13話:サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-/枕 芸術と文学を愛する全ての人へ
あけましておめでとうございます! 2021年です。みなさんいかがお過ごしでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いできますと幸いです。
私はというと2020年クリスマスの2日後ほどに男に告ったら振られ、熱が出て、ひとりぼっちで年越しをし、2015年の萌えゲーアワードで大賞を取った「サクラノ詩(うた)」を攻略しました。振られたのにラブコメを読むしかない私のことは心配しないでください。たぶんそういう癖(へき)なのでしょうから。
サクラノ詩をプレイするまでを雑談的に
最近、サクラノ詩前作の「素晴らしき日々〜不連続存在〜」が10周年を迎え、特別仕様版が出ました。おめでとうございます。
ここには日本三大電波ゲーのひとつ「終ノ空」、そして「終ノ空」のリメイクも入っているらしいです。終ノ空やったことないからプレイしてみたいけど、買うのはどうしようかなーと考え中。すば日々かぶるし。
そんな三大電波ゲーと言われるような作品を作った方が書いた「サクラノ詩」ですが、私は文学を愛する全ての人にプレイして欲しいと思います。「え、大丈夫かよ」と思われるかもしれません。私も「素晴らしき日々〜不連続存在〜」をプレイするとき、え、後半文字化け?と思いましたもの。
でも疑いながら読んだ「すば日々」が最高だったからサクラノ詩を迷わず買いました。まさか振られた後にプレイるとは思わずに。
サクラノ詩にわくわくした理由
「それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで
ある程度まではみんなに共通いたします」
(すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
みんなのおのおののなかのすべてですから)
『春と修羅』序
宮沢賢治の「春と修羅」の序からはじまるこのゲーム。世界的な美術家で亡き父を持ちながら自身は筆を折ってしまった主人公と、天才たちの集う美術部の交流を描きます。
とある女の子が主人公のことを「幸福な王子のようだ」と言います。
「幸福な王子」とはオスカー・ワイルドが書いた子供向けの短編。広場にたてられた王子の像がつばめの友人に頼んで、貧しい人に自分の身につけている宝石や金箔を運んでもらい、最後にはみすぼらしい姿になった王子と南に渡る時期を逃して凍えて亡骸になったツバメが残る。という、日本国民も多くの人が知る悲壮なストーリーなのだけど、女の子は主人公の持つ博愛の心をそう例えます。
そしてこの話を頭に置いたまま読み進めて、最後俯瞰してなるほどなるほどって感じになるんですけど、私はシナリオも担当されているすかぢさんのそういうところがすごく好きなのです。
すかぢさんの難解さは初めて見るタイプ
説教くさい(賛否あるけど私は好き)とか教訓めいたことを読後感として残すのはよく見る。学びや気づきなどを得ることができるので私は文章を読み続けるのだけど、エロゲでまさか意味を検索しながら読み続ける日が来るとは思わなかったです。だいたいは、読んで「フーンおもしれぇやつ」で済んでいたことが、「えっちょっとどういう背景」って調べ出すとまじで止まらない。豆知識はその場ですっきりする。すかぢ識はその場でもやもやする。
前作「すば日々」では哲学について書かれていたけど、今回は美術なのでアート、そしてそれに影響を受けた日本の文人、あるいはそれ以外の作家。ものを書くには下調べが大変というけど、すごく大変だったんだろうなというのと、どれだけが作者のストックにあったものなのかなというのを想像して震えました。それほどにもこの人の素養は高い。
でもそれがありがたい。自分の持っていない世界をニューオープンすることができる。いや、見ていなかった方向へと目を向けることができる。世界は広い。さらに歴史は深い。今目の前のことにいっぱいいっぱいになっている自分が、ちっぽけに見える。自分の器を確認することは、人生でたびたび挟んでいった方がいいと思う。天狗になっていたらぜひ鼻っ柱を叩き折って欲しいのです。
そんなすかぢさんがこんなことをツイートしていたので、凡人はみんな真似しよう。でも分かった気になってやらない。だから凡人は凡人のままなのだ。私とか。
プレイした感想を書こう
私は稟ちゃんが好きです。君はなに? というくらいの浅い感想しか書けませんが、そもそも「サクラの詩」は攻略順が決まっていて、最初に稟か真琴、そして里奈、雫……となりますが、推しの稟ちゃんが早々と攻略できたのは楽しかったです! 推しは一番に攻略したい派。他の子のストーリーが感動的だと、推しの攻略に戸惑いが出るからね。
その中でも、里奈の話は好きでした。白い毒キノコと白いワンピースに白い日傘を持つ少女の比喩がすごく美しかった。こういうことをされるからうれしくて困る! そしてここでは春と修羅(糸杉の話)がよく出てきたし、読んでいて楽しかった。
最終章は主人公が学校の非常勤講師になるのだけど、学生とエッチシーンがなかったのもよかったです。期待していた男子は多かったと思うけど、私は稟ちゃん推しだし、道徳的にもあそこではやめていただいて助かりました。エロゲに何を求めているという話だが。笑
あとは泣きゲーではなかったよということかな。明石先輩(男性)が本気になるシーンで泣いたくらいで、作中はそんな泣けなかった。
物語で気になったのは、伏線の貼り方がちょっといらいらしたくらいかなぁ。そちらに関してはこちら別の方のnoteにすべからく書かれているので熟読お願いします。
「いつまで経っても続編が出ないのでいい加減サクラノ詩について」
私が陰キャなんで……。知り合いがこっちを見ながらわけありげにニヤニヤして、なんかようわからんことを言ってるあのおぞましき過去を思い出す感じがあってちょっといやでした。言いたいことがあるならはっきり言え(と言えたら苦労ないですね)。さて、終わるか。
サクラノ詩-櫻の森の上を舞う-で学べたこと
「えっ、むしろ人生の教科書では……」ってところかな! 違ったらごめんなさい!
先日友人に「東京ニートは現実から逃げている」と言われた。そうかもしれない。ただ、私はそれが悪いとは思っていない。
現実から目を背けて小さくなっているのか、それとも立ち向かっているのか。先でも言ったように、私が持つようなちっぽけな悩みなぞ悩みと思っていないだけなのよ。だから、何度もぬかに釘を打つし、のれんは電気の紐ごとく殴り続ける。いつか釘が錆びてぬかに一矢報いることができるかもしれない。いつかのれんの向こうから誰かが来て、一発見舞えるかもしれない。私はそういうのでいい。あっ、ちょっとかっこいい。
でもなるべくワンパンKILLを狙いたい東京ニート的評価「サクラノ詩」A+