25話:抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか/Qruppo マイノリティに言及したバカ&パロゲー
はぁ……。
なんというどエロ……いや、どエラいものを作ってくれたんだ……。
以前、性を食い物にするような下ネタが嫌いなので流行りの「ぬきたし」は無理かも。と書きましたが、いろんなえろげをプレイしてnoteに書いていく中で「先入観でいい作品と呼ばれるものを避けることはやめよう」と学んできたので、きちんと己の学びに従うべく、ぬきたし1と2を一気買いしました。マジカルラブリーの野田さんが地上波で紹介して、Twitterのトレンドに「ドスケベ条例」がランクインしたという話も有名ですよね。
私も例に漏れず、ため息の出る思いをしたので、ぜひプレイ後のいちばんアツいときにご紹介させてください。
今回はいつもよりちょっと長いかもですが、どうかひらにご容赦。
「タイトルで損をするのは百も承知」というブランドの覚悟
このラノベ風タイトルを初めて聞いたとき「ゲッ」て思いました。
えろげって「抜き重視」か「ストーリー重視」か「どちらも兼ねる」と大きく分けて3つあると思うんですけど、私はもちろんストーリー重視でエロスキップ派なので、そら「ゲッ」なんですよ。
昨今のラノベ……特にこのゲームが出た2018年頃は、やたら長くてタイトルで中身を説明する作品が多かったので、それで「あ、このゲーム気持ち悪そう」と考えてしまい避けていたんです。
しかし数年の時を経て、萌えゲーアワード2018年でシナリオ賞とニューブランド賞で金賞を取ったときの「ぬきたし」の受賞コメントを見れば、このような一文がありました。
パっと見で敬遠した方がいるのも当然であり、普通であればそのまま終わってしまってもおかしくありませんハメ。
(引用:2018年金賞・シナリオ賞/萌えゲーアワード)
ちょっ……おま、そんな傷つくのをわかっていて、そこまで……!? チョロい私は、涙が乾き切る前にAmazonの購入ボタンを押したのでした。
新ブランドらしい「派手にぶちかまそうぜ」的な試み
ぬきたしの良いところは、「は? 従来のルール? そんなん知らねーのですがwwww」と感じられるチャレンジ精神(実際には言ってません)。
鮮やかにかまされたと思ったのは、コミカライズ記念の動画です。
これがTwitterで流れてきて、初見ドン引きするのは正常な感覚だと信じたい。
ドン引きした私ですが、主人公の声をなぜかハメドリくんというマスコットキャラが当てていて、オタクに総ツッコミを受けていたのはすごく印象が強くてずっと心に引っかかっていました。いいプロモーションビデオだと思います。
その他、YouTube充実していておもしょいです。ボツシナリオもたくさんあるので雰囲気を知りたい方はこれ見てもらえるといいかもです。
Qruppo Official 動画リスト/YouTube
https://www.youtube.com/c/QruppoOfficial/videos
それからパッケージ。
美少女ゲームって、どんなに主人公が活躍してもあまり男性がパッケージに出ることはないハズなのですが、なんでこれを選んだん……。おかげで萌えゲーアワード入賞したときのぬきたしのアイコン、この少女のところだけ頑張ってトリミングされていてウケました。(※メタ的な要素でおっさんがOPに出てきた作品もありますが)
上にホーム画面キャプチャを貼りましたが、普通に女の子たちはかわいいです。「絶対あっちをパッケージにした方が売れるじゃん」と思ってしまうのは、もはや固まった古来の考えなのでしょう。
ぬきたしは「まだファンも少ない新ブランド」「タイトルが変」「パッケージが変」で、入りは絶対にハードルが高い。えろげは衰退していくと言われているのに、無茶しすぎだよ……と思うのですが、それがこの作品の中でも何度も使われている言葉「矜持」にほかならなかったのでしょう。
パロディがとんでもねえ量です
パロディの多いえろげは従来にも「こんにゃく」や「つよきす」「車輪の国」、「家族計画」……などいろいろプレイりましたが、ぬきたしは群を抜いてすごかったです。
プレイしたことない人でもYouTubeにアップされているボツシナリオ(?)で、その片鱗を伺うことができます。いくつかわかりやすいものをご紹介します。
1)えろげのえっちシーンあるある&某バラエティのパロディ
ぬきたし読んでない人にもわかると思います。えろげ好きは絶対にURL先飛んで!
2)スマブラのパロディ
私はスマブラ全然知らないんですけど、右下の外国人を見て察して「スマブラ 参戦」で調べてみたら、案の定うるせえオタク外国人動画がたくさん出てきて笑いました。おすすめはセフィロス参戦。
実はこの動画、一番見ています。単純にこういう力技でお約束でうるせぇのが好きなんだと思う。元気が出る動画です。
3)化◯語の予告パロディ
西尾維新先生に怒られたらいいのに(笑)。(シャ◯トさんは喜びそう)
ほか狂四郎2030の「うめうめ」とか「彼女がエッチのときに『なるほど』というのが嫌です」などのインターネットコピペネタからポケモンネタ、遊戯王ネタ、特撮ネタ、映画ネタ、古のエロゲネタ……等々。わかんないものも多いけど、テキストのギャグ量は半端ないので、まるで思春期にもどったかのように笑い転げられますでしょう。
マイノリティの尊重を叫ぶ姿
驚いたギャップは、真面目にマイノリティをテーマにしているところでした。大多数を生かすために軽んじられる少数派がどれだけ傷ついているのか、ありありと描かれています。
具体的に言うと、島にはドスケベを断れない法律があり、その価値観で育ってきた島の人たちはそれを当たり前だと受け入れています。でも主人公たちやゲームをプレイする私たちは、それを異様だと思ってしまう。だけど、そういった人々はこの島ではマイノリティ(少数派)。危険思考人物として、問答無用で罰則が適応されます。
「愛する人だけとセックスをしたい」「同性愛だから異性とはしたくない」……いろんな理由でその条例を受け入れられない主人公たちは、自分たちの矜持のために戦います。
しかしです。島という観点から見れば主人公たちは少数派だけど、国全体から見れば立場は逆転、島の人たちの方がマイノリティ。主人公は最悪島を出れば自分たちの安寧を得ることはできるけど、条例をなくせば島の人たちは行き場を失うんです。
それでも主人公の行動は正義と言えるのか。一転して悪者になるかもしれないひりつく空気感は、とても考えさせられます。現代のLGBTQ問題に言える切り口と、物語が出した答えに注目して欲しいです。
王道だから泣けるストーリー
「新しいことをぶちかましてくれる」と書きましたが、ちゃんとストーリーは王道を行っていて、エロだけかと思えば熱いバトルものでした。
仲間たちとの信頼の構築、そして仲間が必死で足止めをしてくれて、主人公が敵に挑む。アーーー! 大好きなんすよ〜そういう王道の流れが〜。ピンチのときに助けてくれる人が悪い人であるほど、弱い人であるほど、泣けるよね。ありがとうございました。
個性あふれる4人のヒロインたち…とその他のキャラ
攻略の順番は悩むけど、私は奈々瀬→美岬→ヒナミでクリアしました。美岬は2番目くらいがいいと思います、あいつむちゃくちゃなんで……。
1)アツいバトルゲーム担当、幼馴染ギャルビッチの正妻・奈々瀬
見た目ギャルビッチなのに実は家庭的で純粋な奈々瀬。いちばん最初に出会うヒロインで、あれ、この子が正規ルート?と思ったので最初に奈々瀬ルートを選びました。
戦闘力が高くて背中を預けられるし、対等だし一番お似合い! 個人の感想です!
彼女に関しては、誤解を解かないから人に勘違いされがちで、本人はそれで諦めてしまっているところがありました。ただ「みんなにわかってもらわなくても、大事な人にだけわかってもらえればいい」という考えは共感。
また、ペアエネミーの条件が発動しまして、彼女のルートのときは生徒会長の桐香の話にもスポットが当てられます。桐香は主人公のことを知りたがりで、奈々瀬とは真逆の性質を持っていました。その辺でうまくシナリオがまとまっていたのですが、桐香はあんまり魅力を感じなかったなぁ。
2)あたおかギャグゲー担当、孤独だけど底無しに明るいデブ美岬
美岬はずっと笑わされたギャグルート。上の絵もクロスチャンネルの自転車の子の1枚絵のパロディだしね。
キスシーンの1枚絵があるんだけど、それがギャグでも使われているのはもう、かわいそうを超えて見事としか……。美岬と付き合うとバカップルというかただのクソバカになります。
彼女のルックスは中くらいで、他のヒロインたちと比べて普通。存在感がなく、ナチュラルにステルス機能を搭載した人型のデブです。
誰にも認められないって、生に疑問を持つほどつらいことだと思うんですよ。だから自虐に走ってしまうのかなと思います。他の人のルートでもデブ自虐がしつこくて少しかわいそうかなと思ったけど、話が進むほどマジキチさを見せてくるので、まあこいつはこれでありか……とつい思ってしまいそうになりました。でもそんなことはないからね!
戦闘では運転能力に長けており、初めは自転車をかっとばしていたけれど、そのうちトラックや飛行機まで乗り回していて笑いました。美岬ルートで登場するマジキチミラー号(デコトラ)は腹筋死亡の破壊力。
最初はギャル派だったけど、徹夜でオールクリア後、登ってくる太陽に目を細めながら「私、美岬が好きだわ……」と思うのでした。
ペアエネミーでは、風紀委員の女部田郁子ちゃんが超絶かわいかった。バーサーカーモードで目がハートになるところがかわいい。2はこの子の話があるようなので今から期待。
3)美しい泣きゲー担当、愛情深い純真ロリ癒し系のヒナミ
ヒナミこと、わたちゃんは「ロリじゃないですけど!」でおなじみ愛され系。一番年上なのにメンバーたちにかわいがられています。
島では小さな子にはドスケベをしてはいけないという法律があります。年齢を書いているわけではないですが主人公水乃月学園A棟(?)の3年生。B棟からドスケベOKなので、C棟の女の子扱いされているロリ。なので私たちの世界でいえば小◯生にも見えるということですね。
戦闘は「椅子の加護」のおかげで無双。運だけでポジションをアタッカーにされていて笑いました。
恋愛に関しては、見た目ロリなのにママみがある……というところを神格化みたいにされていたけど、アホかよ。こーいう子が男をダメにするタイプだよ! 甘やかし方はダメンズ製造機で、どれだけヤバいかは下のボツシナリオ動画を見てもらえればわかるかと思います。
泣きルートで、ペアエネミーで登場する風紀委員長の礼ちゃんにフォーカスが当たりまくりでした。壮絶な過去を持ちながらも主人公やわたちゃんに優しくする礼ちゃん。いつも強い彼女の弱いときのギャップもたまらなくて、私の好感度は高まりましたです。礼ちゃんがヒロインになる2を期待しております。
4)3人をクリア後、グランドヒロイン謎の少女のルートが開放
彼女は古風で一歩下がって、貴方様についていきます的なわんこキャラでかわいいと思うんですけど、「うえーん、結婚するならギャルビッチがいいよ〜〜〜」って思いながらプレイしてました。話はいいけど、どうにも私の好みじゃなくて……。ですのでこれ以上の言及は差し控えます。
それから一緒に戦う主人公の妹、アサちゃん大好き。引きこもり、陰キャ、オタクな闇属性、ブラコンでかわいい! 戦闘力はほぼ0だけどソフト開発の天才で、主人公を大きな愛と毒舌で支えてくれました。
彼女は同性愛者で男の人が嫌いなのに「女同士は非生産的だ」とされる島の被害者で、毎日が苦しかったと思う。けれど苦しむ姿は一切見せず、ただし始終ダウナーでした。そしてオタクらしい早口の演出は至高♡ 声優さんがすごい。
好きな子に関しては長く書いたけど、興味ない人に関しては情報少なくてウケるな。仕事じゃないのでこんなもんでよろしくお願いします。
抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですかで学べたこと
「一体なにを読まされているのだろうか…」ということかな! 違ったらごめんなさい!
世界観が本当にひどい(いい意味で)。なのに矛盾を感じることなく進むシナリオ運びは、見事のひとことです。
好きなキャラは美岬>ギャルビッチ>礼先輩=郁子>アサちゃん>わたちゃん>文乃=桐香 かなぁ……。シナリオは全部良かったです。一切のストレスを感じることなく読めました。
久米田康治先生や木多康昭先生みたいな、ブラックジョークやパロディが好きな人は絶対に合うゲームだと断言します。以上!
3ではSM◯Pをネタにして回収されて欲しい東京ニート的評価「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳(わたし)はどうすりゃいいですか」S