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奇才―江戸絵画の冒険者たち―(6/21まで)@江戸東京博物館にいってきました。

奇才というキーワードでまとめられた江戸時代に全国で活躍した絵師、活躍しなかった絵師を35人も集めた展覧会です。若冲、北斎、蕭白、応挙、光琳など説明する必要がない絵師から、芳中、耳鳥斎など、ちゃんと見て見たかった絵師、聞いたことがなかった絵師までの幅広い展示内容でした。

その中から、見て欲しい絵師8人を選んでみました。おそらく展示順かと思いますが、感想をつらつらと書いてきます。

作品リスト

京都代表

曾我蕭白(そが しょうはく)《楼閣山水図屛風》
蕭白というと《群仙図屛風》のような水墨画と原色が混在した独特の奇想と呼ばれる絵を思い浮かべるかと思うのですが、今回は景観図。緻密で、小さく人物も登場していて、現代の池田学のような緻密画に繋がっている気がしました。単眼鏡で人物の動きを見てみると没入感がますます増します。

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大阪代表

耳鳥斎(にちょうさい)《福禄寿》
知るところの限り、このような画風は見たことがありませんでした。耳鳥斎でググってもらうと時代を超えたゆるキャラが表示されます。今回も《福禄寿》の絵の鹿の絵が秀逸。とにかく、このツノといい、この表情といい、このゆるい絵を江戸時代に描いていたということを褒めてあげたい。

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墨江武禅(すみのえ ぶぜん)《月下山水図》
一見、オーソドックスな水墨の景観図です。ササッと活きた輪郭線で描いていく山水画も好きなのですが、この絵は輪郭線がしっかり描かれてますし、技術的にいうと外側をぼかすグラデみたいな効果を出す外隈が使われてます。その効果もあってか、全体が不思議な存在感を醸し出していました。

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江戸代表

狩野一信(かのう かずのぶ)《五百羅漢図第二十三幅 六道 地獄》
増上寺所蔵の100幅からなる狩野一信の五百羅漢図の一部。この完成度のまま100幅描いただけで驚きです。羅漢が放つビーム、逆さに落ちてくる罪人を大きいフォークで沈めるところ、棒にすがろうとしている罪人。羅漢たちと罪人の対比の臨場感と見どころがたくさんでした。

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水戸代表

林十江(はやし じっこう)《花魁・遣手婆図》
奇才の絵師が集まってる中で、一際、画風が変わってる絵を見つけました。ずる賢い感じの横顔のやり手婆、花魁の勝ち気な表情、見落としてはいけないのは、この人はただものではないと思わせる着物の線の描写。なぜかお婆さんの方は、鴨居玲の画風を思い出しました。

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尾張代表

田中訥言(たなか とつげん)《日月図屛風》
銀座の画廊さんにあっても、全然違和感がないミニマルアートです。全体を覆う金箔の上に、左隻は遠くに流れる川の上の下弦の月、右隻には荒々しい波の波間から朝日。もっと広い部屋で椅子に座りながら、ぼーっとしながら見たかったですね。山種か泉屋あたりで。画像は公式サイトへリンクです。

《左隻》《右隻》

高知代表

絵金(えきん)《伊達競阿国戯場 累》
劇画です。鳥獣戯画が漫画のルーツなら、こちらは劇画のルーツですね。歌舞伎芝居の一場面を描いているこの絵は、生身の人間が演じる舞台では表現仕切れないだろう箇所を補完していて、聞きしに勝るシーンの躍動感を描いてます。ちなみに名前の絵金、絵師の金蔵、略して絵金だそうで。

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鳥取・長崎代表

片山楊谷(かたやま ようこく)《竹虎図屛風》
最後のパートで印象に残った虎の絵です。部分なんでアップですが、全体的に体毛が長いです。虎を想像して猫を描いたと想像され、おそらく、シャーと威嚇しているところの場面かと思うのですが、虎の怖さはなく、可愛いです。虎描きの名手と呼ばれていた楊谷の初期の作品だそうです。

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まとめ

前回、江戸博でみた大浮世絵展のような大御所(歌麿・写楽・広重・北斎・国芳)を集めた展覧会もいいですが、知らなかった絵師の中で、お気に入りを見つけるのも展覧会めぐりの醍醐味だったりします。そういう意味では、35人の奇才が揃ったこの展覧会は千載一遇のチャンスです。東京開催は残り1週間を切りましたが、全ての展示を見たい方は、山口か大阪での巡回を見てくださいませ。

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。