環境負荷の少ない水道事業を目指して(SDGsの実現への貢献) ~水道局機械職の仕事~
はじめに
みなさんは、水道事業の環境への取組をご存じでしょうか。
水道事業は、地球が育んだ貴重かつ限りある水資源を原料に水道水をつくり、みなさんにお届けする事業であることから、地球環境と極めて深い関わりがあります。水をつくり届ける過程では、都内の使用電力量の約1%に相当する年間約8億kWhという多量のエネルギーを消費しています。
東京都水道局では、環境負荷低減の取組を行っています。このような仕事は事務職が行うと思われがちですが、実は機械職や電気職などの設備系職員が事務職と協力して行っています。今回は、私が所属する総務部企画調整課(環境・エネルギー施策担当)の業務についてご紹介します。
水道局の機械職について
水道水をつくるためには、まず川から水を浄水場へ送ります。川の水を安心して飲むことができる水道水にするため、浄水場で、沈殿やろ過、消毒などの浄水処理を行います。より安全でおいしい水道水をつくるため、原水の水質に応じて、オゾン及び生物活性炭による高度浄水処理も行っています。浄水処理された水道水は、浄水場から各地域の給水所に送られたのち、ポンプで圧送し、みなさんの家までお届けしています。
このように水道局はポンプやオゾン発生器など多くの設備を有しています。これら設備の設計や工事監理、点検・補修などの維持管理に加えて、企画立案や計画策定まで幅広い分野で機械職の職員が活躍しています。私の所属する部署では水道局の環境施策の取りまとめ部署として、環境施策に関する企画立案や計画策定、対外調整を行っています。
水道事業と環境
近年、気候変動の影響が深刻化し、世界中で大きな問題となっています。課題解決に向け、地球温暖化の原因となる温室効果ガス排出量の抑制が求められています。水道局は先ほどお伝えしたとおり、安全でおいしい水道水をつくり届けるために多くの電力を使用していることから、年間約40万トンもの温室効果ガス(CO2)を排出しています。
東京都では、2030年にCO2排出量を2000年の半分にする「カーボンハーフ」を目指しています。水道局でも、脱炭素社会の実現に貢献するためCO2排出量の削減に向けた取組を実施しています。
企画調整課(環境・エネルギー施策担当)の仕事
◎環境5か年計画策定・運用
環境計画は、事業活動に伴う環境負荷の低減に向けて施策を推進するため、環境に対する取組を総合的に計画化したものです。
他の自治体に先駆け2004年度から環境計画を定め、温室効果ガスの削減や水源林機能の維持向上の取組を行ってきました。現行の計画である「環境5か年計画2020-2024」では、新たにSDGsの考え方を取り入れ、4つの基本方針のもと、37の具体的な取組事項を設定し、環境負荷低減に取り組んでいます。
本年度が計画の最終年であることから、現在は、次期環境計画の改定作業を行っています。今後5年間の具体的な取組を決めていく作業になるので、内容の検討や関連部署との調整、都の目指す姿との整合性を図るなど、やることは多いですが、水道局の方向性に自分の考えが反映されるため、とてもやりがいがあります。
一例として、現環境計画に掲げた、CO2削減に向けた具体的な取組について紹介します。
省エネ型ポンプ設備の導入
浄水場や給水所等に設置されているポンプ設備は、大きな電力を消費します。そこで、ポンプ設備を新設・更新する際には、ポンプの回転数制御に用いる装置を液体抵抗器から低速回転域においてエネルギー損失が少ないインバータ装置等へ更新し、エネルギーの効率化を図っています。
太陽光発電設備の導入
水道局では、ろ過池や配水池の上部空間などを有効活用し、太陽光発電設備を可能な限り設置してきました。これまでに設置した太陽光発電設備は、浄水場や給水所など25施設にのぼり、2023年度末時点で合計9,676kWに達しています。
小水力発電設備の導入
水道局では、貯水池と浄水場との高低差や、給水所の配水池入口の余剰圧力を活用し、浄水場や給水所の7施設に、2023年度末時点で合計2,281kWの小水力発電設備を設置しています。昼間のみ発電する太陽光発電に対し、小水力発電は、昼夜を通して発電することができます。
いま挙げた3つは従来から継続した取組です。新しい取組については検討段階ですのでまだ言えませんが、年度末に発行する新環境計画で明らかにしますので、ご期待ください!
◎環境報告書の発行
環境計画に掲げた取組の実績を環境報告書という形で毎年度報告しています。施設の整備状況や再エネの発電実績、リサイクルの実績などについて、コラムを交えながら作成しています。11月頃に毎年発行していますので、ぜひご覧ください!
【環境5か年計画】
【環境報告書】
◎エネルギー関連方針の策定
CO2排出量の削減の計画について説明してきましたが、計画を作る前に、どのように進めていくべきなのか(水道局の方針)を決めています。例えば、太陽光発電設備を導入するとCO2が削減でき、発電分の電気代は必要なくなりますが、整備コストが発生することや設置スペースの確保など色々な制約があります。メリットとデメリットを比較し、カーボンハーフ達成という目標に対する方向性を決める業務も行っています。
◎その他
水素を利用した発電や新型太陽光など新しい環境技術を調査したり、気候変動の水道事業への影響を調査したり…と、他にも色々な業務を行っています。
一日のスケジュール
東京都では、フリーアドレスの導入により、柔軟で自由に働ける「未来型オフィス」への切替えを進めています。水道局でも順次導入を進め、昨年度から総務部も未来型オフィスに切替わりました。
また、ライフワークバランスの充実を目指し、テレワークも推進しています。朝の通勤ラッシュから解放されるだけでなく、自宅で業務が出来るため子育てとの両立などもしやすく、非常に働きやすい環境になっています!
・8:30~(自宅にて業務開始)
メールチェック、業務予定の確認など
(対面での打合せ等がない場合、午前中自宅でテレワークすることが多いです)
・9:00~
エネルギー関係資料の作成
エネルギー状況を整理し環境計画の案を練ったり、国や環境局に提出する資料の作成などを行います。(書類作成などはテレワークの方がはかどります!)
・12:30
昼食後、自宅から勤務先(本庁)へ移動
昼休みは12:00-13:00です。12:00から家で昼食、その後電車で職場へ移動します。
・13:00
環境局とエネルギー削減に関する打合せ
関係各局との意見交換も大事です。活発に議論したい場合は、対面での打ち合わせを選択します。
・14:00
業務委託先とリモートでの打合せ
世界の環境動向や技術情報の収集などを委託事業者に行っていただいています。
状況報告や進捗状況の把握がメインの場合は、オンラインで実施することが多くなっています。
・15:30
次期環境計画について担当内での意見交換
意見交換や検討などは集まった方がはかどります!ホワイトボードを使った検討もよくやります!
・17:00
国内外の環境動向や再エネ導入コストの検討状況を課長へ報告
・18:00
勤務時間は8:30~17:15ですが、課長報告を行ったため少し残業して帰宅
最後に
水道局は浄水場などの現場を持っているため、企画から現場管理まで幅広い業務を経験することができます。色々なフィールドで業務経験を積んで、自分の特性にあった部署で働けることも魅力の1つだと思います。今回は、水道局で機械職が携わる企画業務に関して紹介いたしました。企画業務は、機械職単独では行えず土木職や林業職、環境検査職など様々な職種とも連携しながら行うため、様々な知識が習得でき視野の拡大につながるのが特徴です!
今回のご紹介で、機械職の業務に興味を持っていただけたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。