「負ける」っていうこと
先日大きな負けを経験しました。
それは僕自身が負けたわけではありません。
現在高校三年生の僕の弟は小学生のころからずっとサッカーに打ち込んでいて、高校は県外の強豪校に入学、紆余曲折ありながらも(紆余曲折っていうのはあまりに本人に失礼かもしれませんがここでは割愛)最後の全国大会でスタメンを勝ち取りました。これが先日のこと。
試合は膠着状態が続き、最後の最後、ほんのわずかな、0.1歩くらいの差で、負けてしまいました。
その時僕が考えたのは、もちろん弟のこともそうだったのですがそれよりもずっと大きかったのは両親のことでした。
小中と大きな挫折もなく強豪チームで活躍をし、高校ではちょっといろいろあったけどどこに行っても評価され、スポーツが大好きで真摯に取り組み結果を残し続ける弟を両親はずっと応援し続けていました。毎回応援に行くし、お金の面でもたくさんのサポートをし、その姿はとてもたのしそうで。帰るたびに弟の話をして。きっと本人たちにとって大きな大きな誇りで、楽しみだったのだと思います。
そんな弟の高校サッカーは割とあっさり終わりました。
僕は両親にかける言葉が見当たらず、しばらくグラウンドを見続けていましたが、ここで一言かけるのが長男の役目だろうと意を決して隣の母を見ると、母もまた同じようにじっとグラウンドを見つめていました。
その表情は悲しみとも悔しさとも諦めとも取れず、この現実を飲み込むために試行錯誤しているような、それともこれまでのグラウンドでの弟の姿を投影しているかのような、よくわからない遠い遠い目をしていました。
僕はそこに入り込めなくて、何も言えなくなって、また一人でじっとグラウンドを見ていました。
その時思いました。あぁ、負けって一人のものではないんだなぁ、って。
自分が負けるだけならまだいい、けどそこには自分を見続けてくれている人がいて、懸けてくれている人がいて一緒に戦ってくれている人がいて、たった一回負けるだけで、激情の深いところに閉じ込めてしまうような、こんな顔をさせてしまうんだなぁって。苦しいのは自分だけじゃないんだって。
当たり前のようで、大事な時に忘れてしまいがちです。
だから僕は、負けたくないなぁって思いました。
誰にもこんな顔させたくないなぁって思いました。
けど勝負には必ず敗者がいます。
だから勝ち続けようと思います。
負けたくないなあ。
弟、お疲れ様。
もう負けるなよ。あんな顔させるなよ。
でも疲れたろうから、ちょっと休んだっていいぞ。
今度は俺が勝ち続ける。