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アイデアソンDay3レポート - データビジュアライズハンズオン -

2024年8月10日、都知事杯オープンデータ・ハッカソン2024のアイデアソンDay3が開催されました。今回は、新設されたビジュアライズ部門に焦点をあて、「データビジュアライズハンズオン」をテーマに開催しました。

講師陣はTableau《タブロー》※のコミュニティに所属する、データビジュアライゼーションのエキスパートの方々。参加者と一緒にツールを実際に操作しながら、効果的なデータの可視化について解説いただきました。ハンズオンの後は、参加者によるライトニングトークも実施しました。

「ハッカソンで、データの可視化をする際に非常に役立った」と参加者から好評だった本イベント。ぜひその様子をご覧ください。

※Tableau:データの分析、レポート、可視化ができるビジネスインテリジェンスツールのひとつ。

BIツール「Tableau」を使ったハンズオン

今回のハンズオンでは、BIツールの「Tableau」を使用しました。Tableauは、ExcelファイルやCSVから業務データベースまで、様々なデータを取り込み、直感的な操作で可視化できるのが特徴とのこと。

きむにぃさん

ドラッグ&ドロップの簡単な操作で複雑なデータを分析できるため、プログラミングスキルを持たない利用者からも幅広く支持されているようです。

Part1:アンケートデータの可視化

Part1は、もりたさんによるアンケートデータを用いた可視化のセッションです。東京都オープンデータカタログの「デジタル化に関する都民の実態調査」データを使用し、Tableauの基本操作から高度な図表作成までを教えていただきました。

もりたさん

まず棒グラフや円グラフなど、ドラッグ&ドロップによる簡単なグラフを解説付きで作成した後、サンキーダイアグラムの作成にも取り組みました。サンキーダイアグラムは関係性を示すのに有効とのことです。

最後に、作成したグラフやダイアグラムを一つのダッシュボードにまとめ、フィルターでの表示方法も学びました。切り口を変えてグラフを表示することで、格段に考察しやすくなります。Tableauの基本操作から応用テクニックまで段階的に解説いただき、ツール操作の全体像を掴むことができました。

Part2:データを使った地図表現

Part2は、noritoさんを講師に、東京23区の土地利用状況を地図上に可視化するセッションが行われました。

noritoさん

解説いただきながら、Tableauの「地理的役割」機能を用いて、「土地利用現況調査 GISデータ」を地図上に表示しました。住宅の面積に応じて色を変えることで、土地利用の傾向が一目でわかる視覚的な地図を表現できました。

さらに、地図とグラフを組み合わせたインタラクティブなダッシュボードも作成し、区ごとの住居数や集合住宅・戸建ての割合を動的に表しました。

「Tableauを使うことで地図のデータを持っていなくても、データを入れるだけで地図表現ができるし、地図とグラフを掛け合わせて表現できるので分析もしやすくなります」とのこと。地理的な傾向や特徴を視覚的に捉えられることの重要性を改めて実感できました。

Part3:気候データの可視化

ハンズオンの最終パートでは、Shuntaさんの解説のもと、「『未来の東京』戦略 政策ダッシュボード」のデータを用いて、気候データの可視化に取り組みました。東京の平均気温と降水量のデータを用いて、基本的な可視化技術の復習と応用に取り組みました。

Shuntaさん

年月ごとの気温と降水量を表す折れ線グラフと棒グラフの組み合わせを作成し、二重軸の使用、グラフの種類の変更、色の調整などTableauの様々な機能を学習しました。ページ機能を用いた動的なデータ表示や、散布図による関係性の視覚化、さらにクラスター分析などの高度な手法も学びました。グラフの作成からクラスター分析まで、ひとつのツール内で簡単な操作で実現できるのが、Tableauの強みのひとつのようです。

こうしてPart1からPart3までのハンズオンセッションでは、Tableauを使った基本的なグラフ作成から統計分析まで、幅広いデータ可視化のテクニックを学ぶことができました。可視化技術の習得にとどまらず、データ分析スキル向上にも役立つ貴重な経験となりました。

ハンズオンを参加者同士で進める場面

講演:可視化の意義と事例紹介

操作面に加えて、知識面でも可視化への理解を深めるため、中西さんに「可視化のつかみ」と題した講演を、酒井さんに可視化事例の紹介をしていただきました。

中西さん「可視化のつかみ」

可視化は何のために行うのでしょうか。中西さんは可視化の主な目的を「相手に理解してもらい、次のアクションを喚起させること」と言い、そのためには「見てわかる状態で情報を提示することが大事」と説明します。単純な数値の羅列ではなく、グラフや色などの視覚属性を正しく選ぶことが重要なのです。

中西さんは、いくつか例にとって説明しました。

例えば、渋滞情報の表示方法です。渋滞の有無を示すだけだと単なる情報の伝達にすぎませんが、渋滞距離や予想所要時間などを可視化と合わせて示すと行動を促す有用な情報になります。ビジネスシーンにおいても同様です。クロス集計表では把握しにくいスーパーの商品出荷データも、色付けや棒グラフ化することで、対策が必要な商品カテゴリーが明確になり、迅速かつ適切な判断を下すことができるようになります。

中西さん

ただし、可視化は伝わりやすいからこそ注意すべきことがあります。色の使用方法やデータの表現方法を変えるだけで、印象が大きく変わるとのこと。必要以上に多くの色を使用すると逆に理解を妨げる可能性があることや、見せ方によって異なる印象を持つことも具体例を用いて説明されました。

相手に理解してもらい、行動を起こしてもらうためには、わかりやすく伝えることが何よりも大切です。また、表現方法によっては、相手への伝わり方にも大きく影響します。データビジュアライゼーションが単なる技術的なスキルではなく、意思決定や行動を促すための効果的なツールであると話し、講演を締めくくりました。

酒井さん「オープンデータ可視化事例の紹介」

では、実際にどのような可視化事例があるのでしょうか。酒井さんが画面に事例を映し出しながら、オープンデータを活用した可視化の作品を紹介していきました。

今回の講師陣が所属するTableauコミュニティでは「可視化ハッカソン」を定期的に開催しているのだそう。人口、防災・災害、物価などの時事的なテーマでオープンデータの可視化に挑戦し、これまでに92作品の可視化事例が集っているとのこと。

酒井さん

実際にそれらの事例を見せていただくと、東京都のバリアフリートイレの分布図、消防白書のデータを用いた火災発生状況の可視化、コロナ禍における東京都の転入超過数の変化を年代別に表現した作品など、さまざまな東京の「今」をデータから切り取り、それを誰にでもわかるように可視化で表現していることがわかりました。

これらの作品に共通するのは、テーマにそった表現方法です。グラフの選択やアイコンの使用など、伝えたいことに合わせた可視化テクニックを採用しています。ある社会課題を解決したいと思ったとき、どのような行動変容を促したいのか、そこに注目することで、より大きな観点で可視化の実践ができるようです。

酒井さんは今回のアイデアソンで学んだスキルや知識を活かし、一緒に都知事杯オープンデータ・ハッカソンのビジュアライズ部門を盛り上げていきましょう、とお話していました。

参加者によるライトニングトーク

最後に、アイデアソンDay3の締めくくりとして、前回に引き続き、参加者によるライトニングトークが開催されました。日頃から感じていた地域の課題への解決策や、昨年度のアイデアを発展させた新たな提案など、様々なアイデアが紹介されました。

参加者によるライトニングトーク

自身のチームへの参加を呼びかける発表者もおり、ハッカソンに向けたチーム形成の準備が着実に進んでいる様子でした。全4回のアイデアソンも終盤。残り少ない機会を最大限に活用した、充実した交流の場となりました。


Final Stage 審査結果のお知らせ

都知事杯オープンデータ・ハッカソン2024のFinal Stageが、10月26日に開催されました。First Stageで選出された24チームによるプレゼンテーションと最終審査を経て、都知事杯を含む9つの賞の受賞が決定しました。

受賞者とその作品の詳細については、公式サイトにて公開しております。

また、当日の様子は、以下のYouTubeアーカイブ配信でもご覧いただけます。