【過去ログ2017】ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで@bunkamuraザ・ミュージアムにいってきました。
ボス派からブリューゲル(父)へ、象徴派、クノップフやアンソール、表現主義からマグリット、デルヴォーあたりのシュルリアリスムまでのベルギー(フランドル)におけるアカデミックではない流れを俯瞰できる展覧会となってました。
ヒエロニムス・ボス&ボス工房&ボス派
目玉はやはりヒエロニムス・ボス(工房)の《トゥヌグダルスの幻視》。
ヒエロニムス・ボス工房《トゥヌグダルスの幻視》
ミラノやフィレンツェでルネサンスの画家たちが、マジメに美を追求している時に、ボスはそんなことを知ってか知らずか奇想天外な摩訶不思議な絵をせっせと描いていたようです。もちろんそれぞれの絵には意味があって、戒め的な意味合いが多く、後のボスの模倣者やポストボス派などブリューゲル(父)も追随し、ベルギー絵画のひとつの潮流になってきます。画面の至るところでいろんなストーリーが展開していて、日本で言うと洛中洛外図屏風的なイメージなのかなと思いました。今回出展しているボスはもちろんですが、ヤン・マンデインやピーテル・ハイス《聖アントニウスの誘惑》などのボス派のも本物に劣らず見応えのあるカラー作品でした。
ピーテル・ハイス《聖アントニウスの誘惑》
ボスの模倣者がでてきたり、ポストボス派としてブリューゲルのモノクロ版画に繋がっていく系譜は、このちょっと前に開催されていた《バベルの塔展》でのその流れと一緒でした。見てて思ったのが陰影を誇張した画風やそのグロテスクな題材は現代の梅図かずおに繋がっているのかなって。
象徴派、表現主義〜シュルリアリスムの章
フェルナン・クノップフは美しいですね。《裸体習作》はタイトル通り裸体の女性が横たわっているのですが、質感がいい感じです。今回、クノップフの油彩がなかったのが残念でした。
フェルナン・クノップフ《裸体習作》
フェリシアン・ロップスもなかなかでした。《聖アントニウスの誘惑》も本展では、複数の画家がこのテーマに取り組む中、誘惑の仕方が強烈、おののき具合いもいいですね。他の画家の《聖アントニウスの誘惑》が地味に誘惑してるのと見比べるとおもしろいです。ロップスはモノクロの版画の連作もよかったです。
フェリシアン・ロップス《聖アントニウスの誘惑》
静を感じさせる作品としては、ウイリアム・ドグーヴ・ド・ヌンクの《運河》。硝子の割れた廃墟の前の運河。無人のボートが停泊してます。なんか印象的な絵でずっと見てました。
ウイリアム・ドグーヴ・ド・ヌンク《運河》
見逃してはいけないのが、ジェームズ・アンソール。最近まで使われていた紙幣の肖像画に使われていたほどの近代ベルギーの国民的な画家。本作は1889年に制作された《キリストのブリュッセル入城》を前にしてお気に入りのオルガンの前に座っているアンソール本人。アンソールと言えばドクロをモチーフに使ったキモかわ系の画風が有名なのですが、本作は穏やかなな作品です。
ジェームズ・アンソール《オルガンに向かう》
そして、デルヴォーとマグリット。個人的にはマグリットの方が好きなのですが、今回来ていたのは見たことある作品が多かったので、あまり新鮮な感じはなかったですね。デルヴォーの方はエロチックなんですけど、そんなにエロチックを感じさせない。あいかわらずシュールな不思議な感じの絵でした。ちなみにシュールという意味は現実でありそうでなさそうな感じという認識です。
まとめ
今回は奇想(ボス関連)だけで終らずベルギーの象徴派も展示されていますが、個人的には美や内面を追求した象徴派と奇想という言葉で繋げるのは少し無理があるのかなって思ったりもしました。とは言え、ボス(工房)とボス派とポストボス、ロップス、クノップフ、アンソール、そしてベルギー象徴主義をまとめて見れるのは、お得感はあるかも。