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コミュニケーション#1 ダブルメッセージからのダブルバインド
こんにちは
東京ソラーレ 心理士 ふく(風来)です
コミュニケーションというテーマで
いくつか記事をアップしていきたいと思っています
それなりの本数が集まれば
初の”マガジン”を作れるところまで
がんばってみようかなと画策しています
コミュニケーションに関する記事
第1弾としてふさわしいかどうかわかりませんが
<極力避けてほしい>
<ほんとうにやめてほしい>
<ともすれば精神を破壊しかねないので使わないことを強くお勧めする>
コミュニケーションについて
あえてお話しておきたいと思います
人類学者のグレゴリー・ベイトソンが
人々がコミュニケーションする様を
観察し分析することから見出した
ダブルメッセージ あるいは ダブルバインド
について
みなさんはどこかで耳にしたことはあるでしょうか?
ベイトソンは
人から人へ発するひとつのメッセージには
異なる2つの階層(モジュール)があるといいました
1つめは
言葉で発信される 言語メッセージ
2つめは
態度や口調、雰囲気、行動などで発信される 非言語メッセージ
こちらは メタメッセージ とも呼ばれます
問題となるダブルメッセージというのは
言語メッセージで発せられた内容と
非言語のメタメッセージで発せられた内容とが
違っている 矛盾している 一致していない
という状態にあるときのことを指します
このような矛盾した2つのメッセージを
同時にあるいは時間差で受け取った人は
どちらのメッセージに反応していいのかと
混乱したり 葛藤状態におかれてしまいます
ダブルメッセージの具体的な例をあげますね
例1)今日のおやつ
母: どれでも好きなもの ひとつだけえらんで食べていいよ
子: じゃ これにする!
母: それは甘すぎて虫歯になっちゃうから 他のにしなさい
子: ・・・
言語メッセージ:自由に選んでよい
メタメッセージ:母が許したものでなければダメ
例2)上司から部下へ
上司: いいんだぞもう帰っても 誕生日の子どもが家で待ってるんだろ
いいって言ってるじゃないか! さっさと帰れ!<怒り口調>
部下: (オロオロと自席と出口の間を行ったり来たりしている)
言語メッセージ:残業せずに帰ってよい プライベートも大切にしてほしい
メタメッセージ:仕事優先 家庭は二の次
残業してでも 仕事をやり終えてほしい
お気づきでしょうか
例1)でも例2)でも
矛盾した2つのメッセージが発信されているため
受け手の側は混乱、戸惑い、ストレス、葛藤を味わっています
このダブルメッセージが 特定の人の間で
長期にわたって繰り返され
なおかつ そのようなコミュニケーションの場
つまりその関係性から逃れることを禁止された場合
事態はさらに深刻さを増して 次の段階へと進みます
それが
ダブルバインド(日本語では”二重拘束”といわれる)です
例1)のケースでいうと
言語メッセージに応えて
好きなおやつを口にしたら
お母さんは怒ったり 不機嫌になってしまいますし
非言語のメタメッセージに応えて
お母さんがそれなら食べてもいいよ
というおやつを選びなおしたとしても
結局自分が食べたいおやつを食べることは叶わないという
欲求不満がたまってしまいます
こんな状況を繰り返し経験した子どもは
最初から自分の意思や願いを表現することを
ためらうようになります
しかも親子の関係は勝手に切ることはできないですし
家出をしても行くところがないので
子どもたちには逃げ場がありません
お母さんとの間で
このようなダブルメッセージのコミュニケーションがずっと続く
そんなストレス環境下に置かれてしまった子どもは
常に親の顔色をうかがうようになり
自分の気持ちを素直に表現したり
思いや考えを主張しなくなります
うかつにそんなことをしようものなら
自分に災難がふりかかるにちがいないと
日々のやりとりを通して学んでいるからです
例2)の大人同士のコミュニケーションにおいても
上司と部下という上下の力関係がある場合には
子どもほどではないにしても
その関係性や環境から抜け出すことは
容易ではありませんね
単に矛盾したメッセージにさらされて混乱する
というだけにとどまらず
さらに深刻な事態を引き起こしうるのは
この
逃げられない状況に置かれてしまったとき
なのです
このダブルバインドを多用する人にありがちなのは
他の人を動かそうとしたときに
きちんと依頼をしたり
希望を伝えてお願いをするのではなく
自分のより強い立場を利用するということです
ポジションパワーを使うということです
ポジションパワーというのは
役職や社会的な立場から生じる力を指します
プライベートであれば
親 長男長女 収入格差 家柄など
職場であれば
経営者 重役 議員 医師 弁護士 教師などが有している
権力のことをさします
尊敬や崇拝を集めやすい人や
今でいう高スペックな人などは
(もちろん全員ではなく一部だと思いますが)
相手に頭を下げて懇願したり
下手に出て助けを求めたりすることに
抵抗を感じる人たちがいるようです
そこで人を思い通りに動かす別の手段として
ダブルバインドのようなポジションパワーを使う方法を選ぶということです
彼らはそのほうが より楽に事を運べることを経験的に知っているようです
私はカウンセラーとして
さまざまな職場や
さまざまな年齢層の子どもが集まる場で
人々がコミュニケーションする様子を観察してきました
あくまでも現場の実務者としての実感としてですが
人のこころに深刻なダメージを加えうるような
ダブルメッセージやダブルバインドの
コミュニケーションをとる傾向や習慣といったものは
けして生まれ持ったものではないだろうと感じています
おそらくその人の自覚できる記憶に残っていない
幼少時の時点で
ごくごく身近な存在として
ダブルメッセージやダブルバインドを多用する人が
いたのではないか
それを日常的に見聞きしていたのではないか
その人自身も巻き込まれて繰り返し体験してきたのではないか
と推測しています
しらずしらず 生き延びる術として
身に着けてしまい
大人になってもそれを無意識に活用してしまっている人
なのかもしれません
もしそうだとすれば
それはとても不幸な身の上だと言わざるを得ません
だとしても。。。
それでもやはり
心身共に健全な子どもの育ちを守りたいと願う
心理士の1人として
ダブルメッセージ
ダブルバインドは
極力避けてほしい
いっそ一切無くして欲しいとさえ思う代物です
目には見えない凶器だとみなしています
もしもこの記事を読んでくださった方のなかに
子育て中 部下を育て中のかたがいらして
ハッと思い当たるところがありましたら
日頃のコミュニケーションの取りかたについて
いま一度 見直していただければ幸いです
今回お話ししたのは
ネガティブなダブルバインドのお話です
世の中には
ポジティブなダブルバインドというのもあって
どちらに転んでもよい方向に向かうというコミュニケーションです
まあポジティブであれネガティブであれ
人が人をコントロールするとか 支配することにつながりかねない
そう思ってしまうと
個人的にはやっぱり使わないほうが良いコミュニケーションだと
思っています
さらなる考察についてはまた
別の機会にご紹介できればと思います
それではまた
東京ソラーレ 心理士
ふく(風来)