アイデアx技術xチームワーク!受賞者に聞く、都知事杯オープンデータ・ハッカソンの魅力とは
2024年6月、都知事杯オープンデータ・ハッカソンの第一回募集イベントが開催されました。今回は、昨年度の受賞チームをお招きし、サービスの紹介とパネルトークをおこないました。
イベント中、視聴者の方々からは「学業や仕事とハッカソンはどうやって両立させたのか?」「プロジェクトを長く続けるためにはどうすればいいのか」など、さまざまな質問が寄せられました。
受賞者たちによる開発時のエピソードを交えた話には、ハッカソンを進める上でのヒントがたくさん詰まっています。都知事杯ハッカソンに興味がある、参加してみたい、という方は必見です!
必要なときに支援を受けられる社会を目指す
〜 最優秀賞作品「支援みつもりヤドカリくん」〜
イベントでは、まず2023年度の都知事杯最優秀賞を受賞したproj-inclusive × 一般社団法人防窮研究所の白取さんと森本さんに登壇いただき、受賞作品「支援みつもりヤドカリくん」についてご紹介いただきました。
「支援みつもりヤドカリくん」は、ユーザーが簡単な情報を入力することで、受けられる可能性の高い支援制度と受給額を提示してくれるアプリです。
災害、怪我、病気、年齢や家庭の変化などをきっかけに、突如として生活に行き詰まる事態は誰にでも起こり得ます。このアプリは、そうした生活困窮が起きた際、どんな支援がどうやったら受けられるのかを簡単に検索でき、必要な人に適切な情報を届けることを目的に開発されました。
実は、このアプリの構想は、2020年に遡ります。新型コロナウイルスによって生活困窮が深刻化する報道を見た白取さんが、一人でプロジェクトをスタート。その後、シビックテックのハッカソンに参加し、グループでの活動を開始しました。そして、より大きく推進するために、都知事杯ハッカソンへの参加を決めたのです。
都知事杯ハッカソンが始まると、チームは急拡大。爆速でボットを開発する凄腕エンジニアの森本さんをはじめ、メンバーの巻き込みが得意な非エンジニアなど、ジェンダー・国籍・スキルも多様な顔ぶれが一気に加わりました。
様々な力を結集したことで、アプリは急成長を遂げ、見事最優秀賞を受賞。この受賞を機に、行政や民間団体との連携が始まり、今でもチームの活動の幅は大きく広がっています。
白取さんは力強くこう語ります。「都知事杯は始まりに過ぎません。これからも、アプリ性能を向上させながら、『鳥の翼戦略(アプリの普及)』と『蟻の足戦略(コミュニティとの連携)』の両輪で、生活困窮予防のエコシステム構築を目指していきます。」
多様なメンバーを巻き込みながらミッションを追求し続けるチームの取り組み。都知事杯ハッカソンという場が、このような意義深いプロジェクトの出発点となり、社会課題解決に向けた取り組みを加速させる発端となったことが印象的でした。
技術から価値を生み出し、社会に還元
〜技術賞作品「BuTTER-Tag」〜
次に登壇いただいたのは、技術賞を受賞したBuTTERチームの羽田野さんと住谷さんのお二人です。BuTTERチームが開発した「BuTTER-Tag」は、Webサイトに3行のタグを埋め込むだけでリアルタイムのバス時刻表を表示できる画期的なサービスです。
全国には、バスの時刻表が見づらかったり、リンク切れだったり、目的のバス情報にたどり着けないケースが数多くあります。実際にチームメンバーが秋田の温泉地を訪れたときも、送迎バスがあるにもかかわらず、その存在を知らずに困難な経路を辿った観光客が多くいました。こうした実地調査での経験が、BuTTERの開発コンセプトを形作ったと言います。
リーダーの羽田野さんは、もともとバスや鉄道などの交通分野に興味を持ち、高校生の頃から経路検索エンジンやオープンデータを利用した混雑シミュレーションサービスを開発していました。一方、住谷さんもデータを使ったサービス開発に興味を持ち、学生時代から機械学習の研究やモデル構築などで友人たちと複数のコンテストに参加してきました。
10代の頃から好きな分野で開発を思う存分進めてきたお二人が、都知事杯ハッカソンへの参加を決めた理由は3つ。チームでの開発への意欲、APIを使わずに社会実装するという技術的挑戦、そしてバスのオープンデータが十分に活かされていないという課題意識でした。
今回の開発で重視したのは、ファイルを参照・配信するだけでバス停検索や時刻表表示を実現する、APIをほぼ使わない低コストな仕組みの実現です。バスのデータをあらかじめ細切れのファイルに分割し、ストレージに格納することでこれを可能にしました。
羽田野さんは、都知事杯に参加したことで「オープンデータを価値あるサービスに繋げることができた」、「社会的なニーズや需要を把握する良いきっかけになった」と振り返ります。住谷さんも、「SNSやネット上で様々なコメントをいただいたり、BuTTERを使ってみたいというお声がけをいただくなど、サービスの広がりを実感できた」と語ってくれました。
お二人の言葉から、都知事杯という場で挑戦する意味を強く感じさせていただくことができました。
受賞者らによるパネルトーク
第二部のパネルトークでは、「支援みつもりヤドカリくん」チームのAmyさんも加わり、視聴者の質問に答える形で都知事杯の魅力と参加のポイントが語られました。
まず、「都知事杯ハッカソンに参加したきっかけは?」という質問に対し、白取さんは「都知事杯に出れば何かが起こると直感した」ことが決め手だったと言います。一方、森本さんは、白取さんを始めとする楽しそうなメンバー写真をSlackで見て、このチームに加わりたいと思ったそうです。
さらに、BuTTERチームの波多野さんは、「都知事杯に出ることで、締め切りまでに作り上げるというモチベーションが上がった」と、都知事杯が良い刺激になったことを強調しました。
「エンジニアでなくてもハッカソンに参加できる?」という問いには、Amyさんが「議事録係や企画提案など、さまざまな方法で貢献できる」と返答。同じチームの白取さんからは、「Amyさんがいなければ、こんなに多様なメンバーも集まらなかった」とのコメントが寄せられました。Amyさんは、笑顔があふれるメンバー写真を撮影して人集めをしたり、チームメンバーを気遣ったりと、細やかなチームの雰囲気づくりに多大な貢献をしたそうです。
また、視聴者からは「新しい技術へのチャレンジが心配」や、「長期的にプロジェクトを継続するコツ」についての質問もありました。
新しい技術への対応については、「ChatGPTなどのAIを駆使しながら対応した」と森本さん。「ひとつ試して駄目なら、次に進み、また駄目だったら別の方法を試す。そんな繰り返しだった」。試行錯誤の結果、うまくいったときの感動は大きかったと付け加えました。
長いプロジェクトを上手に進めるためには、「遠慮なく本音を言い合える関係性」(白取さん)、「困ったときに助けを求められる体制」(森本さん)、「コミュニケーションの透明性」(Amyさん)や、「定期的オフライン交流」(住谷さん)とあり、チームワークの重要性に触れる意見が多く見られました。
加えて、「普段はほどほどのペースで進めつつ、重要な局面ではしっかりと集中する。そうしたメリハリが、長期的なプロジェクトの継続には欠かせない」(波多野さん)というペース配分についてのアドバイスもありました。
今回の募集イベントを通して浮き彫りになったのは、多様なバックグラウンドの人々が集うからこそ生まれる、イノベーションの可能性です。オープンデータを活用し社会課題解決に挑む過程では、技術力以上に「共に取り組む仲間」の存在が欠かせません。都知事杯は、アイデアを形にし、技術を磨く絶好の機会であり、挑戦へと踏み出す第一歩です。
最後に、登壇者からの熱いメッセージが続きました。「シビックハッカー仲間になってほしい」(白取さん)、「仲間との出会いが何より大切」(森本さん)、「非エンジニアもぜひ参加を」(Amyさん)、「技術・アイデアを形にするチャンス」(住谷さん)、「学びがあるので、まずは参加してみることが大事」(波多野さん)。
参加者同士の化学反応が、開催期間を超えて新たな価値を生み出していく。登壇者のみなさま、素敵なお話をありがとうございました!
※イベント中のその他の質問や、過去に寄せられた質問への回答は、<こちら>に掲載しております。
アーカイブ動画を公開しています
当日のお話や質疑応答をじっくりとご覧になりたい方は、下記アーカイブ動画を公開していますので、ぜひご覧ください。
今後の都知事杯オープンデータ・ハッカソンの予定
募集イベントは全4回。オープンデータ初心者から上級者まで、エンジニアの方もそれ以外の方も楽しめる内容なので、ぜひ <こちら>からご参加ください。※2024年度の募集イベントはすべて終了しています。
エントリー締め切りについて
都知事杯オープンデータ・ハッカソンの、エントリー締め切りは7月26日までとなっています。みなさまのエントリーをお待ちしています!
※2024年度のエントリーは締切りました。たくさんのエントリーありがとうございました!