神戸大学医学部附属病院 船越洋平

医療は日々進化を遂げ、不治の病と呼ばれたものでも治せる時代に突入し、再生は不可能とされたものも再生が可能な状況になりつつあります。そんな医療の進化を目指しているのが大学病院で働く医師たちです。神戸大学医学部付属病院で、腫瘍・血液内科の助教として勤務する船越洋平さんもその1人です。船越洋平さんの研究分野は血液、腫瘍内科学や免疫学など。これまでにどのような研究を行ってきたのか気になるところです。

また腫瘍・血液内科とはどのようなことを行っていくところなのか、船越洋平さんが携わる腫瘍内科、血液内科の話などを中心にご紹介します。

腫瘍・血液内科とはどんなところか

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日本の三大死因の1つに数えられているガン。ガンが原因で亡くなる方は3分の1ほどで、国民の2人に1人はガンに侵されていると言われるほど、ガンは身近で、しかも怖い存在です。ガンになった場合、その多くは化学療法で症状を抑えていったり、ガン細胞をなくしたりしていきます。一方、ガンが発見された部位に応じて内科的な治療が行われているものの、これまでのやり方では色々と弊害があるという報告が上がり、化学療法一本に絞るべきだという声が出てきました。

この化学療法一本に絞って治療にあたっていくのが神戸大学の腫瘍・血液内科です。ガンも様々で、女性の大敵である乳ガンや胃ガン、肺ガン、食道ガンなどがありますが、これらをすべてまとめて対応し、ガン患者全員に対して治療を施していくのが腫瘍・血液内科の主な仕事です。ガンの中にはどこで発生しているかわからない、原発不明ガンも存在します。この場合も腫瘍・血液内科が行い、必要に応じて放射線治療や手術を行うなど今まで以上に体に負担のないガン治療が行えるようになります。

船越洋平さんはこの腫瘍・血液内科で助教を務めます。2004年に日本大学医学部を卒業すると2006年には血液内科学の研修医として神戸大学医学部に所属、その後神戸大学で経験を重ねていき、2015年にはテキサス大学へ留学。そして日本に戻ってくると2020年には神戸大学の助教となり、現在に至ります。医師としてのキャリアは10数年、まさにこれからの医師であることがわかります。

船越洋平さんが所属する腫瘍内科の重要性とは

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船越洋平さんが研究する腫瘍内科ですが、果たしてどれくらい重要性があるものなのか。実はガンというのは、患者さんからすればガンと認識して診察を受けに来る人は少なく、検査のついでに見つかるケースが多いです。例えば肺の不調を訴える人、便に血が混じっている人、胃がもたれてむかつきが収まらない人など色々な症状を抱えて、何かしらの検査を受けにきてガンであることが発覚します。

しかし、この場合にガンが見つかるケースは胃であれば胃の部分、肺であれば肺の部分と特定の部位に限定されます。ガンは全身に転移するものであり、その部位にとどまっているとは限りません。船越洋平さんが所属する腫瘍・血液内科では最初から全身を対象にして検査を行います。その結果、予想外の部分でガンが見つかることも十分に考えられます。腫瘍内科の守備範囲は全身と考えてよさそうです。

例えば、脚にちょっとした麻痺があったとします。何か脚に問題があるのではないかと思っていたところ、実際はガンが至るところに転移した結果、脊髄麻痺を起こしていたケースが実際にあります。そして、いつまでたっても熱が下がらないのはガンが骨などに転移しているからなど、普通に検査を受ける中では見つけることができなかったようなものが腫瘍内科にかかればすぐにわかります。

腫瘍内科でガンのチェックをする一番のメリットは腫瘍内科が全身をチェックしてくれるおかげで、様々な科をたらい回しにされずに済む点です。原因がはっきりしないと様々な病院を回り、ようやく大学病院にたどり着いて原因がはっきりとするケースも出てきますが、本来であればもう少し早くわかっていて、危うくステージの悪化をするところだったこともあるでしょう。船越洋平さんが所属する腫瘍・血液内科ではそのような事態を防ぎます。

ガンの薬物療法は本当に難しい

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ガンを治療するにあたり、もちろんガンの部分を切除することもありますが、その後は薬物療法を用いて治療にあたります。しかし、この薬物療法が非常に厄介です。どんな薬物を投与すればいいのか、ガンの専門家によって判断が分かれるからです。セカンドオピニオンで別の病院の専門家に話を聞く患者さんは結構多く、自分はどんな治療を受ければいいのか、頭を悩ませる人も多く、それが自然です。

化学療法に頼れば毛髪がどんどん抜けて、女性によってはカツラを余儀なくされる人もいます。また食欲を落とし、普通に生きるのもつらくなる人もおり、前向きな気持ちで薬物療法にチャレンジできる人は少ないでしょう。そのため、薬物治療を受けずに痛みの緩和だけを行いたいと申し出る患者さんもいます。それぞれの考え方があり、何を目指していくのか、腫瘍内科、血液内科の場合にはこうした治療の方向性も定めていくことができます。

船越洋平さんが研究する血液内科の重要性

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船越洋平さんは血液内科に関する研究も行っていますが、この血液内科に関しても腫瘍内科以上に重要性が高いポジションです。血液内科では白血病や悪性リンパ腫といったものから出血を伴う病気などを対象としており、難病の数が多い分野と言われています。その一方で難病を解決する研究がアグレッシブに行われているのも血液内科の大きな特徴です。これにより、以前は難病として治療に難儀した病気も、以前に比べても治癒の可能性が高まるなど、研究が進んでいる分野と言えます。

例えば、貧血に関しても実は複数の貧血の種類があることをご存じでしょうか。一般的な貧血といえば鉄分が不足しているからというのが挙げられますが、他にはビタミンB12が不足する悪性貧血もあります。この悪性貧血は胃炎を起こしたり、胃をすべて取り除いたあとに発生したりすることもあるなど、単に貧血というイメージからはかけ離れた病気になっていきます。これ以上に深刻なのが再生不良性貧血です。赤血球や白血球などが正常に作られない病気で、その原因は複雑そのもの。他にも溶血性貧血など深刻な貧血があります。これらを調べるのが船越洋平さんが所属する血液内科の仕事です。

まとめ

船越洋平さんが担当する腫瘍・血液内科がいかに重要なものか、お分かりいただけたでしょうか。腫瘍内科も血液内科もそれぞれ難しい病気が多く存在し、命にかかわるものばかりです。今はなかなか治療が難しい病気も、船越洋平さんらの研究などにより治癒率が高まっていけばより長く生きることにつながるかもしれません。船越洋平さんの今後の活躍に注目です。

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