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今後100年を見据えた神宮外苑地区の公園まちづくり

   都市整備局では、都市づくり全般に関わる政策の立案や事業を担当しており、将来を見据え、多様な主体と連携し、東京のまちづくりを推進しています。
 絵画館前のイチョウ並木が有名な神宮外苑一帯では、「公園まちづくり制度」を適用し、新たな時代に相応しい、緑あふれるスポーツと賑わいの拠点として大胆に施設の再編を今後行っていきますので、その内容をご紹介します


1. 現在の神宮外苑地区

   明治神宮は、明治天皇と皇后の明憲皇太后をお祀りする神社として、大きく「内苑」と「外苑」に分けて大正時代に創建されました。「内苑」は御社殿を中心とした厳かな空間を維持し、「外苑」は国民の体力の向上や心身の鍛錬の場、文化芸術の普及の拠点として、できるだけ多くの人々に開放することを趣旨として、整備が進められました。スポーツの拠点として、明治神宮球場をはじめ、秩父宮ラグビー場、東京体育館、国立霞ヶ丘競技場などが整備され、1964年のオリンピック時には、多くの施設が使用されました。

   また、創建から100年が経過する明治神宮内苑の森と連なる豊かな緑は、聖徳記念絵画館やいちょう並木の美しい景観とともに、都心にあって貴重な憩いの空間として、多くの人々に親しまれています。

創建時平面図

銀杏並木ビスタ景

2. 東京2020大会をきっかけに動き出したまちづくり

    神宮外苑の各施設の完成から半世紀以上が経過し、老朽化や機能面での劣化が進み、大規模な国際競技大会会場としての活用が困難となり、スポーツの拠点としての魅力が失われつつありました。一方で、ラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会招致などの動きを踏まえ、国立競技場の建て替えや、神宮外苑一帯のまちづくりへの機運が加速されていきました。

    こうした流れの中、東京都は神宮外苑地区を「世界に誇れるスポーツクラスター」として整備し、魅力あるまちづくりを進めるため、2013年に「神宮外苑地区地区計画」を決定し、今後に向けた大きな方向性を示しました。本地区計画は新国立競技場などの大規模スポーツ施設、公園、既存施設等の再編・整備を図る「A地区」と聖徳記念絵画館やいちょう並木を中心とした緑豊かな風格ある都市景観を保全する「B地区」の2地区に分けられ、先行して「A地区」の一部の整備が進み、2019年には新国立競技場が完成しました。

整備前の状況

神宮外苑地区地区計画

3. 東京2020大会後の神宮外苑地区の公園まちづくり

    新国立競技場より東側のエリアについては、民間事業者が主体となり、まちづくりを適切に進めていくことを想定し、東京都は2018年11月に「東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針」(以下「まちづくり指針」)を定め、東京2020大会後を見据えた、まちづくりの目標や誘導方針、公園まちづくり制度の活用要件等を示しました。

まちづくり指針

公園まちづくり流れ

(公園まちづくり制度について)
    公園まちづくり制度は、都市計画公園内の未供用部分を対象に、民間による都市開発の機会を捉えたまちづくりと公園・緑地の整備を両立させるために都が2013年に創設した制度です。
 具体的には、当初の都市計画決定から概ね50年以上が経過した面積2ha以上の未供用区域のある都市計画公園・緑地が対象となり、開発区域の中で一定の緑地等を確保することを条件に、都市計画公園・緑地を削除(未供用面積以下に限る)する内容となっています。
    神宮外苑地区については、本制度の適用を想定し、まちづくり指針が策定されました。

公園まちづくり制度のイメージ

4. 事業者提案による公園まちづくり計画

    前記まちづくり指針を踏まえ、事業者【三井不動産株式会社(事業者代表)、宗教法人明治神宮、独立行政法人日本スポーツ振興センター、伊藤忠商事株式会社】より2020年2月に「神宮外苑地区公園まちづくり計画」の提案書が提出されました。
   東京都は「東京都公園まちづくり制度実施要綱」に基づき、東京都公園まちづくり計画専門部会、東京都公園まちづくり計画検討会、そして東京都公園まちづくり計画審査会における審査を経て、2021年7月に事業者に対し、公園まちづくり制度を適用する旨を通知しました。

 事業者から提案された公園まちづくり計画については、以下のホームページに概要版を掲載しています。
神宮外苑地区の公園まちづくり計画の審査結果について
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07_06.htm

 神宮外苑地区公園まちづくり計画は、神宮外苑地区の新たな100年に向け、スポーツを核とした、誰もが気軽に訪れ楽しむことが出来る公園の再編と広域避難場所としての防災性を高める複合型のまちづくり実現するものとして、提案されています。
 まちづくりの誘導方針の中では、計画区域内を「みどり・交流ゾーン」「みどり・憩いゾーン」「スポーツ・交流複合ゾーン」「文化・にぎわい等複合ゾーン」「高度業務・商業ゾーン」に区分けし、ゾーン特性を踏まえ、スタジアム通り側及び青山通り側に高度利用を図るとともに、いちょう並木沿道や絵画館前の区域においては、ビスタ景の保全に配慮することとしています。また、スポーツ環境の整備の方針として、世界に誇れるスポーツクラスターとして、再整備される大規模スポーツ施設(野球場及びラグビー場)においては、多種多様な機能や、施設間に約1.5haの広大な広場を整備するとともに、これらを貫く地区の骨格的な動線(南北通路)を整備することなどが位置付けられています。さらに、明治神宮の創建当初の趣旨を継承した絵画館前広場の整備など神宮外苑地区の歴史を感じられる場を創出することなどが方針として掲げられています。
 みどりとオープンスペースの方針としては、新宿御苑から赤坂御用地へと連続する広域的で骨格的な緑の範囲を、計画区域内のまとまりのある緑並びにいちょう並木により計画地内に連続的に確保することで、公園まちづくり計画区域に対する緑の割合は約25%から約30%に増える計画となっています。
 本計画に公園まちづくり制度を適用し、都市計画公園の区域から削除対象となる区域の面積は、従前に秩父宮ラグビー場がある約4.7haが長期未供用の区域となりますが、今回の提案では、都市計画区域から削除する区域は、約3.4haの区域としています。この削除区域内においては。公園まちづくり制度の適用要件である緑地等確保率原則60%以上とする条件を満たしています。
 また、野球場の北側に中央広場約1.5haを整備する計画としており、まちづくり指針に記載された条件を満たしており、公園まちづくり制度実施要綱、まちづくり方針等に沿った提案となっています。

公園まちづくり計画

 今後は、都市計画公園及び再開発等促進区を定める地区計画の変更等、必要な都市計画の手続きを行い、各施設の段階的な再整備を実施し、2036年に全体が完成する予定となっています。

                   (都市整備局都市づくり政策部)

参考URL:
公園まちづくり制度について
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/kouen_2.htm
東京都公園まちづくり制度実施要綱
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/pdf/kouen_2_02.pdf
神宮外苑地区のまちづくり
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/toshi_saisei/saisei07.htm
東京2020大会後の神宮外苑地区のまちづくり指針
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/11/22/08.html