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東京都豪雨対策基本方針の改定について

 今年も梅雨の時期がやってきました。都では各局で連携して豪雨による被害を防ぐため、様々な対策を講じております。一方、「警報級の大雨」や「線状降水帯」などの報道が頻繁になされているように、災害発生へのリスクは年々増加しています。
 今後、気候変動による降雨量の増加が見込まれる中、人口・資産が集積し、高度に土地利用される東京においては、激甚化・頻発化する豪雨への対策強化は急務です。
 こうした背景を踏まえ、気候変動に対応するため対策の目標を引き上げ、豪雨対策を更に強化するため、東京都豪雨対策基本方針(改定)を昨年度に策定しましたので、ご紹介いたします。

東京都豪雨対策基本方針(改定)令和5年12月

1.豪雨の現状

 近年、日本全国における1時間あたり50ミリメートルを超える降雨の年間発生回数が増加しています。東京都内でも、同様に1時間あたり50ミリメートルを超える降雨の増加が見られます。観測所の20%以上でこの基準を超える降雨が記録される年が多くなっており、発生率は上昇傾向にあります。

時間50ミリ以上の降雨発生率の経年変化
(データ出典:東京都建設局「過去の水害記録」)

2.都市構造・社会経済環境の現状

 東京都内の土地利用は、多摩部においても既に市街化が進み、農地や森林など浸透能力の高い土地が減少している傾向があります。

都内の土地利用状況
(データ出典:東京都都市整備局資料)

 都内の資産の集積状況は、特に区部において顕著であり、神田川流域などの都心の一部で1㎢当たり1兆円を超える一般資産の集積がみられるなど、人口、資産の集積が進み、多摩部の資産も増加しています。
 また、地下街や地下鉄、地下を有する建物など、水害に対して対策が必要な施設が増加することなど、高度に地下空間が利用されており、人口や資産が集積した東京の都市構造は水害に対して課題があります。

都内の地下を有する建物棟数及び地下鉄延長
(データ出典:東京都総務局「東京都統計年鑑」)

3.豪雨対策の課題と方向性

 現状の問題点を整理し、豪雨対策の課題と方向性を示します。

現状から導いた問題と5つの課題の関係性

4.豪雨対策の目的

 東京の将来像を示す「『未来の東京』戦略」に掲げる「気候変動等の脅威から、都民の生命を最大限守り、都市の被害を最小限に抑え、都市の機能を早期に回復できる都市」の実現のため、豪雨対策の3つの目的を設定しています。
 ① 水害から都民の生命を守る。
 ② 水害時も必要最低限の都市機能を確保し、早期復旧・復興を実現する。
 ③ 水害による財産被害を軽減する。

5.豪雨対策の目標

 今後の気候変動に伴い、世界平均気温が2℃上昇した場合、関東地方における降雨量は1.1倍になると試算されています。
 目標とする降雨は、将来においても現在設定している年超過確率1/20規模を下回らないように、2014(平成26)年改定の基本方針で定めた目標降雨に対して降雨変化倍率(1.1倍)を考慮し、10ミリ引き上げて設定しています。

都内全域で気候変動を踏まえた年超過確率1/20規模相当に対応

6.豪雨対策の役割分担

 気候変動を踏まえた目標降雨に対し、河川整備、下水道整備、流域対策の主要な施策で浸水被害を防止することとし、目標を超える降雨に対しても、家づくり・まちづくり対策、避難方策に取り組み、もしもの備えを進めます。
 今後、地域特性に応じて5つの施策(河川整備、下水道整備、流域対策、
家づくり・まちづくり対策、避難方策)を組み合わせ、重点的な対策強化
と段階的な事業展開により事業効果の早期発現に努めます。

目標降雨と各施策の役割分担
段階的な事業展開イメージ

7.具体的な取組(5つの施策)

【施策① 外水はん濫を防ぐ「河川整備」】
・気候変動を踏まえた年超過確率1/20の規模の降⾬に対応
・降雨量増加分は主に調節池等による対応を基本に、効率的・効果的な対策を実施(流下施設(地下河川等)の整備や複数調節池の連結など)

【施策② 内水はん濫を防ぐ「下水道整備」】
・浸水の危険性が高い地区を重点化し、幹線や貯留施設などの基幹施設の整備を推進
・多摩部における市町村への補助による公共下水道の浸水対策支援など

【施策③ 雨水の流出を抑える「流域対策」】
・あらゆる関係者による雨水流出抑制の取組への支援充実
・流域対策の協働を促す広報強化など

【施策④ 水害に強い「家づくり・まちづくり対策」】
・高台まちづくり、グリーンインフラ等の水害に強いまちづくりの推進
・地下街における行政と管理者間の連携強化や避難訓練等の水害対策の推進など

【施策⑤ 生命を守る「避難方策」】
・浸水予測の充実や河川水位等の情報発信強化
・水害リスク等の情報を活用した地域の防災力向上など

リスク情報発信強化による避難・防災行動の促進

8.豪雨対策の更なる推進に向けて

 気候変動に対応した強靭で持続可能な首都東京を目指し、豪雨対策を着実に推進し、豪雨対策を進める計画や取組の推進します。
・豪⾬対策を進める計画や取組の推進
・都民や企業への情報発信強化
・最新の技術や知見の活用
・みんなで取り組むための「人づくり」
・PDCAサイクルによる事業推進

みんなで取り組むためのPRや防災教育など

◆最後に

 東京都豪雨対策基本方針(改定)の詳細につきましては、下記リンクにありますので、お時間がありましたら、合わせてご確認頂けますと幸いです。 
 東京都豪雨対策基本方針について | 東京都都市整備局 (tokyo.lg.jp)

 また、現在、九都県市が連携して身の回りでできる豪雨対策の広報として、「雨水(あまみず)しみこみプロジェクト」を推進しております。

 豪雨対策は、あなたの身の回りでも出来ます。大雨のときに自宅から流す水を減らす(例:お風呂の水を流さない等)ことでも、多くの方にご協力頂ければ、大きな力を発揮します。あなたの身の回りでできる豪雨対策に、ぜひご協力をお願い致します。
 あなたにできる豪雨対策 | 東京都都市整備局 (tokyo.lg.jp)