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JAGDA国際学生ポスターアワード2022金賞 髙田夏希さん

JAGDA国際学生ポスターアワード2022で金賞を受賞した、デジタルコミュニケーションデザイン専攻修了生の髙田夏希さんにインタビュー。コンペ応募の経緯から受賞作の制作背景などについて、お話を伺いました。



声を出すという勇気

デジタルコミュニケーションデザイン専攻 修了生 髙田夏希さん

ーーコンペに応募した経緯を教えてください。

TDPでTA(ティーチングアシスタント)をしながらデザインのコンペを探していた時に、仲の良い受講生の子から「JAGDA国際学生ポスターアワード2022」の話を聞きました。自分の好きな物を作るんじゃなくて、なにかテーマに沿った物を作りたいと思っていたのでちょうどいいなと思ったんです。

ーー今回のテーマはVOICEでしたが、最初はどういう表現にしようと考えましたか?

声を波で表現する案や、層が増えて大きくなっていくイメージもあったので年輪を使う案も考えてました。VOICEの意味を調べたら人間の声に似た音という意味が出てきたので、動物の声や風の音もいいなと思いました。ほかにもマスクや喜怒哀楽、選挙の時期だったので選挙も考えました。

最終的に、私が考えるVOICEに多く共通することが「勇気」だと気づいたんです。声を出す瞬間が一番勇気がいると感じたのでそれを表現できたら良いなと。

大勢の前で意見を発言するとか、自分の夢を誰かに話すとか考えましたけど、その時の自分に該当しなくてやめました。今の自分の声を出す勇気は大勢の前で意見を言うのではなく、目の前の1人に自分の気持ちを打ち明けることだと思ったので。


手話で伝える気持ち

ーー作品タイトル「ILY」の由来は?

「ILY」は”I love you”のスラングで、手の形は手話で「好き」って意味なんです。言葉を視覚化するにはどうしたらいいか考えた時に、手話での表現を思いついて調べたら「好き」の手話がすごくいい形で、これは使える!と思いました。もし違う手の形だったら使ってなかったかもしれません。

授賞式で素敵なコメントを頂いたのですが、何かを掴んでいく、自分の気持ちを落ち着かせるような表現にも見えるって言われて。手話がわかる人はすぐに伝わるし、わからなくてもそんな風に人それぞれ感じ方が違っていいなって思いました。

ーー切り絵のような手がかわいいです。

ありがとうございます(笑)。告白ってすごく緊張するじゃないですか。ガチガチの手が下にいくにつれてちょっとずつ緩んでいく、息を吐くように緩くなっていくイメージを持たせました。

告白する時って、何を言おうか色々考えるので頭の中がごちゃごちゃして頭でっかちになるけど、いざ言葉を発すると勢い任せなところもあるから声は小さくなると思ったんです。最後はやっと声に出せたイメージ。だから手も小さくなっていく。しかも沢山考えたのにシンプルが一番だと気づいて「I LOVE YOU」と言うんです。


全てに意図を持たせる

ーー制作の中で大変だったことはありますか?

私は自分の作品に自信があるタイプで、人に意見を聞くのが苦手だったんですよね。否定されるのが怖いから。でも、初めて素直にいろんな人に意見を聞けた作品でした。

先生方にも相談したし、受講生にも相談しました。みんな違う好みがある中、汲み取りたいところを汲み取って、自分に響かなかった意見は反映させない、という判断ができたんですよね。

在学中、先生が「ポスターは全部に意味を持たせなきゃいけない、なんとなくで置くものがあっては良くない」と仰っていたのがとても印象に残っていたので、全部に意図を持たせました。

ーーILY以外もラフに起こしましたか?

ラブレターから気持ちが溢れてる、とか、好きな人と向き合っている案とかもありました。

手話を使うことは早い段階で決まったんですけど、そこから詰まってしまって大変でした(笑)。最後の最後まで手描き文字の配置に四苦八苦していたし、爪の形も直前で変えました。もっと楽でいいのに、自分の作品が硬いなってずっと思ってたから抜け出したくて、締め切り直前までずっと悩んで焦ってました。


真っ直ぐな表現で得た金賞

ーー受賞が決まった時の気持ちを教えてください。

入選はするかなと思ってました。プロセスは踏んだし、投げやりで作ったものではないので、評価される対象ではあるかなと。

それでもまさか入賞するとは思ってなかったので、本当にびっくりしました。入賞発表の日にサイトを開いたら、スクロールせずとも自分の名前が載っていて、金賞?!って叫びました(笑)。入選の確率を知って、さらに信じられませんでした。でも嬉しかったし、間違ってなかったんだなって。

今まで選ばれない経験ばかりしていて。入学前は演劇をやっていたのですが、舞台のオーディションも落ちる前提で受けてきたので、貴重ですごいことだなと思いました。背筋が伸びたというか、学び続けなきゃなと思いました。

ーー受賞した要因は何だと思いますか?

みんな正解を出そうと、社会に訴えかけるような作品を作る人が多いように感じました。でも私はそういったものより、自分が当事者である事柄を表現したかったんです。

連作が多かったけど、私は1枚以外の選択肢がありませんでした。言いたいことは一つだったし。個人的なことをストレートに表現したのがよかったと思います。

あと偶然、愛について出してる人が少なかったですよね。三次審査では印刷したものを提出する必要があったので、紙選びも今までで一番こだわりました。先生方におすすめの印刷会社を聞いて、実際に会社まで行って紙見本を見せてもらって決めました。


これからのキャリア

ーー今後の活動、キャリアについての目標を聞かせてください。

デザインに関して何でも興味があります。グラフィックデザインを中心に、今はとにかく経験を積みたいですね。

TDP入学前から「デザインで演劇を盛り上げたい」という夢があるので、演劇に携わっていきたいです。将来的には好きな劇団に出会って、公演があるたびフライヤーやパンフレットを作れたら理想です。

基本的に作ることが好きなので作り続けたいです。編み物やイラストを描くこと、消しゴムはんこも好きなのでそれもデザインに還元できたら良いですよね。自分の作品を作りながら、クライアントワークもできる経済バランスのとれたデザイナーになりたいです。

私だからできる仕事をして、クライアントが自分に頼んでくれたら嬉しいですね。自分が全て作った作品よりも誰かと作った作品の方が好きなんですよ。誰かと一緒に作ることを大事にしたいです。そのために沢山学んでプロになりたいです。

ーーTDPに入学して約1年半、飛躍しましたね。

TDPに通っててよかったなと思いました。みんな仲良くて相談しやすかったし、人生で初めて学ぶのが楽しいって思ったんです。TDPに入って衝動的じゃなく、理論的に作ることを学べたから、それがすごく大きかったかなと思います。先生方に感謝しています。

◇髙田夏希さんのInstagram:https://www.instagram.com/illuntk/