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新たな地球温暖化防止計画「アースプラン2023」

 下水道事業は、安全で快適な生活環境の確保や良好な水循環の形成に必要不可欠な役割を担っていますが、下水処理には電力や燃料など大量のエネルギーを必要とし、それに伴い多くの温室効果ガスを排出しています。
 下水道局では、快適な地球環境を次世代に引き継ぐため、2004年に下水道事業における地球温暖化防止計画「アースプラン2004」を策定して地球温暖化対策を本格的にスタートしました。その後、2010年と2017年に計画を改定し、レベルアップを図ってきました。
 一方、気候危機が一層深刻化する中、国内外では脱炭素化への動きが加速しており、国や東京都の新たな動き、更には外部有識者による「下水道カーボンハーフ実現に向けた地球温暖化対策検討委員会」の議論を踏まえ、本年3月に新たな地球温暖化防止計画「アースプラン2023」を策定しました。
 本計画では、2030年カーボンハーフの実現に向けた目標と取組に加え、その先の2050年ゼロエミッションの実現に向けた革新的な取組に挑むビジョンを示しました。

◇目的

 本計画は、下水道事業における地球温暖化防止計画「アースプラン2017」とエネルギー基本計画「スマートプラン2014」を統合して新たな計画とするもので、下水道事業の特性を踏まえて地球温暖化対策とエネルギー対策を一体的に推進することを目的としています。

◇2030年カーボンハーフ実現に向けた目標と取組

 下水道事業では、温室効果ガスとして、二酸化炭素(CO₂)に加え、一酸化二窒素(N₂O)やメタン(CH₄)を排出しています。

図1 下水道施設から排出される主な温室効果ガス

 そのため、温室効果ガスの排出削減にあたっては、エネルギー起源 CO₂と N₂O 等の削減を総合的に勘案して対策を一体的に推進する必要があることから、2030年度の温室効果ガス排出量を2000年度比で50%以上削減する目標を設定し、目標達成に必要となるエネルギー消費量が、2000年度比で約25%程度削減、再生可能エネルギー電力利用割合45~50%程度としています。
 2030年カーボンハーフ実現という高い目標を達成するために、①徹底した省エネルギー、②再生可能エネルギーの活用、③処理工程・方法の効率化、④他分野との連携、以上の4つの取組方針に基づき対策を推進します。既存技術の導入拡大に加え、新たに技術開発した先進技術の導入を推進していくことが重要となります。これまでの取組を加速するとともに、新たに技術開発した設備の導入や再生可能エネルギーの更なる活用などの取組を強化します。

図2 省エネルギー型濃縮機の導入
(① 徹底した省エネルギー)
図3 消化ガス発電(バイオマス発電)のイメージ
(② 再生可能エネルギーの活用)
図4 エネルギー自立型焼却炉
   (③ 処理工程・方法の効率化)   
図5 下水熱の利用のイメージ
(④ 他分野との連携)

◇2050年ゼロエミッション実現に向けたビジョン

 2050年ゼロエミッションの実現に向けては、既存技術や先進技術の導入だけでは達成が困難であることから、下水道が持つポテンシャルや下水道資源を最大限に活用し、更なる先進技術の導入推進、革新的技術の開発・導入により温室効果ガス排出量を徹底的に削減する必要があります。

図6 ゼロエミッション実現に向けたビジョン
図7 下水道資源の活用イメージ

 このような革新的技術の例として、AI を活用した汚泥処理の最適制御技術、次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)、下水道エネルギーマネジメントシステムなどがあります。スタートアップの技術も含め革新的技術を活用し、省エネルギー・創エネルギーを推進します。
  

図8 ペロブスカイト太陽電池(設置イメージ)
図9 ペロブスカイト太陽電池(実物)
図10 ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた検証キックオフ

◇エネルギー危機管理の強化

 停電時においても下水道事業を安定的に継続するため、非常用発電設備の増強に加え、再生可能エネルギーを利用した発電による電源の多様化や、非常用発電設備における燃料の多様化を推進し、今後もエネルギー危機管理の強化に取り組みます。
 さらに、ロシア・ウクライナ情勢を契機としたエネルギー危機等の社会構造変化への対応やその先の脱炭素化に向け、電力のHTT<電力をⒽへらす・Ⓣつくる・Ⓣためる>を推進します。

図11 燃料多様化のイメージ
図12 電源多様化のイメージ
図13 ピークシフトのイメージ