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2024年3月、日の出町と青梅市を結ぶ 梅ヶ谷(うめがた)トンネルが開通! ~開通による整備効果~
■はじめに
建設局では、都市の機能強化や経済活動の活性化、防災性の向上に寄与する道路の整備を推進しています。
多摩山間・島しょ地域においては、道路が人の移動や物資の輸送を担っており、生活や産業の活動及び経済や観光の振興に重要な基盤施設となっています。
とりわけ、地域住民の日常生活を支え、自然災害等緊急時に対応できる安全な道路として、主要道路である都道を整備する必要があります。
そのため、大型車のすれ違いが困難な道路の拡幅整備、バイパスの整備、歩道整備、線形改良※、法面防護など、地域振興と防災性向上に資する道路整備を推進しています。
※線形改良:カーブを緩やかにしたり、坂道の勾配を調整したりして、運転しやすく、安全な道路にすること。
その一つである一般都道238号大久野青梅線のうち、日の出町大久野から青梅市梅郷一丁目までの梅ヶ谷トンネルを含む約1.5kmが、令和6年3月16日に開通しました。
本記事では、この開通による「整備効果」について紹介します。
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■梅ヶ谷トンネルとは
梅ヶ谷トンネルは、延長1,333mのトンネルで、上下2車線の車道と幅2.5mの歩道が片側に設置されており、総幅員は約10mです。NATMと呼ばれる、山岳トンネルにおける代表的な工法で建設されました。
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梅ヶ谷トンネルの整備により、道路網のダブルルート化が図られ、地域の防災性が飛躍的に向上するとともに、生活圏が拡大することによって、産業や観光の振興も図られることが期待できます。
トンネル内部には、日の出町と青梅市の市町境の標識が設置されています。
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■事業の経緯
本事業は、平成27年度から令和5年度までの約9年間で実施され、総事業費は約100億円にのぼりました。
平成27年 事業着手
令和元年6月 トンネル掘削開始
令和3年7月 トンネル貫通
令和6年3月 交通開放
■NATMとは
NATMはNew Austrian Tunneling Methodの略で、硬い地盤を有する山岳地帯でのトンネル掘削に使用される工法です。掘削した部分を素早く吹付けコンクリートで固め、ロックボルトを岩盤に打ち込むことにより、地山自体の保持力を利用しながら、トンネルを掘進します。
NATMは、長大山岳トンネルが多数建設されているオーストリアで誕生した工法です。
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多摩部では、すでに完成した奥多摩町にある城山トンネルでもNATMが採用されています。
■開通による効果
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1.地域の防災性が向上!
梅ヶ谷トンネルが開通したことにより、日の出町の山間部から秋川街道に向かう都道184号線の代替路(都道251号線)が確保され、都道184号線沿線の孤立化のリスクが低減されます。
また、梅ヶ谷峠を越える都道251号線の新たな迂回ルート(都道184号線)が確保され、防災性が飛躍的に向上しました。
過去の被害状況
令和元年東日本台風(台風19号)では、都道184号線が崩壊し道路が寸断され、日の出町大久野地区が一時的に孤立状態となりました。
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また、都道251号線は、梅ヶ谷峠入口交差点から坂本交差点間は、山地地形を縫うように走っており、その中間には梅ヶ谷峠があります。そのため、土砂崩れや雪害による通行止めが発生するリスクを抱えています。
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2.青梅市と日の出町のアクセス性が向上!
青梅市から日の出町大久野へのアクセス時間が大幅に短縮され、日の出町大久野地区にある温泉施設やキャンプ場、寺社などの観光資源へのアクセス性向上につながり、地域の産業や観光振興にも寄与します。
具体的には、青梅市の梅ヶ谷峠入口交差点と日の出町の肝要の里付近間の自動車の所要時間が、開通前は約20分であったところ、開通後は約5分で移動できるようになり、所要時間が大幅に短縮されました。
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開通した梅ヶ谷トンネルでは、12時間あたり約740台の自動車が通行しています。(調査時期:令和6年9月・10月)
■おわりに
東京都は、「TOKYO強靭化プロジェクト」を立ち上げ、風水害や地震など東京に迫る5つの危機に対して取り組んでいます。
道路整備は一朝一夕に進むものではありませんが、ひとたび完成すれば、絶大なストック効果を永続的に発揮し、都民に様々な恩恵をもたらします。
今後も多摩山間・島しょ地域における、地域振興と防災性向上に資する道路整備を推進して参ります。
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