用だけでなく屋外利用に向けたさらなる性能・品質の向上、遮熱・断熱性の評価にも取組みながら、SQPVガラスの適用領域を拡大していくといいます。
「品質・性能が向上したSQPVガラスV2は、建物や自動車の窓、外壁など、都市空間のさまざまな場所に使うことが想定され、デジタル技術を活用し、都市インフラの利便性を図るスマートシティの構築にも貢献できると考えています」(ウートンさん)
わずかな光でも発電できるため、たとえば周囲に街灯のないバス停などでのデジタルサイネージの設置、災害時の電源活用など、用途は多岐に渡ると考えられます。見えない光をも電気に変える最先端のガラスが、私たちの街と暮らしを照らす日も遠くなさそうです。
人の脳波を解析し
音楽の力で最適な状態に
デジタル技術を使って人間の脳の活動をモニタリングし、脳を刺激することで治療や能力向上を促進する技術を指すニューロテクノロジー(Neurotechnology)(※1)。VIE株式会社は、このニューロテクノロジーとエンターテインメントを融合させることで、ストレスフルな現代社会における脳神経科学とデジタル技術の新たな可能性を追求しています。パーパスとしては、「ニューロテクノロジーとエンターテイメントの力で、感性に満ちた豊かな社会をつくる。」を掲げています。
VIEのブースには、同社が独自に設計開発したイヤホン型脳波計「VIE Zone」と脳波を可視化するモニターが設置されていました。イヤホンを耳に装着すると、脳波の状態がモニターにグラフで表示されます。
「このイヤホンを装着することで、脳波をはじめさまざまな生体情報を高精度に取得し、ユーザー専用の脳波AIモデルを作成することができます。脳波の中のある帯域を増強・減退させるために科学的な実証によってつくられた音楽『ニューロミュージック』を流すことで脳を最適な状態に導くことが可能です」とVIE取締役COOの楠富さんは説明します。ニューロミュージックとは、シータ波やガンマ波などを増強する刺激音を用いてつくられた音楽で、認知機能やリラクゼーション効果の向上に関係しているとのこと。
同社が配信する脳チューニング音楽アプリ「VIE Tunes」は、SLEEP、CHILL、RELAX、FOCUS、ZONEのモードから「自分がなりたい脳の状態」を選択することができ、集中やリラックスを促すことで勉強やデスクワークをはかどらせる効果が期待できます。また、起床時間や就寝時間を設定すれば、アプリが自動でニューロミュージックを再生し、音によって脳の状態を切り替えることが可能になるといいます。
さらに、コクヨ株式会社、東京建物株式会社と、音楽で働きやすい空間を提供する可動式ブース「VIE Pod」を共同開発。ニューロミュージックと映像コンテンツをブース内に流すことで、働く人たちの生産性向上に寄与する付加価値を持った新たなワークスタイルを提案しています(現在、東京建物のオフィスビルやコクヨショールームなどで設置中)。
「現時点で私たちの製品やサービスはエンターテインメントの要素も強いですが、海外ではニューロテクノロジーによって認知症や統合失調症などの予防や治療に効果が認められるという論文が発表されていることもあり、今後は医療や介護など、ヘルスケアやメンタルケアの領域での活用にも取組んでいきたいと考えています」(楠富さん)
脳神経科学と音楽を組み合わせた新たな試みによって、社会問題化する認知症など、さまざまな脳の病の予防や治療に役立つ未来に期待が高まります。
(※1)ニューロテクノロジーとは脳と神経系に関する科学と技術を組み合わせた分野で、人間の脳の働きを測定、理解、制御、または強化するための技術を指します。
ゴミをデータ可視化しながら資源化する
分散型アップサイクルサービス
いま、産業廃棄物の処理コストは毎年5%以上も上昇しているといわれ、自治体や事業者にとって大きな負担となっています。例えば100床以上の病院のゴミの平均処理コストは年間およそ1000万円。ゴミ処理に関わるコストの削減と業務の効率化は、全国の自治体や事業者にとって大きな課題です。
「私たちは、自治体や事業者のゴミ処理に関わるコストを下げるため、ゴミを資源に変える小型のアップサイクルプラントを開発しました。ゴミを運ばず、燃やさず、資源化する分散型のインフラサービスによって持続可能な未来をつくるための新しいアプローチを提案しています」と語るのは、株式会社JOYCLE代表取締役社長の小柳裕太郎さん。
同社が開発した「JOYCLE BOX」は、AI炭化機能を実装予定の小型のゴミ資源化装置です。ゴミを燃やさずに有機物を分解して容量を100分の1から300分の1まで減容し、バイオ石炭やセラミック灰などの資源に換えることができます。ゴミ処理のコストを大幅に削減でき、匂いや音もしないため周囲の環境にやさしいというメリットもあります。
「JOYCLE BOXは車1台分のスペースで設置が可能です。産業廃棄物業者や収集運搬業者に提供し、設置してもらうことで、中間・最終処分場にゴミを運搬することなくその場で処理ができるため、輸送コストが大幅に削減できます。広域連携という形で遠方のゴミ処理施設を共同利用している自治体にとって、コストだけでなく、長い距離を運搬することで発生するCO2の削減にもつながります。さらに、全国で課題になっているドライバーの高齢化にともなう人手不足の解消にも貢献できると考えます」(小柳さん)
また、同社が提供するソリューション「JOYCLE BOAD」は、JOYCLE BOXによるゴミの資源化データを可視化することによって、ゴミ処理の費用対効果や環境貢献度を明確にすることが可能です。遠隔でも監視ができ、安全性を確保しながらオペレーションの簡素化を実現。環境効果を対外的にアピールできるだけでなく、CO2削減量に応じてカーボンクレジットの生成も可能になります(*条件により可否・効果度は異なります)。
現在、同社の分散型ゴミ処理サービスは、離島の多い沖縄県やゴミ処理施設への広域運搬が課題となっている北海道などで実証を行っていますが、今後は山間部の観光地など、人が集まる一方でゴミ処理施設の数が不足している地域での活用も視野に入れていくとのこと。例えば、東京都の離島などでの導入も想定されるといいます。ゴミを資源に換える小型アップサイクルが日常の光景になる日もそう遠くなさそうです。
(文・さくらい伸)
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