「2050年の東京の暮らし」とは?「空飛ぶクルマ」の都内初飛行もレポート! SusHi Tech Tokyo2024 ショーケースプログラム<後編>
空飛ぶクルマが東京の空を初フライト!
観客からも歓声
世界共通の都市課題解決に向けて東京からイノベーションを創出し、未来の都市モデルを発信する国際イベント「SusHi Tech Tokyo2024」。東京ベイエリアを舞台に4月末から5月末まで約1カ月にわたって開催され、大盛況のうちに幕を閉じました。
会期中、大きな話題を集めたのが空飛ぶクルマの都内初飛行でした。
空飛ぶクルマは、電動垂直離着陸機(electric Vertical Take-off and landing=略称eVTOL)と呼ばれ、従来の自動車でも航空機でもヘリコプターでもない新しい概念の乗り物です。100年に1度の移動革命ともいわれ、各国で実用化に向けた開発が急速に進んでいます。
バッテリーに蓄電された、温室効果ガスを排出しない電気エネルギーで飛行し、滑走路不要な垂直での離着陸により騒音も抑えることが出来ます。飛行時も静かなこの機体は、都市の渋滞緩和や、被災地・過疎地の輸送手段としての活用など、さまざまな社会課題の解決に貢献すると考えられています。
5月17日、空飛ぶクルマの都内初飛行の会場となった江東区の東京ビッグサイト臨時会場。多くの報道陣や観客を小池百合子東京都知事と空飛ぶクルマを運用する丸紅株式会社 執行役員 航空・船舶本部長の岡﨑徹さんらが出迎えました。
まず、小池都知事が、「今日、東京の空を初めて空飛ぶクルマが飛行します。お天気や風を心配していましたが、これほど絶好の日和はないのではないでしょうか。あの手塚治虫先生が70年以上前に想像したワクワクする未来が今、現実のものとなります。
空飛ぶクルマが当たり前のように東京の空を飛んでいる、そんな未来の東京の姿を想像しながらご覧いただけたらと思います。最先端の技術を多くの方に体感していただき、明るい未来への期待を高めていただきたいと思います」と、空飛ぶクルマ都内初飛行への期待を込めてあいさつ。
機体は、米国のLIFT AIRCRAFT(リフト・エアクラフト)が開発した「HEXA(ヘクサ)」。全長約4.5m、高さ約2.6mの機体に操縦士1名が乗り込み、18枚のプロペラが回転して高さ8~10mまで浮上します。
「HEXA は、1時間ほどの訓練・講習を受ければ、レバー1つで誰でも操縦できるのが特徴です。米国では2023年から既に一般の方を対象にした体験飛行を開始しています。操縦は極めて簡単で、非常に安定感、安心感があると聞いております」(丸紅・岡﨑さん)
元・アメリカ空軍のパイロットが操縦席に乗り込み、機体が静かに浮上すると、観客から思わず歓声が上がります。機体はそのまま上空10m付近を旋回し、海の上も飛行しながら再び地上へ。約10分間の東京上空初フライトは、無事に成功を遂げました。
岡﨑さんは、「現在、官民が連携して航空法上の課題に取り組んでいるところです。新しい空の移動が、多くの人々にとって安全で快適、身近なものになるよう社会実装を進めていきます」と語り、小池知事も「空飛ぶクルマの初フライトを目の前で見せていただきました。将来、私たちの身近な移動手段となる可能性を、皆さまもお感じになったのではないでしょうか。私も早く乗ってみたいなと思いました」と感想を述べていました。
空飛ぶクルマが東京の空を飛び交う日も、そう遠くないと思わせる東京初飛行でした。
「体験・共感を生む発信の拠点」
有明アリーナのショーケースプログラムが見せた未来
この5月17日は、「SusHi Tech Tokyo2024」において4つの会場で展開されたショーケースプログラムの1つ、有明アリーナ会場が開幕した日でもありました。
会場のコンセプトは、「『2050年の東京の暮らし』を体験し、未来の東京の姿への共感の輪を広げ、未来への推進力にする」。
会場は、MOVE、WORK、PLAY、LIVE、SHOP、LEARNのエリアに分かれ、65以上の企業・団体の協力による33のコンテンツが揃いました。エントランスに入ると、メインアリーナまで約40mにわたって続く「未来の新聞」をイメージした没入感のあるLED映像が来場者を導き、期待感を高めます。
「ラストワンマイルから宇宙旅行まで」をコンセプトにした「未来のモビリティ」が体験できるMOVEエリアで、まず目を引くのがSFアニメから飛び出してきたかのような巨大ロボット「ARCHAX(アーカックス)」です。
電気自動車用のバッテリーで駆動し、内部に乗り込んだパイロットが2本のレバー・2台のペダル・タッチパネルで操作することで全身全身26の関節が自由に動かせ、10km/hで走行も可能。前足を垂直にして立ち上がると全高は4.5mにもなります。将来的には複数台の巨大ロボットがサバイバルゲームを繰り広げるエンターテインメントを目指して開発しているといいます。
MOVEエリアで順番待ちの行列ができていたのは「宇宙エレベーター体験」。株式会社大林組が2012年に発表した「宇宙エレベーター建設構想」は、赤道上の海面に浮かべた発着場から上空96,000kmまでケーブルでつなぐ壮大なプロジェクトで、その途中の36,000kmに宇宙観光の拠点「静止軌道ステーション」があります。
軽さと強度を兼ね備えたカーボンナノチューブをケーブルに使うことで、地球側の重力と宇宙側の遠心力のバランスを取りながらピンと張る状態を維持。2050年を目標に静岡大学などと共同して国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の船外プラットフォームを使ったケーブルの耐久実験が進められているといいます。
この展示では、宇宙エレベーターの実現を支えるケーブル技術をわかりやすく解説し、VRシアター「MetaWalkers(メタウォーカーズ)」の360度映像と臨場感のある振動装置によって「2050年宇宙の旅」を模擬体験することができました。
自動運転タクシーが
東京の街を走る?
同じくMOVEエリアでは、数々の未来の生活を支える新たな移動手段を体感できました。自動運転タクシーサービス専用車両「Cruise Origin(クルーズ・オリジン)」 は、運転席がなく完全無人で自動走行する未来のタクシーです。
対面6人乗りの広々とした車内空間を実現し、公共交通機関のような安心感や快適性を備えつつ、乗客のプライベートを確保することができます。
「クルーズ・オリジンは、GM、Cruise、Hondaの3社が共同開発した車両で、運転席がないことで確保された広々とした車内空間で、いかに豊かな移動時間を過ごしてもらうのかがコンセプト。
専用のアプリで車両を呼ぶところから目的地に到着するまで、全自動での走行が可能です。車両には自動運転用のコンピュータを搭載し、車体の4隅を中心に数多くのセンサーを設置して歩行者や対向車などの外部情報を読み取りながら安全に走行します。
万が一の場合は車両が自動で安全な場所で停止し、遠隔で監視しているオペレーターと現場に駆けつけるオペレーターが連携をしてお客様を安全に誘導します」とホンダモビリティソリューションズ株式会社の田口裕大さんは説明します。
「技術的には既に完成しており、米国の大都市では既に街の中で自動運転タクシーが実用化されています。2026年の初頭には東京都心部でサービスを開始する予定で、まずは数十台から始め、500台規模の運用を見込んでいます。今後、世の中に広めていく上で、他のドライバーや走行ルート付近の住民などに本サービスを理解してもらうなど、いかに自動運転に対する社会的な認知度を高められるのかが普及のカギになります」(田口さん)
AR技術を駆使した
未来のスポーツも
様々な違いを持った人々、誰もが参加できる「未来の憩いの場」がテーマのPLAYエリアで人気を博していたのは、AR技術と動作を感知するモーションセンシング技術を活用し、エナジーボールと呼ばれる球を自らの手で放ち戦い合うARスポーツ「HADO(ハドー)」のデモンストレーション。
頭にヘッドマウントディスプレイ、手首にアームセンサーを装着したプレーヤーが熱いバトルを繰り広げる次世代スポーツです。
「プレーヤーは、シールドで自身を防御しながらエナジーボールと呼ばれる球を投げ合って闘います。筋力や身体能力のある人が有利ではないので、子どもがアスリートに勝つこともあり得えるところが醍醐味です。
既に39カ国で展開され、国際大会も開催されています。私たちのビジョンは、日本発のHADOをサッカーや野球のようなメジャースポーツとして広めていくこと。エナジーボールをさまざまなデザインにカスタムすることが可能なので、今後は企業や自治体などとコラボをしたプロモーションにもつなげていければと考えています」と超人スポーツプロジェクトの下田直人さんは言います。
有明アリーナのショーケースプログラムでは、最先端の技術やアイデアに彩られた未来の生活を体験することで、「未来の東京の姿」がより身近に、リアルなものとして感じられました。
これらが日常の風景になることを想像すると今から心が躍ります。と同時に、「未来のために私たちに何ができるのか」を問いかけられる思いがしました。
(文・さくらい伸)